創造神、出立す
「では……ナギ殿、こちらにお金を入れてください」
神父さんはそう言うとゴブレットとかいうものを目の前に出して来たので、銀貨を25枚そのゴブレットの中に入れると青い炎に包まれて銀貨はなくなっていく。
それと同時に俺の首に巻かれていた首輪はちぎれ、タグは青い炎に包まれて燃え尽きた。
「おめでとうございます、ナギ殿……! これであなたは準借金奴隷ではなく平民の地位を手に入れることが出来ました、次に祭壇に祈りを捧げてください。」
促されるままに7体の像に囲まれた祭壇の間に立ち、祈りをささげた。
また白い世界にやって来た……、そしてクエビコ様が語り掛けてくる。
「おお、ナギ殿、無事に記憶を呼び覚ましはじめたようだな、まだ加護のような力を与えることは出来ないが、今後進むべき道について助言……いや神託としておこうか、まずはここファウンダー半島にある『火』と『水』の教会を訪れるが良い……それぞれの地で君の力が必要とされるだろう、まずは南西の山脈が終わった少し先にある『火』の港町に行き、その後に『水』の滝が上がる街に向かうと良いだろう、この半島の中にある教会はあと2か所だ、各国内に6神の教会は存在しているが、町や領地によっては神に拝まずに自力で頑張ろうとしているような場所もある、まだ先の話だが、そのような場所では多少苦労するかもしれないが、頑張ってくれ、では次の国で会えるように信じているぞ」
聞きたいこともあったのだけど、一方的に話されて終わってしまった……。
とにかく、今の信託? のようなものを神父さんに相談する。
「そうですか……、クエビコ様はそのようなことを仰られたのですか、そうですか……、そうですか……、ふむぅ……旅……ですか」
そんなことを話していると、後ろで話を聞いていたアッシュがうずうずと何かを言いたそうにしはじめた、そしてそんなアッシュの様子に気が付いた神父さんは一計を案じたかのように手をたたき、提案してきた。
「ナギ殿いきなりではあるが、アッシュを奴隷にするのはどうだろうか?」
? いきなり奴隷を持てと? つい数分前まで俺が奴隷だったんだけど?
俺だけでなくアッシュやロベルトさん、その他の黒蠍の面々もハテ?っという顔をしている。
「ナギ殿一人で旅に出るのですか? 今まで虚の状態だったのです、自営や自衛、旅のノウハウも分からないですよね? そしてこのアッシュは奴隷ではありますが、自分自身が悪いことをしたわけでは無く、親の鉄加工工房の経営が傾いた時に、借金の肩に売られただけな者なのです……さらにアッシュはどうやらナギ殿と一緒に自由に、強制されることのない冒険をしたいようです――そうでしょう? あとは自分で言いなさい」
固まるアッシュ、だけど口を開こうとして噤む……それを数回繰り返した後に大きく口を開き、叫ぶように思いのたけをぶちまけた。
「ナギ様!! 私を連れて行ってください! 御者、鍛冶、旅の基本的な知識は持っています! いざとなれば盾として使ってもらっても構いません! おれ……わたし! いや……このままでいい――俺を連れて行ってください!」
そこまでか、で今までの事なんてわからない、しかもせっかく半額を返済さえすれば解放される準借金奴隷になったのに、元の金額を払わなくては解放されない通常の借金奴隷に戻りたいなんて言う人がいるなんで……しかもその主は数分前まで借金奴隷だった子供だぞ?
「ついてくるのはいいですが、準借金奴隷なのに借金奴隷にもどっていいんですか?」
そんな当たり前な質問をぶつける俺、神父さんとアッシュ以外はそれに同意してウンウンと頷いている。
「いえ! そんなことは関係ありません、この数か月ナギ君の修行の相手をしたり、魔法の修練の様子を見てきました、更に今朝のベインバンブーです、ナギ君は絶対にこの小さな村に収まる器ではない……いや、村どころかこの『ファウンダー半島』や『ニルヴァーナ』領土の中を見ても、成長のスピードや知識の吸収力で右に出る者はいないと思います。 そんな……今後何かを成し遂げそうな人の足跡を見届けたいのです!!」」
そこまで言われては、断りにくい……、アッシュの身元を買い受ける資金もベインバンブーが売れたおかげで余裕ではあるのだが……まぁ一人で旅に出るよりはいいのかな? そういうことにしよう。
見受けの金銭を支払い、今後の相談をアッシュと共に夜が更けるまで続けることとなった。
……
冬の終わり、パーシモン一家のいロベルトさん、マウラさん、ジェフは王都への旅支度を終えて出発前の挨拶を村の人たちと交わしていた、そして俺の前に来る。
「ナギ君、まさか君がこんなにも早く奴隷から解放されるとは思ってなかったよ、さらにベインバンブーまで仕入れることが出来たんだ、私たちは君を預かった以上に恩恵を受けることが出来た気がするよ……だが、私たちの後には君が旅立つんだろう? 準備は大丈夫なのかい? 今年のうちに会えるかは分からないが、これから数年ジェフは王都にいる、もし王都によることが有ったらよろしく頼むよ」
そう言い終わると、ほかの村人への挨拶も終わったのか馬に鞭を打ち東の方へと旅立っていった。
……
「アッシュ!」
馬車が見えなくなるかというところで俺は声を上げた。
「はい、なんでしょうか」
なぜ奴隷になっていたのか、なぜこの地にいたのか、俺はどこの生まれなのか、様々な疑問はあるがクエビコの言ったように旅を始めようと思う!
「行くぞアッシュ! 俺に付いてきてくれ!」
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