元奴隷、凍れる人、失われた信仰
ライズの街につき辺りを見て回るのだが動いている人はいない、3手に分かれて街の中を捜索したのだが、集合場所としていた水の教会前に集まったときには暗い顔をしていた。
「だめですね、一人も動いている人はいませんでした、人だけではなく、犬や猫、そして鳥にいたっては空中で静止していました」
「さすがにこれは……おぞましい光景だなぁ」
「俺の方やっぱりだめだった、とにかく暗くなってきたし今日は教会で泊めさせてもらおう」
教会の中に入るが、やはり神父さんも修道士さんも水の神様の石像に手を合わせた姿勢で固まっている。
「とにかく寝ようか、今日は霧の中で歩き続けて疲れたよ」
「そうですね、ふあぁぁああ」
「じゃ、おやすみー」
人の気配のない街、とどろく滝の爆音、そんな不思議な雰囲気の中で眠りに落ちていく。
……
「ナ…」
「お……ギ」
…
「ナギ様!」
「おいナギ!聞こえてんのか」
アッシュとフラム以外の人の声がする……。 え? 人の声?
慌てて目を覚ますと、白い空間に二人の見覚えのある人……いや、クエビコとカグツチが立っていた。
「ようやく目を覚まされましたね」
「まったく……こんな状況だっていうのによ」
「カグツチ? あなたはもう少し話し方に気を付けたほうがいいんじゃないですか?」
「うっるせぇなぁ……って本当にそんな場合じゃねぇんだよ、最近俺らへの信仰心がお前のお陰で高まったんだが、その影響でミツハへの信仰が減っちまってな、信仰心不足で魔力が足りなくなっちまって……あいつ寝ちまったんだよ」
「カグツチ? それじゃ何も伝わらないでしょうに……、ごほん、ミツハとは水の神の名前です、そしてこの街を支えるミツハが休眠してしまったことで、この街はもちろんその他のミツハを主な信仰対象としていた場所は多少影響が出てしまっているようです、もちろん本体ではなく、この街にいる分体が寝ただけなのですけどね」
「早い話が、ミツハを起こさないとやべぇってことだよ」
「ですが、神の眠りに干渉するためにはやはり魔力を集めるしかありません、ナギ様にはこの『呼び風鈴』の音を街の人に聞かせて信仰心を呼び起こしてほしいのです」
「その風鈴を聞かせると、昔ばなしみたいに伝えられた記憶が呼び覚まされるんだ、その効力で信仰心を取り戻すことができるんだ」「あぁ、夜が明けてしまいますね、私たちはミツハを起こすように動きますので、住人を宜しくお願いします、風鈴は何個か祭壇に置いておきますね」
そう言い終わるとまばゆい光に包まれていき思わず目を閉じる……次に目を開けると教会の天井が目に入って来た。
起き上がり左右を見るが二人はまだいびきをかいている、そんな二人を尻目に7体の石像に囲まれた祭壇の中央に行くと、言われたとおり、微かに虹色の光を纏った風鈴が5個置かれていた。
※風鈴って1本2本とも数えるらしいですね、調べて初めて知りました
風鈴を手に取り、アッシュとフラムのところに戻るとすでに目を覚ましていたので、とりあえずクエビコとカグツチから聞かされたミツハについてを伝えたのだった。
……
ちり~ん……。
手分けして住人達に風鈴の音を聞かせて回り始めた、最初のうちは何の反応もなかったのだが少し経つとあることに気が付いた、年を取っている人からは、たま~~に音に反応して金色の光が頭から放たれて教会へと飛んでいく。
ちり~ん…。
ナギ君とフラムと別れて滝の方を中心に風鈴を鳴らしている、崖から数百メートル下を眺めるが、水しぶきや霧で底を見ることは出来ない……おっと、風鈴風鈴、忘れてはいないさこの辺りには下とこことを繋ぐカーゴがあり、そこが物流の拠点だからな、人がたくさん集まっているから効率的なのさ、数十人同時に風鈴を聞かせると数人から金色の光がキラキラと出ていった、きっとこれが信仰心なんだろうな。
ちり~ん。
そもそもだ、なんで当たり前のように神様と話しただなんて言ってるんだ? 普通そんなこと信じるか? この風鈴はなんなんだ? 神様からもらっただなんて信じられるわけがないだろう。 そら修道士さんよ『ちり~ん』ほら……なんも起こらない……? ん? 外から金色のキラキラが飛んできて……修道士さんと近くにいた神父さん、それに水の神の石像にも流れ込んでいき……。
!?!?!
