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霧の都のゴースト・ツアー

ネタが降りてきました。

夕理さん8歳、薺くん13歳の時の夏休みのお話です。

除霊(物理)コンビ+最後の良心夕理さんのロンドン·ダブリン幽霊紀行にお付き合いください。楽しんで頂けますように。

「なっちゃんと夕理ちゃんはさー、夏休み何処か旅行行きたいとかないわけー?」


 仕事で近くまで来たからと、普段は京都に住んでいる親戚の叔父さんである夜桜一琉さんが家に遊びに来ていた。私を膝に抱っこしながら尋ねるてくる。

 毎度のことだが、何故この人は毎回私を膝にのせて撫でたり抱きしめたりしてくるのだろう。私の事をぬいぐるみだと思っているのだろうか。私ももう8歳の立派なレディなのだが。


「別にこのクソ暑い中わざわざ出かけたくないのでいいです」


 お兄ちゃんのそっけない答えに一琉さんは盛大に顔をしかめる。


「え? なんか、枯れてない? 中学生の夏は一度しか来ないんだよ? 海辺で水着のお姉さんとパーっと遊びたいとか思わない訳?」


「そういうの興味ないです」


「よっちゃん、なっちゃんに変な事吹き込まないでくれる」


 お母さんが、一琉さんにデコピンをお見舞いすれば彼は大げさに額を押さえて痛がる。


「夕理ちゃんは? 俺と一緒にイギリスとアイルランド行かない? お化けに会えるよ?」


 別にお化けに興味はないが、国名を聞いて俄然興味をそそられた。


「それだったら、もしかして絵本やアニメに出て来る妖精さんにも会えるかな?」


「お、夕理ちゃんは妖精に興味がある? やっぱり女の子だね。アイルランドは妖精の目撃例が未だに語られているから、もしかしたら会えるかもしれないよ」


 蝶の羽を持った可憐な花の妖精さんを脳内に思い描いて、私はワクワクで顔を輝かせる。


「会いたい! 私、妖精さんに会いに行きたいな!」


「そうこないと。なっちゃんも一緒にどう?」


「天使の次は妖精か。ま、二人だけなら心配だから付き合いますよ。宿題も終わらせているから暇だし」


 お兄ちゃんは夏休み初日に宿題を全て終わらせているため、後は遊ぶだけと言うなんとも羨ましいご身分なのだ。なお私は、小学生につきものの絵日記の宿題が終わっていない。これが無ければ私だって自由研究を含めて宿題を二日で終わらせたのに。

 あ、でも旅行に行くなら絵日記の良いネタになるよね。よし、日記帳も持って行こう。


「ま、夏休みどこにも行かないのは二人に悪いしそれは良いけど、よっちゃんったら何が目的なの?」


「いや、小さいころから色んな場所に出かけて感性を育てるのは大事でしょ」


「うん。本音は?」


「年末のコミケで出す新刊の取材に行きたいんだ」


「そんな事だろうと思った」


 今は英国を舞台にしたファンタジー漫画のジャンルに嵌っているらしく、一琉さんはその漫画の内容を力説し始めた。沼に引きずりこむつもりらしい。

 お母さんとお兄ちゃんは呆れつつも相槌を打っていたが、私は興味のない話に早々に眠くなってしまった。欠伸を一つして、漫画の話を子守唄代わりに一琉さんにもたれ掛かって目を閉じる。夢で妖精さんと遊びたいな、と願いながら。












 それから、一週間後の8月初め、十二時間ほどのフライトを終え、やって来ました霧の街ロンドン! ヒースロー空港での厳ついお兄さんによる入国審査は緊張したが、パスポートを差し出して神様スマイルを浮かべておけばなんとかなった。やはり笑顔は武器になる。

 イギリスに行くからと新しく買ってもらった、不思議の国のアリスモチーフのワンピースの裾を揺らしながら歩く。セーラーカラーの水色のワンピースで、袖口にはトランプ柄の刺繍が施されている。胸元の赤いリボンが可愛いから、頭にも同色のリボンの飾りが付いたカチューシャを付けているのが、今日のコーディネートのポイントだ。


 空港からはタクシーでホテルに向かう。初めて見る異国の景色に、私は車の窓に張り付くようにしながら外わ見る。お。テレビで見たことあるタワーブリッジが見えるわ。あの大きな観覧車はミレニアムを記念して建てられたロンドン・アイかしら?

