森のメルヘン
今度こそ可愛いお話になったはずです。グリム童話モチーフなので知っているお話だとニヤリと出来るかもしれません。
11月も終わりに差し掛かった頃、私、佐藤夕理はお兄ちゃんと一緒に、区役所前の広場で開かれているクリスマスマーケットに来ていた。
なお、お兄ちゃんとは買い物の好みが違うので、待ち合わせ場所だけ決めて早々に別行動だ。私ももう7歳のお姉さんだからね! 1人で買い物くらいわけもない。
屋台を見て回るだけでも楽しいが、甘いお菓子の誘惑に釣られてついつい買ってしまう。まずは雪の玉を意味するシュネーバルというお菓子からいただきます。帯状の生地を丸めてあげたものに上から粉砂糖を振りかけたもので本物の雪の玉のように可愛いお菓子だ。サクッとした歯ごたえが癖になる素朴な味でとても美味しい。天使様にも買って持って行ったら喜んでくれるかな?
お次はシュトレンという、ドライフルーツを生地に混ぜて焼き上げたドイツ伝統のクリスマスケーキに目が行った。こちらはラズベリーの甘みがアクセントになっていい。丁度いい甘さでいいね。それからドイツ名物のソーセージをパクリ。ジューシーな歯ごたえと肉の旨みが会って何本でもいけちゃいそう。付け合わせのポテトもほくほくで美味しい。炒めてソースをかけたマッシュルームもこのピリ辛ソースの味がいい。ご飯が欲しい! って、いかんいかん。このままじゃ食事だけで財布の中身が無くなってしまう。
夜になって一段と寒くなって来たし温かいホットココアで冷えた体を温めつつ、屋台を回る。もうクリスマスの雑貨も出ているんだな。天使様への贈り物にプラスして家族へのお土産にいくつか買って行こう。
サンタクロースの格好をしたくるみ割り人形やダビデの星飾り、プルーン・マンと呼ばれる干しプルーンで作られた幸運をもたらすという煙突掃除のおじさんの人形などを買ったところで、兄との待ち合わせ場所に向かって歩き始めると、足元に黒い穴が現れた。そのまま重力に従って落ちながら私はお肉を食べに行くと言って別行動をしている兄に念話を飛ばした。
ちょっと誘拐されてくるので遅くなります! 食べ過ぎちゃだめだよ、と。
目を開けると、眩しいほどの緑だった。鬱蒼と生い茂る木々や降り零れてくる白い花びらの美しさに見惚れていたがはたと気づく。さっきまで夕方だったのにここは昼だ。見上げれば鮮やかな青い空とのんびり空を行く羊雲が見えた。気候からして春だよな今。
コートを着ていると暑いので、折りたたんでリュックにしまう。さて、ここはどこだろう? ここに居ても仕方がないので取りあえず鼻歌を歌いながら歩を進める。まぁ、なるようになるさ。しばらく歩いていくと、前からお婆さんが歩いて来た。お、第一村人発見!
