①-9
夕方、日が沈む中僕は帰宅した。
「ただいまー」
「やあ、おかえり」
僕はいつも通り父さんとハグをする。やっぱり安心するなあ。
でも、
「そろそろ離してくれない?」
「ああ、わかったよ。それと済まないが今日は少し用事があるんだ」
「そうなの?」
「ああ、ごはんは作ってあるから温めて食べるんだぞ」
「わかったよ、気をつけてね」
「ああ、それじゃあ行ってくるよ」
時々だが、父さんは夜出かけるときがある。多分仕事か、それとも恋人でも出来たのかな。
僕が生まれるときに母さんが死んでしまってからずっと男手一つで育ててきてくれたんだ。もし新しい母親だと言われて女の人を紹介されても僕はもちろん喜ぶさ。
むしろ、誰かいい人が出来てくれたほうが僕としては嬉しくもある。今まで、今だってずっと父さんは僕に構いっきりだから…。
「と、そうだ。早くごはん食べないと!」
空海が言った良い考えというのはこうだ。
僕は放課後、いつも通りの格好でパトロールをする。
そして、いつも通り帰宅して、ご飯を食べる。そしてベッドに入る。ここまではいつも通りだ。
だけど、いつもと違うのはベッドには僕が居ないってことだ。
空海が作ってくれた立体映像で僕はいつもと同じように寝ていると見せかける。そして、ラボに行き、新たなスーツを着て夜の活動をする。
そうすれば、僕だと簡単にはバレないだろう。いつかバレるときが来る可能性もあるが、その間に功績の一つや二つ上げておけば止めろなんて言ってこないはずだしね。
「装置を天井につけてっと…、よし。これでいいかな」
空海に言われたとおりに装置を取り付け、空海にダサいと言われている旧・ヒーロースーツを着てラボへと急ぐ。もちろん、コソコソと隠れながらだ。