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野良猫(仮)のあきらめは悪い!  作者:
第5章  裁きの女神と黒百合の剣編
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癒しの力、ブルーベリーソフト

「魔力が少ない……」


 私を抱っこしたままお父さんがポツリと呟いた。そのまま不安そうに私の頭や顔を何度も何度も撫でる。

 今の今まで世界樹を甦らせるために魔力を注ぎ続けたのだから当然か。私は1人納得して頷く。

 お父さんは何かを堪える顔をした。大きな手が私の頬を包むと、そのまま温かいものが私の身体の中に流れ込んできた。


「お父様、魔力を下さっているのですか?」


「大事な娘に分け与えるのは当然のことだよ。薺くんのほうだって、今ごろあの馬鹿ライオンが魔力の補充を行っているから心配しなくていい」


 身体が軽くなり、スッキリとした気分。この魔力の強さ、今なら世界でも吹き飛ばせてしまいそうだ。しないけど。


 お父さんに笑ってお礼を言って、腕の中から地面に飛び降りる。過保護な父親はまだ心配そうだ。


「私はもう大丈夫ですから」


「……夕理さんがその口調ってことは、相当頭にきていることがあったみたいだね。一体何があったの?」


「この世界樹を蘇らせるための魔力源として、愛良様がこの星に連れ去られたのです。だから、私はなんとしてでも彼を取り戻さなければなりません」


「世界樹って。あー、この金色の木か。ユグドラシルの世界樹とはまた随分違うね。あれ、でもこの魔力?」


 お父さんが考え込むように顎に手をおいた。ガサリと草を踏みしめる音がしたのでそちらを見れば、顔色が格段に良くなったお兄ちゃんと、何処となくポヤポヤした雰囲気の明陽さんが現れた。


「お兄様、もうお加減は大丈夫ですか?」


 顔色は良いがそれでも自分で確かめたくて、飛びつくように兄の傍に寄った。手を握って魔力の流れを探れば、普段と同じ魔力の値に戻っている。一先ずホッとした。


「ごめんね。心配かけて」


「全くですよ。私だってお兄様には苦しい思いをしてほしくないのですよ。まして私の為だなんて。もっと自分を大事にしてください」


「あー、まぁ、善処するよ」


 これは無理ってことだな。監視の目を光らせておこう。


「エファはちゃんと薺くんが満足するまで魔力をあげたの?」


「勿論。僕が薺さんのことで出し惜しみするはずがないだろう。……いや、自分で聞いておいて露骨に顔を顰めないでくれないかな?」


「なんでよりによって薺くんの恋人がお前なんだよ。薺くんがエファを好いているから殺せないし」


「ナチュラルに殺害予告はやめろ」


 お父さんってやっぱり明陽さんには当たりが強いよね。これも一つの仲の良さの現れなのかもしれないけど。私だってお兄ちゃんにはついちょっと暴言吐いちゃったりすることもあるし。……少しはお兄ちゃんに優しくしようかな。










「ところでエファ。あの世界樹の元となる魔力に覚えはない?」


「え、一見すると夕理さんの魔力が主だけど……。あれ、初めて見る木のはずなのに僕にも何だか覚えがあるぞ」


 明陽さんは腕を組んでうーん、と考え込む。そして何かに気づいたように瞳を大きくした。


「あ。これ前に、ユグドラシルの世界樹から魔力を奪っていった者たちが纏っていた魔力と同じだ」


「なるほど。思い出した。あの時ユグドラシルの世界樹から魔力を盗んでいたのはこの星の者だったのか」


 二人で納得されても、私たちは疑問符が増えるだけだ。無意識に頬が膨らむ。お父さんが苦笑しながら人差し指でツンツン頬を突いてくる。


「薺さんが生まれた時にね。ユグドラシルを支える世界樹から、突如大量の魔力が何処か別の空間へと流れ込むという異常事態が起こったんだ。魔力を吸い上げられた世界樹が枯れ始めたために、俺たちは原因究明と失った魔力を補完するために世界樹の調査を行った」


「そして、魔力を注いでいた時に世界樹から魔力を抜き取っていた犯人を遭遇した。彼らは我らを見て、新たな神を創り出す実験の材料にいいと宣って攻撃して来たんだ。どこか別の宇宙から来た者たちだとは思ったが、どうやら魔力のパターンからいってこの星の者だったようだな」


「あの騒動のせいで、俺は薺くんが生まれるときに間に合わなかったからね。あの時の恨みを晴らすには調度いい」


 お父さんが闇の神らしい酷薄な笑みを浮かべた。白木さんと菖蒲さんが青ざめる。


「それは……。うちの者が大変申し訳ないことを」


「ん? 貴方達には怒っていないから大丈夫だよ。安心して。いつも娘と仲良くしてくれてありがとうね」


 夕理さんの友だちじゃなかったら容赦してない、という副音声が聞こえたような。なんだろう。背筋が寒くなる。菖蒲さんたちの顔色が青を通り越して白になる。私は庇うように白木さんと菖蒲さんの前に立った。あ、お父さんがショック受けた顔をした。でも、知ーらない。私のお友達を怯えさせるのが悪いのだ。


