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野良猫(仮)のあきらめは悪い!  作者:
第1章 異世界旅日記編
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飼い主さんを探して○時間

 昨日ぶりに見る廃頽したどこか幻想的な雰囲気の街につく。

 息を整え、とりあえず崩れかけの建物の中をキョロキョロと見て回る。


「一体どこにいるのかな」


 よく考えたら追ってに会ったリュイさんが、ぐずぐずとシャングリラにとどまっているとは限らないよね。


 それに考えたくないが万が一、シアンさんの使い魔になってたらどうしよう。

 その時は頬を引っかいてでも止めないと。主が望まない方向に向かうなら全力で止めるのは飼い猫の務めだよね! さすが、佐藤さん。なんてよくできた猫なのでしょう。褒めていいのよ? 



 建物の中に隠れていたりするかなと目についた崩れかけの古い家に入ってみる。前の住人のものだろう散乱した食器や小物を避けて歩く。家の中にもいないな。捨てられた人形が床からじっと私を見てくる。ガラス玉の青い目に見つめられるのが気まずくて私は足早にその家を出た。


 景色のいい丘の上で弁当を食べて、休息をとりつつ探し始める事およそ五時間。この町かなり広くて未だ見終わらない。うろちょろしている凶暴そうな魔物もいるしね。

 基本的に隠れてやり過ごしたが、こちらを殺そうと襲ってくる魔物は申し訳ないが、返り討ちにさせてもらった。わが身大事。


 近くを流れる小川の水の音を聞きながら、隙間から草が伸びた石畳の道を歩く。すると、前方に天辺が金色の玉ねぎ型になった白い塔を何本も持つ石づくりの巨大な建物が見えてきた。何だかお寺みたい。

 朽ちた石造りの階段の上には、草が生い茂りさらさらと風に揺れていた。石段を登って振り返れば空は青からオレンジ色に変わっていく最中だった。

 夕陽とのコントラストで町が黒く浮かび上がる。赤や黄色、青のランタンが光り始めて綺麗だ。ランタン、君はまだ生きていたんだね。


「リュイさんはもうこの街から出て行っちゃったかなー」


「リュイはまだこの町にいるよ。わざと会わないようにしていたでしょ?」


 冷たさを帯びた声音に出来れば会いたくない方が来ちゃったなーと私はため息を吐く。


「あ、やっぱり私を探すような気配は彼か。こんばんは、ストーカーさん。夕陽が綺麗ですね」


 クスクスと笑みを浮かべるシアンさんに私も負けじと笑みを返す。猫流の。

 シアンさんが私を見張っているのは途中から分かったから、気配を首輪に隠ぺいしてもらってリュイさんがこちらに来ないように仕向けていた。


 そして、まぁ飼い猫(仮)としてはご主人様(仮)を守らないといけない。

 シアンさんに気づいているから、早よ出てこいやオーラを出して陰に隠れる彼を見ながら話しかければ、あっさり出てきた。


 シアンさんはリュイさんを見つけられないから私に近づいて、リュイさんが私に接触するのを待っていたのかな?


「残念だけど、私を追いかけてもリュイさんが来ることはないですよ」


「それは別にいいんだ。君の行動を見させてもらったけど、とてもただの猫じゃないよね」


「首輪様が優秀なのですよ。それで、貴方は誰ですか?」


「あ、自己紹介まだだっけ。僕の名はシアン。この国の皇帝に仕える魔術師だよ」


 まぁ、知っていたけど。電車に乗っている時、焦燥感からいてもたってもいられなかった私は、気を紛れさせるのと敵の情報を知るために、検索エンジンとして有名なあの先生に頼った。

 首輪に念じれば私が日本で使っていたスマホが現れたのには、正直ちょっと笑ってしまったよ。首輪様の有能ぶりが怖い。こちらの情報を検索すればきちんと内容が表示されたのでそれでお勉強すること一時間。


 私が最初に来たあの国は金蘭国というらしく、皇帝がすべての権力を握る専制君主制のようだ。朕は国家なり、は違うか。


 シアンという名前で出るかは分からなかったが一応検索をかけて見ればそれっぽいものは出た。だが、やはりというか公に出る内容は名前と所属のみで顔写真など機密事項は一切出てこなかった。

 ダメもとで情報頂戴と念じれば首輪が光り、検索結果画面に写真やら得意な魔法やら交友関係やらの情報が出てしまって真顔で座禅を組んだら、フユカさんに心配されたのはいい思い出だ。

 これ、金蘭国の極秘データーベースにアクセスしたって事だよね。私のスマホさんはハッキングも嗜むように進化したようです。


 うーん、政治的なうまみがあるからそんなに今の皇帝はリュイさんを手に入れたかったのかな。シアンさんを追い払ってもラスボスである今の皇帝は魔法帝と言われるほどに魔力に長けた人だから、首輪様を利用して戦っても勝てるかどうかわからない。


「猫のお嬢さん。魔物はすべからく悪で滅ぼさなければいけないものだ。奴らは畑や村や町を荒らし、恐怖と涙しか生み出さない存在してはいけないものだ。お前の力なら多くの魔物を撃つことも可能だろう。飼い主が欲しいのなら私がお前の主人になってやろう」


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― 新着の感想 ―
ストーカーで軟派とかお断り一択案件!!!
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