元奴隷、風と漁と大地と、孤児
短めですが、次の旅が始まります。
さて次の日は水魔法を教えてもらうことになった、……のだが船上で風魔法の特訓中、海の上の方が水のマナを感じやすいらしく沖にでる、そしてそこまでの間は山からの風を感じつつさらに魔法で帆に風を送るというなんとも一石二鳥な特訓となった。
風魔法は使えば使うほどに威力が上がっていく、基本が奥義ともいえるような魔法らしく、この風で弓矢の遠距離攻撃に補正をかけたり射程を伸ばしたり、自身に風を当てて体の動きを補助したり、達人になると何故か重力の操作をして体を軽くすることもできたり、伝説では空を飛ぶことが出来た人までもいるらしい。
そんな話を聞きながら黙々と風魔法の習熟度を上げていると、船長さんの叫び声で止められた。
「おい! 小僧! その風いい加減に止めやがれ! 帆が破けちまうだろうが!」
そう言われて帆を、マストを見るとギシギシと悲鳴を上げて軋んでいた。
「あぁ……すみません、つい夢中になりました」
「はぁ……やっぱりナギ君はすごいですね? 一回見ただけで、ねぇフラム?」
「本当ですよ、こんなに早く覚えられてたら立つ瀬がないですよ、流石完全な聖痕持ちですね」
「あぁ、まったくすげぇもんだなぁ、聖痕っつぅもんは良くは知らねぇが、すげぇおまじないみたいだな」
「まぁいいさ……ほら漁場に着いたぞ、さぁ風のお時間はお仕舞だ、まずは水を感じる魔力感知の基礎『『水魔法:感知』ソナー』だ、見本……っと言っても見えないからな、オイお前ら、俺の背中に手を添えてみな」
言われるままに俺とアッシュ、そしてフラムは船長の背中に手を添える。
「おっし、いいな? 見るんじゃない、感じろよ? 風魔法を先にやらせた意味が分かるだろう」
水に神経が通い、風の力で振動を起こしその振動の反射で海の中を駆け巡るような感覚、海の中の様子がはっきりと見えるかのような感覚だった。
「おぉし、見えたか? それが出来たならもう水は操れるんだ、魔法だなんだっていうよりも感覚で覚えたほうが分かりやすいだろう? さぁ今覚えた感覚を忘れないようにしとけよ? オイお前ら! 漁を始めるぞ?! 今回はソナーがたくさんいるんだからな、過去最高の釣果を狙いやがれ」
その号令と共に漁師の一行は海に釣り竿を投げ入れていき、そのまま一本釣りで大物を宙に舞わせる……サーダというソコソコ大きな春先が旬の魚をガンガン釣り上げていった。
※説明するまでもないですが、カツオの釣り方をするサワラ(鰆)です
その後もいろいろのな漁法を教わりつつ、魔法の修行をしながら時は過ぎていき、今日の漁は豊漁のままに終了した。
NEW!『風魔法:送風』
NEW!『水魔法:水生成』『水風複合魔法:感知『ソナー』』
……
修行を終え、漁のノウハウや、釣れた魚の料理法(それ以外の記憶に残っていた料理法)を教わる日々を過ごしていると、夏が近づき、また町から旅立つ季節になっていた。
「ナギ君、結局フラムもつれていくことになったんですね」
数か月一緒に過ごして気軽に話せるくらいには仲良くなっているから問題ない、そのまま一緒に旅に出ることにしたのだ。
「まぁね、フラムも是非って言ってから」
「いまさら置いて行くって言われたら酷すぎますよ、流石に」
「聖痕持ちが二人も居たら何の問題もないですしね」
マチルは聖痕が大好きでいつもそれをネタにしてくるようになっていた。
「とにかく、この町の人はみんなナギ殿様様とアッシュさんには感謝してるんですよ、教会再建の事だけじゃなくて灯台の復活に、さらには昔遭難した漁師さんが戻って来た……町の大恩人です」
マチルさんの後ろには、漁師さんや町の人たちが大きく頷いて俺たちを見送りに来てくれている。
「ここから次の『ライズ』の崖際街に行くには海岸沿いを進んでいけばいいから道に迷うことは無いはずだ、じゃぁ達者で行って来いよ」
そうフラグにしか聞こえないようなことを漁師さんが言ったのを合図に、俺とアッシュ、さらにフラムを加えた3人は千の物語を持つ町、ポルカの港町を後にした。
ミチル→マチル と登場しました。
さてさて。




