初めてなので試しに・・・
私が後ろを振り向くと全身から青白い光を放つ大鹿が
私のほうをじっと見つめていた。
姿形は他の鹿と変わらないが巨体なうえにその光のせいで
鹿とはまったく違った生き物に見える。
私は短剣を固く握りしめ腰が引けながらも
仁王立ちで大鹿を威嚇した。
だが大鹿のほうはもしゃもしゃと口を動かしながら
じっとしているだけで私の威嚇には一切動じていない。
お互いがしばらくそのままの状態でいると
遠くから狼の群れの遠吠えが聞こえた。
大鹿であっても狼の群れは怖いのかパッと頭を上げて
勢いよく林の中に消えていった。
あの大鹿が話に聞いていたこの森の主だったのだろう
と思うと貴重な体験になったと思えた。