「こんにちは、白雪姫ちゃん。貴方はニコニコして楽しそうだね。ところがあたしゃお腹はすくし、のどが渇いて仕方がないんだよ。何か施しをしておくれ」
それは可哀想に。空腹時の辛さはよく分かるので私はすぐにリュックをあさり、夜食にしようと思っていたドイツ風のあんまんやシュトレン、チーズケーキと未開封の水の入ったペットボトルを取り出し、お婆さんに手渡した。
「貴方は心がけが感心だからあたしが良いものをあげますよ。この道を真っ直ぐ行くと一本の木の所に出るよ。その木の枝には一枚のマントが引っかかっているからそのマントを貴方の物になさい。これは魔法のマントで、貴方がそれを肩にかけてどこそこへ連れてってくれって願掛けすれば、まばたきをする間にそこに行ってしまうんです」
「それは凄い。教えていただきありがとうございます」
お婆さんにお礼を言って別れ、しばらく行くと本当にマントが枝にかかった木があった。
「うわー、マジであったよ」
このマントは灰色の地に金と銀の糸で刺しゅうが施されたやたらと上等なものだった。有難く頂戴してリュックに放り込み、再び森の中を探索する。特に行きたいところもないからね。
しばらく進むと今度は何やら黒い物体。近づいてみればそれは鉄のストーブだった。なんだこれ。春になると暖かくなって要らないからって捨てられたのかな。うわ、不法投棄じゃん。それ。ダメ、絶対。なんとなく鉄のストーブの上に手を置いて観察していると唐突に声が聞こえた。
「あなたはどこから来ました? それでどちらへ向かうつもりでしょう?」
「一応博多から来たのですが、気づいたらこんな森の中に居たのです」
「私の望む通りの事をすると貴方が約束してくれるなら、私が貴方を助けてまもなくお家に帰れるようにしてあげましょう」
気持ちは有難いが、おそらく彼が連れて行ってくれるのはこの世界の博多であり、私の家に返すことはできないだろうと何となく直感で思った。
「嬉しいですけど、貴方には無理ですよ。私はこの世界とは違う場所から来ましたから。ところで望みとは何でしょう? 私に出来る事であれば叶えましょう」
「……この鉄を削って、このストーブに穴を開けてくださいませんか?」
なんだ、そんな事か。私は小刀を取りだすとガリガリ削っていった。どんどん削って人が通れるくらい穴を大きくすると、ストーブの中で何かが動く音がした。中から出てきたのは、宝石を縫い付けた豪華な衣服を身にまとった美しく若い男の人だった。
これは、どこぞの王子では? 身に着けている服と美貌で見ていると目がチカチカして来た。誰かサングラスをください!
「ありがとう、私はある魔法使いのお婆さんに呪いをかけられて、鉄のストーブに閉じ込められていた王子です。貴方は私のもので私は貴方のもの。貴方は私の救い主でまたお嫁さんですよ」
超展開キタコレ。いやいや、私は今の所誰とも結婚する気はないのだが! 出会って一秒で結婚決めるとか有り得ない。カッコイイ人だとは思うけど貴方に恋のときめきは感じないんですけど! 大体7歳に成人男性が求婚とか犯罪臭がするよ! などという心の声を上手くオブラートに包み、彼を傷つけないよう言葉を選びながら結婚できない旨を伝えると彼は困ったような顔をした。
「では、私は一体どうやって貴方にお礼をすればよいのでしょう?」
メルヘン世界だとお礼=結婚なのか。でも確かに童話だと姫を助けた王子は必ずその姫と結婚しているもんな。その逆も然りと言う事か。
「お礼なんていりませんよ。あ、貴方は帰り道分かりますか?」
分からなければどこにでも連れて行ってくれるマントをあげようと思ったが、彼は頷くと懐から太陽の意匠が取り囲んだウォーターメロントルマリンのブローチを取り出し、私のワンピースの胸元にそっとつけてくれた。赤と緑が輝くバイカラーの宝石は、確かに瑞々しいスイカに見えなくもない。可愛いし、綺麗なブローチだと思うけどこれは?
