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野良猫(仮)のあきらめは悪い!  作者:
第2章 VS魔王編
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番外編② もしもユグドラシルに魔王が存在しなかったら

タイトルのままのIf話です。時系列は佐藤さんが世界樹を蘇らせる為に焼き猫になり、日本に戻った後の春休みの一幕になります。沈丁花の下に死体がなかった世界線。

 どうも。ある日突然黒が魔の色とされ忌み嫌われる世界に黄色い猫姿でトリップし、その世界の中で唯一漆黒を体に宿した優しい飼い主さんとのん気に旅をしていた佐藤柚月です。


 現在私は使命を果たして無事に日本に帰り、この春から大学生になることが決まりました。あー、ちなみにその使命というのが、この世界を支える世界樹が闇の神の封印が解けたことにより枯れ始め、世界の終わりが来ることを防ぐため太陽の力を秘めた黄色い獣=私が闇の神の滅びの力を打ち破ることで世界を救うというもの。


 ただの女子高生になんて使命を託してくれるんだ。


 しかも、何と世界を滅ぼす闇の神は私の飼い主であるリュイさんだったことが判明し、さらに彼を敵視する光の神・エファさんが現れた。エファさんのせいでリュイさんは力を暴走させ、世界樹が燃える惨事となり私はリュイさんの目の前で世界樹を再生させるために炎に飛び込み焼身自殺を図る羽目になったのだ。


 いや、生きているけどね。


 あの後、リュイさんの弟であるブーリさんが日本の我が家を訪れ、ある提案を持ちかけて来た。向こうの世界でずっとリュイの傍に居て欲しいけど、地球に家族や友人がいるからから、無理強いはしない。それか、リュイが地球で暮らすか。あの世界は彼には優しくない。どっちがいいか選べと言うことだった。


 正直、うちの両親は相手が異世界の神であっても怖がらないと思う。特にお母さんは悪魔相手に一歩も引かずにお父さんを取り合っていたくらいだ。娘の私が言うのも何だけど精神力はオリハルコンレベルだと思う。私は地球での暮らし方しか知らないし、彼が偏見や悪意の目にさらされないのは地球だと断言できる。


 だから、こちらの世界に連れ去ってしまいたいのが本音だ。


 でも、リュイさんはどうだろう。こちらの世界に来たら自由に本来の姿には戻れないし、魔法もおおっぴらには使えない。友達や家族もいるのにそれを残して私を選べなんて言えない。科学の発達度合いは向こうと大差ないから暮らしの上ではあまり困らないだろうけど、慣習や文化は違う。苦労をさせることが分かっているし。


 やはり、ここはせめて生活の上での苦労はかけないように、私が養えるレベルになるまで待って貰って指輪を買ってプロポーズするのが正解なのでは。(錯乱)


 しかし、そこで気づいた。私は炎に飛び込む前、リュイさんとはもう会えないと思って一世一代の告白をした。それだけならいいのだが、私が炎に飛び込むのを阻止しようとした彼の唇を「黙れよ」と言って塞いで奪ってしまったのだ。ちなみにその時は、我が家の家宝である流星刀の力なのか人の姿に戻っていた。


 リュイさんはこんなやり逃げした性犯罪者お断りなんじゃないか。あのあと、リュイさんには既に会って謝罪もしているが「気にしないで。俺の方こそごめんなさい。生きていてくれてよかった」と抱きしめられて終わったんだよね。

 彼は優しいから世界を救った私のことを拒絶できないのではないか。


 よほど私が悩んだ顔をしていたのか、友人の佳乃子さんに呼び出され、カフェで話を聞かれ、異世界事情を抜きに友人に話したところ、彼女は悪い顔で借りた私のスマホを操作した。


「今日がエイプリルフールで良かったね。相手の真意を探るならこんなメールはどうかな?」


 画面には結婚します、の文字と私の名前が書かれていた。危機感を持たせる作戦か? ならばとスマホを操作する。結婚の嘘を吐くなら適任者がいるからね。私の名ばかりの婚約者であるよっちゃんとは普通に仲が良いからツーショット写真もある。


 信憑性を持たせるために、カップルにも見えそうな写真をセレクトして添付する。


「理解が早くて助かるよ。柚月ちゃんのこと何とも思っていないなら、素直に祝福の言葉が来るんじゃないかな?」


 でもなー。むしろ、清々したと思われるのでは。その場合慰謝料はいくら払うべきなのだ。


「愛した者は去っていくかもしれないが、愛が終わることは無いBy佐藤!」


「いや、それ、ギルバート・パーカーの名言!」


 そう言えば、この子大学では彼氏作ると言って工学部に進学して、人工知能の研究するらしいけど、作るってそこから!? 人間の彼氏は諦めたのか。


「彼が私を何とも思っていないことが分かったら、好きなのは変わらないけどこの恋を諦められる」


「柚月ちゃんにそんな顔させるなんて、相手の男の返答次第では三枚おろしにしてやろうかな」


「佳乃子さん、ステイ、ステイ!」


 リュイさんのことを言った時のお父さんみたいな反応をしないで欲しい。

 教えてもらったリュイさんの連絡先に、偽の結婚メールを送る。


 しかし、中々返事が来ない。相手も忙しいのだろうと思って、その後は期間限定の苺のショートケーキを堪能し、大学では私服だからとお店で洋服を見てから佳乃子さんと別れ、帰路に着こうとしたのだが。


