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野良猫(仮)のあきらめは悪い!  作者:
第3章 親族会議編
65/170

真昼の青空と幽霊

水着回です。

なお、作者に服のセンスはありません。

「あぁ、愛しい妻の命をこんな子どもに変えてしまう何て!」


 父の悲痛な叫びを聞きながら物言わぬ骸となりはてた、母だった女性の頬にそっと手を当てる。急速に温もりが消えていく体に胸に痛みが走って視界が滲む。


 あぁ、僕には彼女を想って泣く資格など無いのに。


 頬を走る涙の跡をそっとなぞり、どうか天では安らかに、と祈る事しかできない。この涙も出産のときの壮絶な痛みも悲鳴も、僕が無理やり彼女から引き出したものだ。


 安らかな眠りへと誘うことから死者に手向ける花としても使われるラベンダーを、彼女を守るように周りに咲かせる。


 僕を産めば、こうなる事は分かっていたはずなのに。母は、生まれて来た僕を見てそれはそれは綺麗に微笑むと優しく頭を撫でてくれた。


「あぁ、思った、通りの美しい夜の色ね。本当に素敵。考えていた、名前にピッタリだわ。ふふ、で、あえて、良かった」


「母さん、ごめ、ごめんなさい!」


「私の、可愛い、子。謝らないで。ねぇ、()()くん。母はもう、貴方とは、生きれない。でも、どうか、どうか、幸せになって。ねぇ、泣かないで? 私は、貴方に会えて、幸せよ」


 次いで涙を流しながら、母の手を握る父に目線を向ける。


「貴方、どうか、残される、明陽(あけひ)くんと夜柚くんの事をお願い、ね」 


「しっかりしろ! お前がいなくなったら私は!」


「大丈夫。愛して、いる、わ。見えなく、なっても、いつも傍に」


 そう言うと彼女はそっと目を閉じた。次いで力が抜けて僕の頬から手が外れる。


 それに慌てて手を握れば、まだ微かな温もりがあった。母の存在を確かめるように更に頬へと触れていると、父が僕の隣に立つ気配がした。


「お前が。お前さえ生まれてこなければ!」


 月の光に照らされて、冴え冴えと光る剣が僕の体に振り下ろされる。僕は微かに笑みを浮かべる。




 僕を愛してくれた人を殺すような罪人には、相応しい罰だ。










 こんにちは。無事に大学生活初の試験を乗り越えて夏休みを迎えた佐藤です! 今は彼氏の家にお呼ばれして、海水浴デートをする事になった佳乃子(かのこ)さんの買い物に付き合うために、待ち合わせ場所に向かっているところだ。



 待ち合わせ場所の駅の改札口前には、すでに佳乃子さんは来ていて、スマホ片手に手を振って来た。こちらも手を振り返しておく。

 今日の彼女の装いは、カラフルなストライプ柄の、ワンピースとしても着られそうな丈のチュニックに、レギンス、足元は白いスニーカーだった。うん、可愛い。


  外に出れば、目に突き刺すほどに深い綺麗な青空が広がっていた。まだ午前中だと言うのに暑い。


「日奈君の誕生日ももうすぐだから、プレゼントも買いたいんだよね」


「そうなんだ、もう何を贈るか決めたの?」


「6月のブーリ君の時にピアスを贈ったら羨ましそうな顔していたから、彼にも同じものを贈ろうかなって」


 ふーん、じゃあアクセサリーショップを見に行くか。


 というか、ブーリさんがピアスするイメージ無かったから、最近身に着け始めて意外に思ってたんだよね。あの水晶をはめ込んだ銀色のピアスって佳乃子さんからの贈り物だったのか。