「私を助けてくれたことに対するお礼です。この先きっと貴方の役に立つでしょう」
「それは、ありがとうございます」
お礼を言って別れ、大きな樫の木が生い茂る森をぐんぐん歩く。ふと横道の方を見ればスミレやサクラソウ、タンポポなどが咲き乱れる美しい花畑がみえた。ちょっと休憩するかと足を花畑の方に向けて、荷物を降ろすとそっと寝転がった。
風はそよそよと密やかなおしゃべりの音を響かせ、太陽は優しい光のダンスを地上に投げかける。空をゆっくり旅する白い雲をぼんやりと眺めていると、二人の人の声が聞こえた。一方は小さな少女のもので、もう一方はしわがれた大人の男性のものだ。なんとなく体をおこして声のする方を見れば、赤いビロードで作った頭巾をかぶった可愛らしい女の子と茶色い毛並の狼だった。
何この光景、すごく見たことある。耳をそばだてて二人? の会話を聞く。
「赤ずきんちゃんどこ行くの?」
「おばあさんのとこよ」
「バスケットに持っているのはなあに?」
「おかしと葡萄酒。昨日お家で焼いたのよ。おばあさんが病気で弱っているから、お見舞いに行くの」
「お婆さんのお家はどこ?」
「もっともっと森の奥。大きな樫の木が三本立っているその下にお婆さんのお家があるのよ。周りにはクルミの生垣があるわ」
「見てよ。森にはこんなに綺麗なお花がたくさん咲いているよ。お菓子だけじゃなくて、お花もお婆さんのお見舞いに持って行ってあげたらきっと喜ぶんじゃないかな」
「いい考えね、じゃあ」
そう言って少女が花畑に行こうとしたところで、私は会話の間に急いで作っていた花束を持って少女の元へ向かう。
「さぁ、どうぞ。お婆さんのお見舞いなんて偉いね。良かったらこれを持って行ってください」
「わぁ、綺麗なお花。ありがとう」
お礼を言って。ルンルンと鼻歌を歌いながらお婆さんの元へ向かう少女に手を振ってから、忌々しげな顔をしている狼に向き直る。
「初めまして、狼さん」
「よくも邪魔を。しかし、お前さんも若い柔らかそうな小娘で、脂がのっていて旨そうだ」
そういうと、狼は牙が生えそろった巨大な口を開けて私に襲い掛かってきた。私は冷静に手に持っていたピコピコハンマーで応戦する。ピコん! と間抜けな音が響いた次の瞬間、狼は勢いよく口を閉じると盛大に土下座をかました。あ、この文化西洋にもあったんだ。
「すみません、罪もないお嬢ちゃんを食おうとするなんて。これからは、心を入れ替えて困っている人を助けて、自分は花の蜜をすって生きようと思います!」
さめざめと泣きながらの謝罪を聞きながら、私は護身用に持たされていた冬歌さんお手製の性格逆転ピコピコハンマーの威力を思い知ったのだった。
私の護衛をすると言ってきかない狼君に、まぁ、旅の同行者がいた方が楽しいかと思い許可を出す。いつまでも狼君じゃあれだからと名前を聞けば、ないとのご返答。さぁ、どうしよう。
「お嬢ちゃんが付けて下さいよ」
言われて悩む。あぁ、でもそうだなぁ。
「オニキスはどうでしょうか」
名前の由来は、狼君の綺麗な黒い瞳を見て、真っ先に同じ黒い宝石の名前が思い浮かんだからだ。
「オニキス、オニキスか。こんないい名前をありがとうございます!」
何回も自分の名前を言いながら嬉しそうにする狼君に私も嬉しくなる。
「では、旅の相棒としてよろしくお願いしますね」
「こちらこそ。お嬢ちゃんの護衛は任せてください!」
森の中をおしゃべりしながら進んでいけば、今度はうちの壁はパンで作られ、屋根はチョコレートとキャンデー、窓は砂糖で、扉はクッキーという家があった。これが伝説のお菓子の家か。思わずじゅるりとヨダレが垂れそうになる。おっと、危ない。
「へー、こんな森の奥にこんな珍妙な家があるとは初めて知ったぜ」
「誰かいますかね」
家の方に向かってオニキス君がクンクンと匂いを嗅ぐ。
「家の中には二人。家の裏の小屋にも一人居るようですぜ」
なるほど。あの兄妹が悪い魔女に捕まった後か。では、いくらポンコツとはいえ神様としては、小さな子どもが殺人を犯す前に助けなければなるまい。私は心配そうなオニキス君に大丈夫と言って扉をノックした、
