創造神、地上に堕つ
目が覚めると花が咲き乱れるとても広い草原、花畑を囲むようにさらに広い大草原が続いている。
その花畑のど真ん中で創造神……いや、少年の姿をしたそれは目を覚ますことになった。
「う……うぁぁ? ここはどこだ、俺はなんでこんなところにいる? ……いや、そもそも俺は誰だ?!」
首に違和感を感じ手を当てると首輪のようなものが付いている、外そうとするが外すことが出来ない、そして貧相な布の服に靴すらも履いていない状態だ。
「何もわからないぞ、良く分からないけどいつまでもここで寝っ転がっている場合じゃない気がする」
ここがどこだかさっぱりわからないのだ、とにかく歩くしかない、人里……最低でも人か食べ物を見つけないとそれだけでのたれ死んでしまう、そんなのは御免だ。
……
どれくらい歩いただろう、行けども行けども草原が続く、何日間歩いたのだろう、腹が減った、のどが渇いた……あれ? こんな感覚が、思い出せないけど昔にあったような気がする……。
ドサッ!
そのまま倒れこんでしまう、そこはとある街道からさほど離れていない見通しの良い場所だった。
……
しばらくして馬車が通りかかる、その御者をしている男が少年に気が付いたようだ。
「お?おい! あっちに誰かいるようだぞ、見てくるから少し待っていなさい」
そう言うと恰幅の良い、だがなかなかどうしていやらしさの感じない装いの男性が少年のもとに向かい、意識の確認、生死の確認をする、そしてただの気絶であることを確認すると念のため腕を後ろ手に縛ったのち、少年を抱きかかえて馬車へと引き返して荷台に寝かせた。
「この子……奴隷かしら? この服に、その首輪は……それ以外には考えられないわよね、あなた」
「あぁ、たぶんそうだろうなマウラ、まぁ首輪にはちゃんとタグが付いている、次の村で引き渡せば身元も分かるだろうさ」
「父さん、この人どうなるの?」
「そうだなぁ、悪いことをしていないのであれば解放される可能性もある、だが借金奴隷の場合は借金を返すまでは村から出ることは出来なくなるな、まぁそれもこの子の管理主の状況次第だがな、いざとなればこうして会ったのも何かの縁だ、食事の面倒くらいはみてやるつもりさ……」
この世界の主な奴隷には借金奴隷、戦争奴隷(捕虜)、犯罪奴隷の3種類がある、このうちの借金奴隷に関しては借金さえ返すことが出来れば解放されることが出来る、主人が死んで相続する人間がいなくなっていた場合にはその借金残高の半額をなんらかのギルドを経由して支払うことで同じく解放されるのだ。
「こう言うのもなんだが、借金奴隷の場合は主人が事故死するのが一番都合がいい、だから借金奴隷は疑われやすいんだ……わかるな? この子がそうでないことを祈るよ、さぁもう少しでダサーラの村に着くぞ!
……
【とある別世界の天界】
「む……? あやつ、また新しい世界を創ったようだの、 あやつの創る世界は独特で面白いからな、 どうせ数億年は目を覚まさないだろうし、目が覚める前にちょこっとイタズラをさせてもらおうかの」
「本当にイタズラが好きですね主神様」
白い衣を羽織った老人に対し、秘書のような女性がため息交じりに苦言を呈す。
「まったくしかたないですね、ゼウス様は」