 日奈さんは元々、赤い石のピアス付けているからプレゼントには良いだろうけど、ブーリさん穴開けてなかったよね。


 そっかー、彼女の影響かとちょっとニマニマしてしまう。


「どうしたの、柚月ちゃん」


「ううん、何でもないよ。じゃあ、アクセサリー屋さん行こうか」


 駅前のファッションビルに入れば、途端に心地よい冷気が体を包む。

 うーん、文明の利器万歳。エアコンのある時代に生まれてよかった。


 夏物の洋服や浴衣、それに合わせた小物に目を奪われたり、化粧品を扱うお店を覗いたりしながら目当てのお店に向かう。


「あの容姿なら何でも似合うだろうけど、恋人だからこそ妥協できない」


 今から人でも殺しに行きます、とでも言う様な形相で食い入るようにピアスのコーナーを見ている。

 怖いから近づかんどこう。キョロキョロと店内を見て回っていると、「君に決めた!」という友人の声が聞こえて来たので、戻る。


「つーか、佳乃子さんはピアス付けないの?」


「え、男の人がつけるのが格好良くて好きだからね。私はそれを見たいのだ!」


 プレゼントというより、自分の欲望が主になっていないか。


「で、これ綺麗だと思うからこれにしようと思うんだけど、どう?」


 佳乃子さんが手に取ったのは、照明の光に照らされて神秘的な青い輝きを放つムーンストーンをあしらったピアスだった。幻想的で、ずっと見ていたくなるような美しさが日奈さんに似ている。だが、しかし。中々に高価な気がするが。


「良いと思うけど、値段は大丈夫なの?」


「何のために本屋でバイトしてると思っているんだ。推しのATMになるためだろう」


「お、おう」


 キリッとした真面目な顔で言う台詞じゃないし、一歩間違えば都合のいい女扱いされるのではないかと思われるような台詞だが、貢ぐ相手があの2人なら大丈夫かな。


 プレゼント包装してもらったピアスを丁寧にカバンにしまってから店を出る。さーて、お昼をどこで食べようか考えつつ歩くか―。この辺りでは、最近パエリアのお店が新しくオープンしたと言っていたからそこでもいいな。


「お昼、どうする? 行きたいお店があるんだけど」


「私はこだわりないから、柚月ちゃんの行きたいお店に行きたい」


 基本友人は食べられれば何でもいいもんね。私は頷きビルの出口に向かう。外に出れば一気にむわっとした熱気が襲い掛かってくる。蝉時雨が耳につく。これだから夏は嫌いなんだ。


 少しでも涼しいようにと、お店の屋根伝いに通りを歩きながら雑談していたが、周りのざわめきと人ごみが何やら気になる。女性は軒並み顔を赤らめて、アイドルにでも会ったかのように視線を一か所に向けている。きゃあきゃあしている、女性の一人が指さした方向を釣られるようにみて私は思わずむせた。


 陽光に見事な金の髪をきらめかせた、今日も王子様か何かと言いたくなるような麗しさを持つエファさんと、夕暮れたオレンジ色の瞳の輝きが、魅了されそうな妖しい色香を放つ美青年な日奈さんがパンフレットを一緒に覗きながら、お店の軒下で談笑している光景だった。


 あ、この二人は仲良かったんですね。し、知らなかった。そうか。でも、エファさんは自分が死んだ後にリュイさん達を託す相手として日奈さんの名前を挙げていたし、二人はそもそも従兄弟同士なのだから当然か。

 うーん、2人が揃うと美しさが相乗効果で2倍になるから思わず拝みたくなってしまうな。眩しすぎて目が痛い。


「やっほー、日奈くんじゃん。こんな所で偶然だね」


 物おじしない佳乃子さんは、恋人の姿を見止めるとさっさと日奈さんの傍に行って声をかけた。私も慌てて追いかける。


「こんにちは、佳乃子ちゃん。今日は会えると思っていなかったから、嬉しいな。佐藤さんもお久しぶりです。お元気そうで何よりです」


「どうも、日奈さん。あの、お買い物ですか?」


「はい、どっかの阿保のせいで僕は幽霊になっていたのでその慰謝料を頂こうかと。こんなに殊勝な光の神なんてこの先2度と見れないかもしれませんからね、この機会に存分にたかろうと思ってここに来たんです。佳乃子ちゃん達も何か買いに来たのかな? 貴方たちも明陽(あけひ)には迷惑かけられたでしょうから、欲しいものがあるのなら、無駄口を叩くのがたまに傷な財布だと思って、遠慮なく使うと良いですよ」