「皆様のお陰で世界樹が蘇りました。本当にありがとうございます。どうか心ばかりですが、お持て成しをさせてください」


 空気を変えようと思ったのか、フィオ様が嬉しい提案をしてくれる。森の妖精さんたちが早速、この森で摘んだのだというブルベリーで作ったというソフトクリームを食べさせてくれた。

 可愛らしい妖精さんたちが一生懸命運んできてくれるのは、可愛いすぎて癒し効果が倍増だ。有り難さに心で拝んで味わって頂く。

 柔らかな紫色のソフトクリームは、ブルベリーそのままという自然な甘さでとっても美味しかった。夏の気候にはこの冷たいソフトクリームが堪らないのよね。身体の疲れが回復する。


「夕理さんの機嫌が直ったようで良かったよ」


 お兄ちゃんと金烏さんが、あからさまにホッとしたように大きく息を吐く。お父さんがチラチラこちらを見ているのは分かるので、一瞬だけ笑いかけてやった。後は知らん。金烏さんが私の肩に乗ってきたので、頭を撫でてやってからソフトクリームを差し出す。


「確かにうまいですね。お姫様が気に入るのも分かるー」


「まだまだお菓子をこちらに準備しているので、どうぞお好きなだけ召し上がってください」


 世界樹の前にテーブルが出現する。切り株で作られた大きなテーブルにはところ狭しと、ケーキやムース、タルトに果物の盛り合わせといった色鮮やかなスイーツが並んでいた。果物が沢山使われたお菓子はいかにも森の恵みって感じだな。

 甘いものが好きなお父さんは喜ぶだろうが、そこまで甘味が得意じゃないお兄ちゃんは若干笑顔が強張った。よく見ると、クリームパスタや野菜入りのキッシュもあるからお兄ちゃんはそっちを楽しめばいいと思う。


「このスイーツの群れ。親父が見たら大喜びしそうだな」


 日奈さんって、確か毎日一個はケーキ食べないと生きていけないくらい重度の甘党だもんね。この光景は日奈さんにとっては素敵なものだろう。いつ帰れるか分からないからお土産にもしにくいしなー。


「ボックスにいくつか入れて保存しよう」


 フィオ様に許可を取り、花楓くんがゲームのアイテムボックスに似た魔法を行使してケーキを空間に放り込んでいく。この中なら時間の経過がないから

 それに安心して、私も目の前のスイーツたちに向き合うことにした。森の花々から蜜を集めて作られた蜂蜜が、たっぷりかかったパンケーキを頬張る。黄金色の蜂蜜の甘さがなんとも言えない。

 甘いスイーツの合間に、ステーキや揚げ野菜も食べる。甘いのしょっぱいのの組み合わせって無限ループしてしまうな。

 じゃがいもはホクホクでカボチャは仄かに甘い。お肉は柔らかくて美味しかった。そして何よりフルーツベースのステーキソースが美味しくて、野菜にも着けて食べた。食が進む。今まで食べたステーキソースの中で一番美味しいかも。











「もう夕方ですし、良ければ泊まっていかれませんか?」


 フィオ様から有難い提案がなされる。愛良さんを取り返すまでどの道地球に帰る気はなかったから、野宿ではなく普通のお布団で眠れるのは嬉しい。でも、皆はどう思うだろう?


「花楓はそろそろ家に帰ったほうが良いんじゃないか? 佳乃子(かのこ)さんや日奈(にいな)さんたちが心配してるよ」


「前にも言ったけど、乗り掛かった船だから最後まで付き合うよ。大体、うちの両親が俺が助けを求めているわけでもないのに心配なんてするはずないだろう」


「なら、いいけど」


「日奈やブーリには一応これまでの経緯を連絡したから大丈夫だよ」


 お父さんったらいつの間に⁉


「花楓さんなら大丈夫って反応だったね。あと、お土産よろしくって」


「やっぱあの時ケーキを持ち帰る選択にして正解だったな」


 花楓くんが腕を組みながらウンウン頷く。そもそもこの世界のお金とかないから仕方ないよね。

 フィオ様に案内されて森を抜ければ、その童話に出てくるような家は唐突に現れた。

 一見すると見たことないほどの巨樹だ。しかし、よく見ると木の幹に窓や扉がある。なるほど。これが本当のツリーハウス。

 中も手作り感のある木の家具で統一された可愛らしいものだった。デザインにはナチュラルモチーフをふんだんに使われているから童話の世界感がある。


「この家の裏には露天風呂もあるのです。今の時期は満天の星空の下で癒やされますよ」


 露天風呂! 疲れた身体には嬉しい。私はテンション高めに思わず手を叩いた。

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