創造神、胎動す
やることが無くなった俺は教会に呼び出された。
そこには神父さんと先日の黒蠍の3人がいて、俺が教会に入って行くと4人の視線を浴びることになった。
そして説明されたこと、それはパーシモン一家は3月になると王都に向かうためこの村を出て行ってしまうそうだ、そうなると俺の管理をする人がいなくなるために、なるべく早く自立か返済かをするのが良いのだそうだ、そして自立と言ってもまだ体の出来上がっていない身の一人だ、最低限魔物や盗賊に襲われても対応できるようになっておくのが最善とのことだった。
ちなみに黒蠍(一人は脱退したが、めんどくさいのでひとくくりで)の3人は教会で雑用をさせられていたらしい、だがなにやら今日からはまた違ったことをするということのようだ。
「さて、ナギ殿、今日からは貴方を一人前にするために私とこの黒蠍の3人を相手にして修練をしていただきたいと思います、商売や算術に関わる知識を一度教わるだけで理解することのできるナギ殿であれば、おそらくは春までにはものにできるでしょう、この黒蠍ですが、私が相手では勝負にすらなりませんでしたが、なかなかどうして一般のレベルで言うと強い者達だったのです、たしか……C級のクランでしたか――、なのでナギ殿は彼らと同程度まで戦うことが出来るようになるのが目標です」
ぽかーん……、としていたのは俺ではない、黒蠍(一人は脱退済み)の3人だ。
まぁさすがに奴隷の子供が2~3か月で大人の中堅……いや、中堅よりも上位に当たるC級の冒険者に追いつこうというのはさすがに無茶なんじゃないかと俺でも思った。
……
修行開始、1日目。
メニューはこうだ、午前に魔法鍛錬、午後は日替わりで剣術、槍術、そしてさらに順番で斧術、短剣術。
そんなにいろんなのじゃなくて一点に絞った方がいいのではと思ったけど、神父さんはそれでいいのだと言っていた……否定する根拠もないので従っておこう。
そして夕方の前から日没まではまた魔法鍛錬となるらしい。
さて、……ということで鍛錬が開始された、まさか鍛錬をしに来たのに頭がパンクしそうになるとは……、予想だにしていなかった。
そして始まった魔法鍛錬、俺と共に適性のある元黒蠍の一人であるアッシュが参加した、魔法というものの理解からはじまる、魔法とは人の意志によって魔素に干渉して、魔素の力を借りて発動する現象だそうだ、それに代わり『魔導』『魔術』というものもあるそうだ、『魔導』は体を動かすことで魔素に干渉したり、詠唱……つまり『言霊』に魔素を乗せることで魔法と同じ効果を発動することのできる技術らしい、そして魔素に関わる最後の方法は『魔術』だそうだ、前の二つに比べると効果は小さいそうだが、永続的に効果を発揮したり知識がない人でも効果を発揮することが出来るのが『魔術』の強みなのだそうだ、魔術は一度魔力操作をしたら効果を発揮し続ける『魔法陣』や魔力を注ぐと特定の効果を一時的に発生させる『魔導回路』、通称『サーキット』と呼ばれる技術なのらしい、
まず学ぶのは『魔力感知』。
神父さんやアッシュと手をつないで魔力の流れを感じ取る……、これが出来なければ魔法使い系の職業には付くことはできないらしいのだが、神父さんから魔力を流してもらった段階で魔力というものの存在とその流れを理解することが出来た、出来てしまった。
なんせこの感知だけでも何週間か――あるいはその感知だけでも数年かかる人がいるようなのだが、なぜかたった一回で理解できた。
NEW!『魔力感知』NEW!『魔力視』NEW!『魔力操作』
神父さんも黒蠍のメンバーもなにやら驚いていたけどそんなことは知ったことではない、生きていくためにどんな能力でも身に付けていかなくてはいけないんだ。
そして昼間は剣術だ、なんでもとりあえず剣術をしておけばそのほかの武芸の基礎になるということなのでそれに従ってみることにした、これの講師は黒蠍のリーダーである……つまりは先日の夕飯の時に真っ先に絡んで来た、あの人だ。
だが意外にもかなり真面目に剣術を教えてくれた、時々神父さんの方をチラ見しては真顔になって俺の方に向き直ってくる――どうしたんだろう?
最初は木剣を当てられてばっかりだったのだが、見たことのある剣筋にはすぐに対応できるようになる、もちろん対応策があるわけではないのでその剣筋でも当てられてしまうのだけど、何合か打ち合ううちに同じ剣筋の時には完全に対応できるようになった、剣で受けるだけではなく半身をそらして避けるようにもなったのだ……だって受けると手は痺れてしまう、それはきっと戦いの場では悪手だとおもったからだ。
剣圧やら力比べでは全く敵わないのだが、剣捌きに関してだけで言えば今日だけで圧倒出来るようになってしまった。
NEW!『剣術』
…
そして夕方になって魔法鍛錬に戻る、魔力も回復したので午前中に発動できなかった魔力操作を試してみて……あれ?できちゃったよ。