「これは一体どういうことですか?」


 目が笑っていない笑顔に敬語という最高に怖いリュイさんに、近くのカフェまで連行されました。しかも、個室。あぁ、窓から見える満開の桜が綺麗だ。(現実逃避)


「この男は一体誰なの? 本当に柚月さんに相応しい相手かどうか見極めるから」


 私を逃がさないためか隣に座った彼が、真剣な表情で尋ねてくる。これは娘を心配する父親の反応か?


 さようなら、私の初恋。旅に出るので探さないでください。


 ネタバレをしようとしたところで頭にポンっと手が置かれる。そのまま、手は私の髪を優しく撫でるとすっと頬へと伸びて包み込まれる。赤味を帯びた綺麗な黄金の瞳がこちらを射抜いて。あれ、何か暗い色を宿していないか?


「俺以外を選ぶと言うなら最初からこうしておけばよかった。これで貴方は俺から離れられない。ずっと傍にいて。俺に守らせて」


 リュイさんが自分の手首を噛んだと思ったら、引き寄せられて唇が合わさる。直後、流し込まれる鉄の味がする熱い液体に頭の中で『契約』の文字が駆け巡る。


 契約は一度しか行えない。契約者が死んだ場合に次の主を定めることはできない。そのため、契約を結べば強い絆が生まれ、そう簡単に離れることは出来なくなる。


 これは、まずい。私は佐藤家の家宝である流星刀を取り出し、新たに契約で生まれた絆を切った。これで、契約は無効だ。


「そんなに、嫌。でも、俺は柚月さんと離れたくない。……どうせ嫌われているなら、いっそ誰の目にも触れないよう閉じ込めて」


 何処か狂気染みた色を浮かべるその顔が、この世のどんなものより美しく見えるのだから、もう手遅れだ。


「君、そんな顔出来たんですね。格好いい」


「え? その反応何か違う……?」


「あのね、私が離れるかもしれないという不安を理由に契約を結ばれても嬉しくないよ。ごめんなさい。結婚は嘘なんです。今日はエイプリルフールと言って、嘘をついても怒られない日なので」


「嘘? じゃあ、結婚はしないの?」


 良かったぁ、と本当に嬉しそうに微笑みギュッと抱き着いてくる可愛らしい姿に私は確信が持てたので、ちょっと苦労しつつも離れて貰い、私は彼の左手をとり薬指に赤い痕がつくまで噛みついた。この痕の形なら、指輪らしく見えないこともないか。想像力で補ってくれ。


 なお、本物のダイヤモンドの婚約指輪は、働いて稼いだお金で買わせて頂くので、もう少し待って欲しい。来月からはバイトを始めよう。


「私とずっと一緒に居たいなら薬指を予約させてくれる? 私の持てる力を全て使って夜柚君のことを全力で幸せにするから、結婚してください」


「はい。俺で良ければ。でも、俺は柚月さんがいてくれるだけで幸せなんだけどね」


「なら、私は君のこと離さないよ」


 リュイさんは小さく頷くと、顔を赤く染めながら私の頬にキスをしてきた。あまりの破壊力に思わず彼に腕を回して引き寄せ、唇を合わせて深いキスをした私は悪くない。


 尊い。世界は今日も素晴らしい。やっぱり世界を救って良かった、と心底思う私だった。










 そして、月日は巡り。父親譲りの美貌と優しい性格を受け継いだ娘の夕理(ゆうり)さんが生まれたのだが。

「最後まで覚えておいてほしい、命ある限り希望がある事を。Byチャールズ・ディケンズ!」


「夕理さん、爆弾に生弓矢刺さないで! 私達はこれで爆弾が止まったことが分かるけど、警察の方ビックリしちゃうから!」


 娘は佐藤家の家宝たちも操り、持ち前の正義感で世界の悪と戦う子に成長した。

 なお、それだけならいいが、ハーレムでも築く気かと言いたくなるような恋愛フラグ職人に成長して、中々に心配で楽しい毎日を過ごさせてくれるのだが。

 とはいえ、それはまた別のお話。


ちなみに、佐藤さんのプロポーズの言葉は、本編の恋祭りのお話しの中で佐藤さんがリュイさんに向けて考えていたプロポーズの言葉の案の中から、真っ先に除外した台詞だったりします。理由としては、リュイさんの綺麗な身体に傷を付けるなんてあってはならないというものですか、こちらではテンパり過ぎてつい実行してしまったようです。

夕理さんの設定も色々考えているので、いずれ本編にも登場させたいです。最終回辺りになるでしょうが。






第3章親族会議編は、佐藤さんの名ばかりの婚約者を新たなメンバーに加えた、大学生活のお話しです。平和的?に婚約解消をしようと二人が奮闘していきます。

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