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野良猫(仮)のあきらめは悪い!  作者:
第2章 VS魔王編
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獅子の独白

リュイさん視点のお話です。

 生まれた頃から、自分の周りには冷えた侮蔑や恐怖、絶望が渦巻いていた。もはや暖かく優しい交流なんて望んではいけないのだと、悲しみや怒りの感情を殺して、何も感じないただの人形として過ごすことで自分の心を保っていた。


 世界を滅ぼすと言う予言のせいで怖がられているのなら、相手の望みを叶える無害な良い子でいればいつか誰かが好きになってくれるんじゃないか。


 そう思って面倒事を進んで引き受けていても、運命の神の予言は絶対のものとして避けられる日々は変わらなかった。


 弟だけは俺を心配して声をかけて一緒に遊んだりしてくれていたけど、俺と関わるせいで気が触れたのだと思われて、周囲から人が離れていくのを見て自分から距離を取った。

 優しさをくれた相手には、絶対に一人の寂しさなんて覚えて欲しくなかったから。


 義母は俺の魔力の強さが恐ろしかったらしく、ついには父を説き伏せて俺を世界樹の根元に封じ込めた。同じ一人なら誰もいないところが良い。

 しかし、暇に任せて気まぐれに覗いていた人々の日常で当たり前に与えられる暖かな触れ合いに胸が痛くなった。


 世界を滅ぼす闇の神としてではなく俺自身を見て欲しい。誰でもいいから俺を愛して。


 そう思うのはそんなに不相応な望みなのか? でも、封印された身としてはもう叶わない、なら、皆が嫌うならいっそ皆の望み通りこの世から消えてあげよう。




 そうしたら、皆喜んで笑ってくれるのかな。





 あぁ、やっと楽になれると死のうとしたところで彼女に会った。この世界では有り得ないはずの、黒髪黒目という色彩をもつ彼女に。


 太陽に似た明るさを持ち、見るだけで元気を与えていく向日葵のような人だと思った。

 彼女は俺に死んでほしくないようで、何故か一緒に旅行に行こうと提案された。弟以外に初めて他者に気遣われて抱きしめられて、その腕の温かさを知ってしまったらもう元には戻れない。もっと貪欲に次が欲しくなってしまう。





 お前なんていなければ良かったと思われるのが常だったのに、貴方は俺に生きてほしいの? 






 初めて心から誰かの望みを聞きたい、必要とされたいと強く思って彼女の望みを聞いたのに、返ってきた答えは「友達になりたい」という俺にはどうしたら良いのか分からない内容だった。


 邪魔者を殺したいとか復讐したいとか、大金が欲しいとか国が欲しいとかの願いなら得意分野なんだけど。どう振る舞ったらいいのか悩む俺に彼女は「友達」がどんなものなのか教えてくれると言った。


 そこで、世界樹から離れていられる時間の限界が来て俺は戻らないといけないのだと悟った。だから、自分の名前をあげて目印を付けた。また、会えるように。


 その後、分身体を作り出し世界樹の呪縛から逃れた俺は彼女を探した。しかし、中々見つからない事にどんどん恐怖が募ってくる。もう2度と会えないのでは? 絶望が少しずつ心を黒く浸食していたその時に、黄色い猫に姿を変えた彼女・佐藤さんに再会した。


 叔母夫婦の様子を見ていて、相手の意に添わぬまま自分の愛情を押し付けるだけでは、相手を壊してしまうことは学んでいた。

 だから、少しずつ彼女が不快に思わない振る舞いを観察して、学習しながら好きになってもらえるようにアプローチを仕掛けていった。


 本当は俺以外の生物を瞳に映さないように閉じ込めて、永遠に二人だけで生きていきたいとは思うけど、そんな事をしたら佐藤さんの心を殺してしまう。あの優しいきらめきを放つ瞳を見られなくなるのは嫌だ。だから我慢した。


 愛の神であるブーリにはその心情がバレていたようで、釘を刺されまくったが。ちょっと神域に閉じ込めようかと思っただけで、本気で実行しようなんて。そんな疑いの目で見ないでくれ。


 一緒にいられるだけで、話をするだけで良かったはずなのに、それだけで満足できなくなっている自分がいる事に気づいた。


 ずっと傍にいて欲しい。俺だけを見て何て言わないから、せめて貴方のものにして。


 情けなく彼女に縋りついてそんな身の程知らずのお願いを口にしそうになって、一度世界を滅ぼしかけたために更に強固な封印を施されて、あまり自由に外に出られない現状に本気で感謝した。


 でも、彼女に会わないと本当に具合が悪くなるから会いに行くのはやめられなかった。


 暖かい体に触れて触れられて彼女の声を聞いていないと安心できない。

 いつから、こんなに弱くなってしまったんだろう。

 こんな重い感情、知られたら嫌われる。彼女は友達という関係を望んでいるのに俺はそれ以上の気持ちを彼女に持っている。それが知られたら気持ち悪いと言われる? 芹奈さんが夫の前から姿を消したように佐藤さんも元の世界に帰ってしまう?


 その恐怖に終わりを告げてくれたのも彼女だった。


「貴方が望むなら私のモノになって? 好きで好きで堪らないからもう今更貴方の飼い猫では満足できない。貴方のすべてが私は欲しい」


 顔を赤く染めながらも、真剣な表情で俺が望む言葉を告げてくれる姿に胸が高鳴った。顔が勝手に笑みを浮かべているのが分かる。





 あぁ、こっちに落ちてきてくれた。




 きっと俺は貴方の綺麗で優しい笑みとは似ても似つかない醜い笑みを浮かべている事だろう。こんなどうしようもない奴に捕まるなんて本当に可哀想に。彼女の幸せを願うなら、ここで告白を断るのが正しい。でも、それでも、どうしても離せない。



 答えはイエスしか返せなかった。


次回予告

「さーて、それじゃ日本に帰ろうか」

「あれが親玉マトリョシカか」

「柚月ちゃんの幼馴染として貴方に聞いておきたい事があります」

「海のもしもは118番。海上保安庁、助けて―。海で神様が暴れてるー!」

「今、楽にしてさしあげますよ」

〇次回〇マトリョシカの大群が攻めて来た(白目)

    佳乃子さんが勇者らしく魔剣を携え怪物退治。

    どっかの誰かさんがプロポーズするってよ。の3本立てでお送りします。

    

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