 爽やかな笑みを浮かべて言う内容の台詞じゃないと思う。そして、さらっとエファさんの本名を呼んだね。エファさんはげんなりとした顔でため息を吐く。


「確かに君を一度殺してしまったのは僕の落ち度だからいいけどさ。星宮さんはこの悪魔が恋人で本当にいいの? 怪我とかさせられてないよね? 本当に無理はしていない?」


 心底心配そうな顔で言うエファさんに一体日奈さんとの間に何があったんだと、日奈さんを思わずちらちらと見てしまう。


「やだなー、明陽。人聞きの悪い事言わないでよ。……それ以上変な口を聞くなら食うぞ」


 何だろう、私の飼い主さんを思い起こさせるような黒い何かを見た気がする。


「え? 日奈君はとっても優しいから大丈夫ですよ。でも、私に気を使い過ぎるところがあるからむしろ疲れちゃわないか心配です。もっと、自分を大事にしてほしい」


「可愛い、天使がいる」


 おおう、魔王様の黒い空気が一瞬で浄化された。さすが、佳乃子さん。選ばれた勇者なだけはある。


「エファさん、心配してくれてありがとうございます。でも、私は自分の意思で日奈君とブーリ君とお付き合いをさせて頂いているので大丈夫ですよ。二人がずっと笑顔で居られるように、二人の事は私が守りますから安心してください」


 真っ直ぐにエファさんの目を見て言い切った佳乃子さんを見て、日奈さんを顔を真っ赤にすると縋るようにエファさんに抱きつく。顔を隠すように肩口に額を擦り付けた。


「どうしよう、僕の恋人が今日も格好いい」


「そうか、なら安心だね。弟ともどもどうかよろしくお願いします。……しかし、佐藤さんといい星宮さんといい、類は友を呼ぶって本当なんだね。よしよし、君にはちょっと刺激が強かったねー」


 ポンポンと日奈さんの頭を優しく撫でる姿は、確かにお兄ちゃんなんだなと思わせる慣れた手つきだった。


「イケメン二人が抱き合っているの尊い……。絵面が麗しすぎる」とサムズアップしながら、鼻血を垂らす友人と同類に思われるのが釈然としないまま、私は彼女にティッシュを差しだすのだった。










 予定が特に決まっていないなら一緒にお店を回ろうか、という事になりまずは昼食の時間とだからと腹ごしらえを済ませることになった。


 お店のチョイスは私の希望であるパエリヤのお店が採用された。

 大皿料理だからこの人数なら調度いい。ムール貝やあさり、エビ、イカなどの魚介類や野菜がたっぷり入っていて中々に豪華だ。ムール貝、初めて食べたけど美味しい。はまりそう。


「そういえば、謎だったんだけど佳乃子さんとエファさんはいつの間に和解したの? 前は結構険悪だったよね」


 と、いうより普段滅多に怒らない佳乃子さんが彼に対してはけんか腰で接していたため今日は大丈夫かと内心ドキドキしていたのだが。まあ、彼女は悪感情を引きずるタイプではないし水に流すのが上手い子ではあるが。


「ん? あー、前に家に菓子折り持って土下座して謝ってくれたから別にいいよ。大体被害を受けた当人がとうに許しているんだから外野がとやかく言うことじゃないでしょ」


 そういえば、前に家にも来ていたが佳乃子さんの家にも行っていたのか。律儀だな。


「星宮さんも甘いよね。そんなんじゃつけ込まれるよ。これが彼女なんて二人は苦労しそうだ」


「その甘さは彼女の長所でもあるからね、別に危なければこっちで対処すればいいだけの話だ」


 ふう、とため息を吐きながら日奈さんは軽く言う。佳乃子さんは、エファさんにジト目を向ける。


「日奈さんが幽霊になったみたいに、ブーリさんが殺される可能性があったからあえて剣に封じて敵が手出しできないように守ったんでしょうが。まあ、やり方はともかくそれが理由じゃ貴方相手に怒るわけにはいかないです」


