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第三十話 火竜王

昨日の飛竜(ワイバーン)成龍(エスタレイウス)との闘いを境に、僕らのパーティーに劇的な変化が起きていた。


それは、フィリーと三姉妹の間で、『協定』が結ばれたということだ。



簡単な夕食を食べ終え、交代で歩哨に立つ時間になって、四ヶ条からなるそれは唐突に発表された。

曰く、

・フィリー並びに三姉妹は協力してユーキを支えること。

・ユーキの右側半分はフィリーの領土とし、反対側は三姉妹の領土とすること。

・互いの領土は不可侵とすること。

・ユーキの歩哨は免除とすること。


だそうだ。どうやら、一緒に戦ったことで、お互いの実力を認め有ったということらしい。

もちろん、フィリーと三姉妹が協力関係を結べたことは僕としても心から喜ばしいことだと思っている。


ただひとつだけ不満なのは、『僕の身体は僕のものだ!』という僕の魂の叫びは、協定の効果だろう、彼女達の全員一致で黙殺されたことだ。


いや、もう良いです、好きにして下さい……。



ついでに言うと、僕とフィリーの仲は日本の高校生の清い男女交際の域に留まっている。

いわゆる、『A』(キス)は済ませたけど『B』(いちゃいちゃ)以降はまだ、というものだ。


三姉妹に至っては『A』さえもまだだ。


そっち方面では、既にヘタレ勇者であることが確定している。


しょうがないよね、前世で女性関係は全く無く、現世では8歳から魔族との戦争に明け暮れ、漸く今になって青春?的なものを迎えているんだから。


自分で言うのもなんだけど、そっち方面は精神年齢10代前半くらい、かな?


……でも童貞じゃないけどねっ!






さて、その晩の野営は恙無(つつがな)く終わり、皆で朝食を食べ終わった頃にエスタレイウスは四匹の飛竜(ワイバーン)と共に戻ってきた。


『ユーキ、火竜王陛下からの伝言を伝えるぞ』


エスタレイウスは口調をあらため、

『ユーキ=ローデンシウス、本来は侵略者たる汝らと語る言葉は持たないが、我が股肱(ここう)の臣たるエスタレイウスの命を救ったことに免じ、寛大なる我は一度だけ面談を許す。

もし汝らがそれを望むなら、我が遣わした者達と共に臥龍山に参るが良い。


以上だ』


自分のことを振り返っても、為政者による自称『寛大』なんて宛にならないが、既にお互いが矛を交えていながらも面談してくれる訳だから、確かに心が広いと言っても良いだろう。



僕ら一行は火の古代龍の申し出通り、龍達の背中に乗せてもらって、臥龍山を訪れることにした。








龍の背中に乗って空を飛ぶ……。


ある意味この世界で最も心踊るイベントの一つだと思っていたが、実際に乗った感想は、『痛いし、寒いし、怖い』だった。


まず、彼らの鱗は硬くて痛い。

そして、吹きっさらしで飛ぶので寒い。

最後に、結構上下に動いて怖い。



臥龍山へのさして長くもない飛行(フライト)だったが、今後も頻繁に乗りたいとはとても思えなかった。


次回乗る機会があれば、座布団と厚手のローブは必須だよね。








間もなく臥龍山に到着し、僕ら五人は龍達から降りて、素早く身仕度を整える。

そして、準備が整ったことをエスタレイウスに告げると、


『分かった』

成龍(かれ)は頷き、そして全身から淡い光を発したかと思うと、何の前触れもなくいきなり……、



━━━人の姿に『変身』したぁ!?



それはそれは、僕は咄嗟(とっさ)には口に出せないほど色々驚いた。

なぜって、

①龍が人族の姿に変身出来ることを全く予想していなかったから。

②変身後の姿は当然のように全裸だったから(なお、股の間には文字通り何も無かった)。

人形(ひとがた)になったエスタレイウスは、長身で筋肉の鎧を纏い、そして超絶美形のイケメンであったから。

etc....。




フィリーやソフィアは「きゃっ!」と可愛い声を上げて赤面していたが、ラミィとシオンは特に反応はなかった。

いや、正確に言えば、ラミィは例の聖女の微笑みを浮かべながら、エスタレイウスの身体をガン見していた。


彼は壁に近付き、何処からかシャツとズボンを取り出してきて身に付ると、


「この姿になることは滅多に無いが、『人族達と会話するにはこの姿が良い』との火竜王陛下の思し召しだ」

と、ことも無げに言う。


「あ、あの、聞きたいことが色々有るんだけど、ちょっと聞いても良いかな?」

僕が口を開くと、


「奥で火竜王陛下がお待ちだ。出来れば質問は後で良いか?」

そう言われてしまうと、ハイ、と答えざるを得ない。


では、こちらだ。と、彼の案内に従い、正面に開いている途方もない大きさの洞窟入り口ではなく、その脇の『人間サイズ』の入り口から奥へ向かう。


と、いうことは、この奥には人間サイズの火の古代龍が居るのだろうか?


多分そうなんだろうな。



洞窟の天井は、人の背丈二つ分は有るだろうか?結構高い。

そしてその天井からは、日本で言うところの埋め込み式ライトとしか言いようもないものが設置され、それなりの光量を放っていた。


龍達にはいちいち驚かされる事が多い。


そして、その洞窟を抜けて謁見の間であろう所に通され、初めて人形(ひとがた)の火の古代龍を見たとき、やはりその姿に驚かされた。


何故って、



その姿は、見たことの無いほどの、真っ赤な髪を持った絶世の美少女だったからだ……。

次回掲載は、3/3 0時を予定しております。


宜しくお願い致します。




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