 ホテルは白い壁が印象的な優美な館だった。3人で泊まる部屋は淡いピンクの壁紙が可愛い、白を基調とした調度品が並ぶお姫様のお部屋のような素敵なものだった。白地に紫色のパンジーが描かれたカーテンを開けば、遠くに国会議事堂とビッグ·ベンが見える。Theイギリスって感じの風景だな。


「しっかし、随分と良い部屋を取りましたね」


 大人3人が川の字で寝転んでもまだ余裕がありそうなベッドでゴロゴロしながら、お兄ちゃんが一琉さんに尋ねる。


「そりゃ推しカップルを変なホテルに泊まらせられないからね」


 新刊の資料にするのだろう。様々な角度からホテルの部屋の写真を撮りながら一琉さんが答える。


「そうだ。まだご飯までは時間有るし疲れてないようならこれからロンドン観光に行かない? ウェストミンスター寺院とか素敵だよ」


 世界遺産だし、王族のお墓や戴冠式の椅子もあって必見の価値ある場所だよ。と彼は力説しているが、手にはキリリと表情を凛々しく引き締めた女の子の騎士の人形が握られている。

 うん。手にある物で良く分かったから聖地巡礼に行きましょうか。











 入り口の巨大なバラ窓が印象的なゴシック様式のウェストミンスター教会では、美しい天使や聖人の像に見惚れながら荘厳な空気を感じ取る。この空気をものともせず人形の写真を撮る一琉さんはある意味大物かもしれない。

 お兄ちゃんに手を引かれながら見学していると、教会に昔から現れると言う黒い僧衣をまとった神父のゴーストに声をかけられた。


「どちらからお越しですか?」


「日本からです」


「それは、遠いところをわざわざおいでになったのですね」と柔らかな口調で労われて恐縮と嬉しさを感じる。


 次に訪れた大英博物館で裸の被葬者のミイラや骨、片目から涙を流しているような女性の木棺を見学しつつ、その棺に入っていた人や骨の持ち主の幽霊と世間話をすると言うシュールな体験をしたり、(皆さん食いしん坊なようで美味しいご飯の話で盛り上がった。

 日本料理を教えてあげたら食べて見たかったと残念そうな顔されたのでこっそり夜の博物館に潜入して和食パーティーしようかなと決意した)、アフリカ館に展示された触ると深い傷を負う呪いの仮面に睨まれたお兄ちゃんが、「俺を呪うとは躾がなっていないね」と笑顔でキレて仮面の呪いを解呪したりするトラブルはあったが、楽しい観光になった。


 博物館を出ると赤や藍色の綺麗なグラデーションに彩られた空が見えた。


 あぁ、もう夕暮れか。街の明かりに浮かび上がったロンドンの街はため息が出るほど美しい。思わず手に持っていたデジカメで写真を撮るが、本物の美しさには敵わなくてちょっと悔しい。


「迷子になったら大変だな」


 人混みを見て顔をしかめると、一琉さんが私を抱き上げた。ついでに頭をわしゃわしゃと撫でられる。だから私は8歳のレディだと。迷子になるなんて赤ちゃんみたいな事態にはならないよ!


「お腹空いたし、どこか食べに行こうか」


「そうですね」


 ヘソを曲げていた私だが、一琉さんとお兄ちゃんの会話に目を輝かせる。イギリスのお料理ってどんな物が食べられるんだろう?

ロンドン編は夕理さん視点なので基本ほのぼので進行します。

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