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忘却の創造神が新世界で無双する  作者: かぼす
創造神、創造す
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創造神、テンプレに遭遇してからの思わぬ恩恵

 夕飯、パーシモン一家と俺は『大地の恵み亭』という宿屋兼レストランに訪れていた、ロベルトさんマウラさんジェフの3人が4人席に座り、俺もジェフの隣に座ろうとすると……。


「おいおい! この店は奴隷を席に座らさせんのか? 俺たちは奴隷と同じなのかよ?! ひゃっはっはっはっは」

「おうおう! そうだなぁ、さっさとこいつを地べたに這いつくばらせるか店の外に追い出しちまえよ?」

「はっはっは!」


 突然、全身が薄汚れた武闘派……のように見える男達が騒ぎ始めた。

 

「おいおい! さっさと追い出せよ? そのちんけなクソガキをよぉ、俺らはDランクの冒険者だぜぇ?」

「おうおう! 速く動けや! そろそろ手が滑っちまうぜぇ? こんなちんけな村、どうとでもできんだよ!」

「はっは!」


 店内は騒然とする、ざわざわとして辺りを見回すがそれに何の効果があるわけもない、だが何もできない人はだれかに頼ろうとして辺りを見るのだ。


 そんな中、ロベルトさんから何かを言われたジェフが店の外に走り出した。


「おいおい! あのガキ、この奴隷を見捨てて逃げやがったぜ」

「おうおう! いいじゃねぇか、さっさと甚振っちまおうぜ?」

「はっ!」


 そう言われると店内の空気が大きく変わった……、俺? 俺はずっと立ちすくんでいた、動いたのは店員さんと居合わせたお客さんたちだ、空気が変わると同時に俺の前に、俺を守るように立ちはだかって冒険者に向かい合った。


「てめぇら、この子を追い出そうってのか? それはならねぇよな? みんな?!」

「おう! そうだそうだ、なんだこの程度のチンピラ、掃除してやるぜ」

「ですね、分不相応かつ、悪逆非道な輩には、それこそ相応な仕打ちが必要ですね」

「まったく、この子に喧嘩を売るなんざ神に喧嘩を売るようなものだよな」


 そして最後に声を挙げたこのお店の店主さんは俺に背を向けて冒険者の方に向き合った、この人は入店時に自己紹介をされたのだが、昼間に屋台に買い物に来てくれていたみたいだ、そして店の入り口をニヤリとしながら話し始めた。

 

「まったく躾がなってないですね、もう大丈夫ですよナギ君、ねぇそうでしょう? 『暴虐』と呼ばれて恐れられた『パセラ・ココリラ』元A級冒険者様」


 ニコニコしながら店に入って来たのは……教会の神父さん?!

 

 神父さんが暴虐!?


「やめてくださいよ、古い話ですから」


 そうニコニコしながら言うが、言い終わると同時に薄い目となり、冒険者を睨みつけた。


「おい! こいつら弱いやつらがつるんで粋がってやがるぞ」

「おう! 虚勢はってやがんな?」

「はっ! ………?!」


 立ちはだかった神父を見て冒険者一味の一人が何かに気が付いたらしい、それにつられて『暴虐』という言葉の意味を考え始めた残りの二人。


「はっ! まてまてまてまて、『暴虐』って言ってたか?!

「おう? ん? あん? っ! ……その名前は」

「あ……あなた様は?」


 …


「『暴虐』……懐かしい響きですね」

 

「はっ! ……暴虐だと!? あの有名だったクラン『ディストピア』のか?! んなわけないだろう? こんなちんけな糞田舎によぉ? それに見てみやがれ、こんなよぼよぼな爺が暴虐な輩に見えるかってんだ、そんなのに俺らが負けるとでも?」

「おう! そりゃそうだな、目にもの見せてやるぜ」


 もう一人は乗り気ではないようで、二人から少し離れたところで様子を見守っている。


「まったく、こいつ魔法が使えるってんで買い取ったのによぉ武器整備にしか役に立ちやしねぇな、ここで売り払っちまうかな」


 神父は少し顔を上げ、離れた一人を見つめた。


「ほう? いいでしょう、それでは貴殿を犯罪奴隷に落としてしまいますね、小さい犯罪ですがすでに恐喝・恫喝の現行犯です、奴隷にさえしてしまえば借金奴隷の解放金額を半額にした上に、教会の懐は1ルークも痛みませんので」


 そう言われ冒険者の二人は口元をヒクつかせながら神父さんに襲い掛かった……っと思ったら。


 襲い掛かった二人が寝息を立てて寝始めた……どうなってるんだ?


「まったく魔法耐性が無いですねぇこの二人は、こんな無詠唱、ノーモーション、魔術陣のどれも使っていない低級闇魔法だったのですが……」


 それを聞いた瞬間『魔法』『魔素変質:闇魔法』『闇魔法:睡眠』という単語が頭の中に流れ込んで来た、『木工』の時は一部の項目はすぐにも再現できそうな気がしたが、今回は『魔法』が使える気は全くしなかった、なにか条件が足りないのだろうな。


「それではナギ殿、ロベルト、ごきげんよう、あぁ元黒蠍の……ついて来なさい」


 男二人を担ぎ颯爽と宿屋を出ていった神父を、少しだけ茫然として見つめた後慌てるように男は追いかけていった。


 事件はあったが次第に宿屋は落ち着きを取り戻し、美味しい料理を食べて満足すると家路へとついたのだった。

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