「は、え、何で、知って……!?」


 耳まで真っ赤にして狼狽えているから事実なんだろうな。まあ、これまでの態度を見て、ブーリさんを剣に封印した理由もそんなところだろうとは思っていたけど。


「明陽はもう少し周りを頼ることを覚えたほうが良いんじゃない。あ、夏季限定のドーナツジェラートだって、美味しそう。頼もう」


「君は僕のおごりだからといって、頼みすぎじゃないか?」


「え、僕に対する慰謝料が午前中の買い物だけで済むと思っているの? あ、佐藤さんも星宮さんもここの会計はこの財布が全部お金を出すんで、遠慮しないで食べてくださいね。ほら、デザートのケーキ類も美味しそうですよ」


 それはそれは無邪気な笑顔でデザートメニューのページを見せてきた。とりあえず、日奈さんを怒らせないように気を付けよう。


「あ、タルトタタン食べたいな」


「了解。星宮さんも遠慮しないでいいんだよ、好きなだけどうぞ」


 エファさんは気品あふれる王子様スマイルで佳乃子さんに促した。立ち直りが早い。甘いもの大好きな佳乃子さんも注文すると思ったのだが、首を振ってメニューを返した。


「私は他に狙っている甘いものがあるので、ここでは大丈夫です」


「そう? ならいいけど」


 ふーん、佳乃子さんのお眼鏡にかなういいお店があるらしい。私もあとで行きたいな。ダイエットは明日からだ。


「この後どうしますか?」


「一応、映画を見る予定にしていたけど貴方達は?」


 へー、映画。ジャンルはアクションかな、コメディかな。


「何を見ようと思ったんですか?」


 日奈さんがスマホで見せてくれた画面には、今最高にキュンキュンすると話題の恋愛映画のタイトルがあった。おおう、マジか。


「明陽がこういう映画好きなんだよね、僕は人と付き合うのが初めてだから勉強として見てみようかなって」


 マジか。エファさんを思わず2度見してしまった。彼は仏頂面でアイスコーヒーをすすっている。


「そっか。でも私は恋愛映画は苦手だから遠慮しておく。映画終わったぐらいにまた集合しようよー」


 まあ、本来なら男の人の前では買いにくい買い物を今からしに行くところだったから調度いいか。私としては別にこのまま解散でもいいんだけど、佳乃子さん的にはまだまだ日奈さん成分が足りていないのだろうな。デザートまで食べ終えて、奢ってもらったお礼を言って店を出る。


 次に向かうは、映画館も入っている大型ショッピングモールである。次に会う時も中で落ち合えば暑くもないし、目的の買い物も済ませられて丁度いい。

 映画館前で別れて、佳乃子さんの海デートのための水着選びに向かう。

 黙っていれば、佳乃子さんは長い黒髪で清楚な雰囲気の大和撫子な容姿なのだから、基本何を選んでも似合うとは思うが。






 イマドキの水着にはお洋服っぽいものもあるけど、佳乃子さんの好みはなんだろう。華やかな売り場で腕を組んで考え込む。

 ちなみに、私は今年は海に行く予定はないから、購入するつもりはない。


「なんか、二人の態度って彼女というより可愛い妹って感じなんだよね。年の差が凄いから仕方がないとはいえ、少しは意識させたい」


 ほうほう。つまり大人っぽい方がいいのか。ワンピースタイプの水着を見分していた佳乃子さんだが、ぎゅーと目をつぶると意を決したようにビキニのコーナーを漁り始めた。嘘だろ。