「誰だね、お前さんは?」
出てきた黒いローブをかぶったお婆さんは、不審そうに私たちを見る。
「すみません、道に迷ってしまって。昨日から何も食べていないので、良ければ何か食べさせてもらえませんか」
「おうおう、それは可哀想に。どうぞ中にお入り」
一見するといかにも人のよさそうな笑顔で魔女は家の中に入れてくれた。中ではグレーテルさんがせっせと掃除をしている所だった。
「お客さんがきたからね。グレーテル、食べ物を出しておあげ」
木の椅子とテーブルにつくと、グレーテルちゃんが指示された通りにミルクとイチゴのケーキを出してくれた。グレーテルちゃんの心配そうな悲しそうな表情を見て、私は安心させるような笑みを返した。
オニキス君と分け合って食べながら様子をうかがう。グレーテルに指示を出してかまどの様子を見させたところで、魔女がこちらに来る。あー、丸焼きにするつもりか。
「さぁ、次はとっておきの肉料理だよ」
「それは人の肉を使ったものでしょうか?」
静かに問いかければ、魔女のお婆さんはちょっと驚いたような顔をしたが、すぐに意地悪そうな笑みを浮かべた。
「分かっているのなら話が早い。お前たちを食ってやろう。魔女の家に来ちまったことを悔いるんだな!」
「あら。食べられるのはそちらでしょう?」
静かに魔女の後ろへ移動していたオニキス君が、その体を巨大化させると大きく口を開けて、魔女を飲み込む一歩手前で止まった。
「ひい、あ、やめておくれ! わしが悪かった。この悪魔をなんとかしておくれ!」
「私の友達を悪魔扱いしないで下さい。不愉快です」
冷たい声音に魔女がびくっと震える。ガタガタ震え命乞いをする魔女にオニキス君がどうする? と言った目線を向けてくる。そうですね。
「今すぐこの家を明け渡して二度と戻ってこないか、その狼さんに喰われるか選んでください」
音速で魔女は家を明け渡すことを選びました。逃げる時にピコピコハンマーで叩いておいたのできっと次は子どもにやさしい魔女として会えるはずだ。魔女がいなくなったところで小屋の鍵を壊してヘンゼル君も無事救出。二人の兄妹は抱き合って再会を喜び合っている。
兄がいる身としてはちょっとその光景に泣きそうになった。うんうん、無事でよかったね。
それから、魔女の家にあった真珠や宝石を持てるだけ二人に持たせて、二人の家である木こりの家まで送っていった。
「お姉ちゃん、どうもありがとう」
「ありがとうございます、お姉さんのおかげで魔女に食べられずにすみました」
「いいんですよ」
私はにっこり笑って二人の頭を撫でる。オニキス君も二人にじゃれつきながら達者で暮らせよ、とあいさつした。
「お礼をしたいんだけど」
「あの花はどうだろう」
「あ、そうだね。ちょっと待っていて!」
そう言って、グレーテルちゃんが家に入りこちらへ戻って来た時には、純銀で出来た花を持っていた。これは。
「森の中でお兄ちゃんと遊んでいた時に咲いていたお花。珍しいから二人の宝物だったんだけど、お姉ちゃんにあげるね」
「でも、そんな貴重なモノもらえませんよ。お礼なんてその気持ちだけで十分ですよ」
お、私今なかなか格好良いこと言ってないか。
「ううん、いいの。お姉ちゃんに貰ってほしい。だめ?」
幼女にウルウルと潤んだ目で首を傾げながら頼まれて、断れる人がいたらお目にかかりたい。私は有難く銀の花を受け取り、二人を抱きしめてから手を振って別れた。
でもって、いい加減木ばかりの光景にそろそろ飽きてきたころ趣ある石造りの巨大なお城が見えてきた。空を見上げれば日が傾いてきた頃だったし、今晩はここに泊めてもらおうかな。まぁ、断られたら野宿すればいいかな。
城門の取っ手を見るとヒビが入っていて、使われていない城なのかと思いつつ取りあえずノックする。しばらく待ってみたが誰も出てくる気配がないのでそっと門の扉を押せば、扉は音もなくすっと開いた。オニキス君と顔を見合わせ、取りあえず中に入ってみる。
チューリップやガーベラ、ミモザなどが咲き乱れる美しい庭園を横目に城へと向かって歩く。壁に聖人の像が彫り込まれているせいで、妙な威圧感を感じるお城の扉をノックしてしばらく待てば、茶色の巻き毛を持つ絵に描いたように美しい少女が出てきた。