「お~~い! ナギさん、アッシュさん! こっちに来てくれーー!」
……
大声で呼ばれて教会に駆け込むと、神父さんと修道士さんの硬直が解けていた、だが周りの人たちが固まってしまっているの目にした結果混乱しているようだ。
「おいモチル、これはどういうことだろうか」
「知らないですよホルン様、むしろこちらが聞きたいのですが」
そんな二人に近づいていく。
「お? おお!? 動いてる人もいるようだぞ」
「ふ……ふぇぇぇぇぇ!! よかった、よがっだ……こんなおじさんとふだりじがいないだなんで……よがっだんだよ゛」
※訳、ふぇぇ、良かったです、むさくるしいオジサンとあたししか動いている人がいないだなんて耐えられません。
「大丈夫ですか?」
一番年長らしく(実年齢はフラムの方が倍以上も上だが)こういったときはアッシュが最初に話をしてくれるのだ。
「えぇっと、大丈夫とはどういうことでしょうか?」
「あぁそうですね、周りの人たちが固まってしまってることには気が付いていましたよね、お二人も同じように固まっていたんですよ」
唖然とする二人だが、それを否定する根拠などどこにもない。
「本当ならそんなこと信じられるかと言いたいところですが、実際(横目に祈りに来ていたのであろう老人を見る)あれを見てしまうとそんなことも言えないですね……ですが、ではなぜ私たちは動けるようになったのでしょうか」
たしかにそれは気になるところだな……、だけどこれを説明するには神様を信じてもらう必要がある……か。
「説明をする前に、フラムもこっちに来て……左手を、ほら」
聖痕と欠痕をそれぞれ神父さんたちに見せる。
「……!! 息が止まるかと思いました、これは……聖痕ですよね」
「ふぇぇぇえ!!! 聖痕ですかぁぁああ!」
やっぱりいつも通りいい反応が返ってきた。
「それでこちらのナギ君なんですが完全な聖痕を2個も持っていて、この街に来たらみんな固まってしまっていたので、仕方がなくこの教会で一晩過ごさせてもらっていたんですが、その晩にこの2個の聖痕を授けてくださった二柱からご神託を受けたようなのです、そしてその神託に従って祭壇に向かうと、この『呼び風鈴』というこれが5個置かれていたみたいです」
「そんなことがあるのか?」
「だけど実際にあるんですもん、しょうがないじゃないですか」
なぜか二人で悶着し、しばらくしてから再びこちらに向き直って来たので説明を再開する、アッシュがね。
「続きを良いですか? ……では、この『呼び風鈴』ですが、信仰心の力のようなものを呼び起こす魔道具みたいな物のようです、実際に風鈴を鳴らしてみて効果を見ましたが、信仰が厚そうな人からはより多くの信仰心というのか信仰力というのか、そのような物が放出されているようでした」
「なんでそんなことがわかるんだ?! 謀っているのか」
「あなた方を謀る意味が私たちにありますか? それが根拠です、それで十分では?」
そうだ、俺たち3人はこの街に関係はない、水の神のミツハへの巡礼以外には、面白そうだという話で興味があった以外では、ただの通り道にするつもりだったのだ、アッシュはニヤリと話を進めた
「明日からは、お二人にも手伝っていただきますね、 人手は足りてはいませんからね」




