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忘却の創造神が新世界で無双する  作者: かぼす
創造神、巡礼す
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元奴隷、千里灯台物語(後)

 やっと本当の頂上に来ることが出来た、そして足元のガラスを見ると中央に赤い魔石がはめ込まれそこから壁沿いに黒い線が大魔石につながっているのが見える、この黒い線はよく見ると純度の高い鉄のようだった……クロガネっていうのかな。


 その黒い線はここから見ると、それは大きな黒い円の中にさらに円が重なり合わないように3個並び、その円の中に三角が描かれるような『魔法陣』だった。


 手すりに彫られた黒い線が陣の線になっている、黒い線以外の手すりの部分はここから見ると透けて見えるので途切れることは無くきれいな魔方陣に見えるようになっていた、さっき手すりから感じた魔力はこの透過のためなのかな?


 だけどここから見るとはっきりとわかる、魔力の循環と増幅を司るサーキット(魔力回路)部分が一か所かけてしまっているようだ。


「おいガキ! まだなのか!」


 まったく……またトルカとかいう人が騒ぎ始めそうだ、だけどここからじゃ直しようが……いやアッシュがいる、アッシュなら鉄操作が得意だし土の魔法も使えるから……やれる。


「アッシュ! そこから5階層降りたところにある手すり、黒い線が欠けてるのを直してくれ! 手すりは土魔法でたぶん大丈夫だ、その後はその周りの黒い線を繋ぐように窪みを付けた線を引いて、鉄でコーティングするんだ」

「え? あ!? わ……俺ですか? えぇ……っと、あぁあそこですね、分かりました少し待っていてください」


 さすがアッシュ……少し自分でも驚いた、あの程度の説明でも理解してくれるというのは有難いな、さすがに何か月も一緒に神父さんの下で魔法の修行をしてきたわけじゃなかったってことだよな。

 

 アッシュはすぐさま欠けたところまで走っていくとスムーズな手つきで手すりの補修と黒い線の引き直しをしてくれた。


「ナギ君! これでいいですか? あとはお願いします!」

 

 よし、これで魔導で使用する魔法陣が復活した……魔導はその図形や文字が効果を補助する魔素学だ、たぶんこれが途切れたことで以前の灯台を灯す魔法が切れてしまったんだと思う、あとは火の聖痕から魔力を、大魔石にではなく、この本当の頂上から注げば……!。


 この出来事は後世にこのように記される、それは石碑の横に付け加えられるように刻まれることになる。


『大陸最南端にて、旅人や漁師を支えし千里を灯す灯台は火の聖痕を持ちし旅人によって創られた、だが年月が過ぎるとともにその輝きは衰えてゆく、その輝きが失われて幾星霜か過ぎた時……黒髪黒目、身の丈は齢十を数えるかどうかという少年がこの地に降り立った、かの少年はこの地の教会に来るや火神の聖痕を賜ると其の後、神々しき赫色の閃光と共に、灯台の灯を取り戻さん』


 書かれていることは合っているのじゃが……こんな単純な内容でよかったのだろうか……まぁ伝聞するためには簡略化しないと話が間違って伝わるからのぉ、ナギ……かそれも懐かしい名じゃな……。


 不意に巻き起こる喝采、その波につぶされそうになって逃げ惑うアッシュ、さらにそれを上から見つめつつ、復活した灯台の灯に視線を移す……。


 強烈な灯を海上や、大陸の方へと閃光を撒き散らし何処までも届くかのような灯台の灯は物語の一節と共に、後世まで語り続けていくのであった。


 その喝采は衛兵はその場に居合わせた人だけでは止まらない……伝聞の末に町の人たちに、留まることを知らない濁流のようにその奇跡は広がっていく、そのような喧騒に町は包まれながらも、夜を迎えるとともに落ち着きを取り戻していく……っと思ったのだが。


 灯台が復活したその喜びは、たった一晩で冷めることはなかった。


 翌朝、灯台の周りには灯台の高さに匹敵するかのように背を伸ばしたベインバンブーが生い茂っている、町の人たちはなぜかこの竹の使い道を俺に聞いて来た……ダサーラの時と違って町の中で生えてきたのだから町長さんなりに決めてもらえばいいのだろうに、二日連続の騒ぎの中、駆けつけてきたトルカ達衛兵は俺を見るたびため息をついた。


「「「またお前か……」」」


 とにかく、朝目が覚めて灯台を訪ねてみると灯台の周りにベインバンブーが茂っていたことを告げる、そしてそれを見ているうちに住人たちが集まってきて何故か俺にその使い道を聞いて来たということを説明した。


「それで? お前はどうするつもりなんだ? 独占でもしようっていうのか?」


 トルカが若干切れ気味に聞いて来た……がそんなつもりはない、火神カグツチにも言われたが教会の再建が今一番の目的だ、その為に用立ててもらいたい。


「どうもこうもないです、教会の再建に使ったらいいんじゃないでしょうか、竹なのですぐ伸びてきますしある程度丈夫なうえに加工とても簡単です、神様の石像を雨ざらし……というか屋根のないところに放置するわけにもいかないので、あとは町のために使うのがいいんじゃないでしょうか、自分の分はダサーラで採れたので十分に持っていますしね」


 住人たちがざわめく、ダサーラがベインバンブーで様々な商品を生み出したことを風の噂で聞いているのか、その竹が町のために使われる? というのだ、それは有難いことなのかもしれない。


「お……お前所有権を主張したりはしないのか?」


 なぜかトルカに驚かれる。


「しませんよ、そんなこと」


 トルカは固った、そうこうしているとそのトルカの背後から、恰幅の良いちょび髭の男性が住民を押しのけて姿を現した。


「トルカ、いつまでそうしているのだ、このように民衆の前で情けない」

「お……おやじ?」

「まったく……」


 そのおじさんはトルカの父親らしい、そして俺の方に向き直ると同時に再び口を開いた。


「トルカがすまないな、私はこの町の町長の『クレタ・ポルカ』だ、それでなのだが、竹を村のために、そして教会のために使っていいというのは本当か? この灯台の辺りはご先祖様から所有権は決めないようにすべしと伝えられていてな、町の外と同じ扱いなのだ」


 なるほど、だから驚かれていたのか。


「町のために使ってくれていいですよ、ただカグツチ様から頼まれているので教会の再建を優先してほしいです」


 そう何気なく言った一言、カグツチからの頼み(・・・・・・・・・)というその重さによってクレタさんだけでなく、町民の時間が止まってしまったのかのように喧騒が止まった。


 

 ……

 

  灯台の灯りは千里を超える、それは海の沖からの導としてだけではなく、陸路を行く者たちが昼間に方角を確認するために使うことが出来る、灯りが失われて以降陸路は導が無いことから夜間の移動をすることはなくなっていた。

 

 ファウンダー半島の名の由来、創業者を意味する『Founder』ともうひとつの言葉掛け合わせられてそう呼ばれるようになったそうだ、そのもう一つの単語とは『見つけた』を意味する『Found』だったらしい、何千、何万人もの旅人や冒険者はこの灯台の灯りによって自身の位置を見出したと感謝の念から、人知れず広まりそう呼ばれるようになったそうだ。

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