「こんばんは、どちら様でしょうか?」
「すみません、旅の者ですがもう日が暮れ始めるので、今晩一晩だけ泊めてはいただけませんか」
「はい、構いませんよ。実は他にももう一人旅の方がこの城に泊っているので、良い情報交換などが出来るかもしれませんね」
入ってみると何もかもが大理石に金を取り合わせたものばかりで、ビロードのおおいには、大きな金の房がついていた。調度品も全て金で出来ていて、これは小さいころから住んでいないととても落ち着いて生活出来ないな、なんて思った。少女について行きながら二階に上がる階段に差し掛かれば、そのアーチ状の天井一面に天空に舞う神々と天使たちの壮大なフレスコ画があって何だか圧倒された。
「こちらが食堂です」
少女は扉を開けると、食事を持ってくると言って一礼して去っていった。中に入れば白い漆喰に金細工、そして壁には一面に大きな鏡が張られた食堂には、すでに一人の男性がいて、テーブルに並べられたご馳走に舌鼓を打っていた。
夜を映したような黒髪に緑がかった美しい金の瞳をもつ、黙っていれば繊細な雰囲気を持つこの美少年は。
「お兄ちゃん、こんなところで何をしているの」
「誘拐されてくるの一言で消息絶ったら、放っておかれたお兄ちゃんが可哀想でしょ! あぁ、でも無事でよかった」
私に抱きついて来たので、よしよしと頭を撫でる。お兄ちゃんは相変わらず寂しがり屋だな。
「お嬢ちゃんのお兄様でしたか。俺は夕理さんの護衛のオニキスです」
「おー、よろしくね、オニキス君。俺は佐藤薺です。夕理さんの兄になります」
「それで何故お兄ちゃんがここに居るの?」
屋台でソーセージ祭りだとか騒いでいたくせに、なんでこのお城でご馳走にまでなっているんだ。
「夕理さんの気配を追ってきたのはいいんだけど、異世界のせいか貴方の居場所にピンポイントで出なくてさ。で、目の前にこのお城があったからつい」
「ふらふら―と城に入ったわけですか」
盛大なため息を一つ。お前は一体何しに来たんだ。観光にか。取りあえずさっきの女性に勧められた椅子に座る。目の前には鏡があって『あなたは光より美しい』と金文字で刻まれていた。白雪姫の女王の鏡みたいだなと思っているとさっきの少女が戻ってきて、私の前にもフカフカのパンや肉団子入りのコンソメスープ、川魚のムニエルにアイスバインと呼ばれる豚すね肉を骨つきのまま塩ゆでした料理やソーセージとポテトの盛り合わせが出してくれた。
どれから食べようと思っていると、オニキス君にくいくいと袖を引かれる。
「どうしましたか?」
「銀の花が黒く変わっていますぜ」
見ればグレーテルちゃんにもらった純銀だったはずの花は、今は夜のような黒に変わっていた。少女が礼をして食堂から出たタイミングでお兄ちゃんがポツリと呟く。
「夕理さんに出された料理、全部毒入りみたいだね。その花は食べ物に毒が入っていないかどうか、持ち主に教えてくれる花のようだ」
「なんで私が毒を盛られないといけないのですか!」
オニキス君の分を取り分けていた料理を大皿に戻しながら叫ぶ。半神である私は毒位平気だが、オニキス君にあげたら危ないところだった。
「夕理さんが持っている魔法のマントを狙っているみたいだ。どうやら彼女も魔女のようだよ」
「毒なんて盛らなくてもあげるのに」
何となく毒入りの料理に手を付けられずにいると、少女が戻ってきて不思議そうにテーブルを見た。
「召し上がってよろしいのですのよ」
「いえ、ちょっと体調が思わしくなくてお肉はちょっと」
「まぁ、ではこちらの林檎はいかがでしょう」
血のように真っ赤に熟れた林檎が手渡される。まぁ、林檎なら大丈夫かなとパクリと食べれば瞬間訪れる違和感。思わず持っていた林檎を手から落としてしまう。
「夕理さん!?」
「あぁ、どうやら効いて来たようね。即効性の毒だもの」
登場したグリム童話
「鉄のストーブ」「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」