「あまり露出が高すぎても引かれるのでは」


「それは嫌だわ」


 店内に貼ってある広告のモデルが着ていたような、布面積があきらかに無くてほとんど裸じゃないかと言いたくなるような白の水着をやんわりと押し戻す。それから、しばらく二人で店内を周りながら目についた水着を当ててみる。候補に残った赤い地に白のドット柄の水着とか胸元に紺色のリボンをあしらった薄いピンクの水着も女の子らしくて可愛いと思うけど。


 意識させたいという希望を叶えるなら。ふと、ある水着が目に入る。


 フリルをあしらったどことなく乙女チックなデザインながら、色はシンプルな小悪魔ブラックのビキニタイプの水着なんてどうでっしゃろか、と揉み手しながら提案してみる。


「さすがは、柚月ちゃんだね」


 なんて悪い笑顔で返した友人はそそくさとその水着の購入を決めた。

 うんうん、ブーリさんと日奈さんは幸せ者だねぇ。





 目的の買い物が終わったところで、待ち合わせの時間が近くなっていたのでそちらに向かう。

 無事合流して、その場所の近くにゲームセンターがあったので好奇心で中に入ってみる。エファさんと日奈さんはこういう場所は初めてなのか、興味深そうにキョロキョロ見ている。


 曲に合わせて太鼓をたたくゲームやシューティングゲームで競ったりしていたが、シューティングゲームで初めてとは思えない歴戦のスナイパーか何かの様な結果を出した日奈さんに戦慄した。さすが、魔王様。

 目について懐かしくなったワニを叩くゲームで中々の結果を出し満足して、さて興味のあるゲームの方に散って行った友人たちは何処だとキョロキョロしていると、エファさんがキラキラした目でUFOキャッチャーを見ていた。

 目線の先には、花柄の布で作られたつぶらな瞳のコアラのぬいぐるみがある。目線的にこれが欲しいのかな。


「あ、佐藤さん。ねぇ、これってどうやってするゲームなの?」


 私はため息を吐いてゲーム台にお金をいれると、ぬいぐるみをアームで取ってやった。取り出し口から出て来たぬいぐるみを彼に押し付ける。


「え、これは佐藤さんが取ったものじゃ?」


「貴方にあげたいと思って取ったんだから、受け取ってもらえないと困る」


 ついでに自分用にスイカ柄が可愛いタンブラーを取る。良い物ゲット! そこで、エファさんが無言なのが気になってそちらに目を向ける。大事そうにコアラのぬいぐるみを抱えながらも茫然とした顔でこちらを見て来る。私は彼の名を呼んで、首を傾げた。


「君は恐ろしい人だな。……長く一緒に居たら駄目になりそうだ」


 何でわざわざぬいぐるみを取ってやったのに悪口を言われなければならないのだ。まぁ、別にエファさんに頼まれたわけじゃないからいいけどさ。


 文句の一つも言いたくなる気分を落ち着かせるため、そう言えば佳乃子さんは何処だろうーと呟きながらその場を離れる。彼女の好み的にレーシングゲームの場所に居るかもしれないと思いながら探すがいない。


 ゲームセンターの奥、非常階段につながる人影のない寂しい廊下で日奈さんと佳乃子さんを見つけた。何でこんな所に? と首を傾げながら声をかけようとしたところで雰囲気に気づいてピタリと足をとめる。


 佳乃子さんは日奈さんを壁際に追い詰めると、そっと片手をついて背伸びをした。おー、壁ドンだ。私もしたことはあるが他人のは初めて見た。

 そのまま日奈さんにキスをすると、もっとと求めるように日奈さんの腕が佳乃子さんの腰に周る。見なかったことにして、ゲームセンターに戻るべきだと頭では分かるのだが、驚きすぎて足が動かない。


「はは、甘いね」


 キスの合間に零される友人にしては珍しい掠れたような低い声音から察するに、どうやら甘いデザートとは日奈さんの事だったようだ。(宇宙を垣間見た猫の顔)

 馬に蹴られてはたまらないと、足を叱咤激励して何とかその場を離れたのだった。リア充凄い。

類は友を呼ぶ。

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