第89話「そのころ運営は」
豪華客船ミルヴォワール防衛戦、クエストクリア後の運営陣の様子。
何故か部屋は真っ暗で誰が誰だか解らない、黒幕の会議室みたいな感じになっていた。
「初の初陣どうでしたか? 社長」
「ん~まぁノリと勢いならこんなもんじゃろう」
「ではバージョン1.4.0に正式にサービス移行ということでよろしいですね」
「うぬ、今回はシステムが綺麗に動くかのテストだったから。その方向で決定だ」
「プレイヤー達のレベルの上限は上げますか?」
「あんま気にしてなかったからな~……そこは今回は保留でよろしく」
「確認しますが。現在レベルマックスなのは最果ての5帝と……天災ゴッド・ジーラのみですね」
「うん、それで動いてくれ。それ以上の限界突破は認められない、超能力ものならともかく。これは皆が遊ぶゲームだからな~」
「やっぱ合間合間に他のゲームやってたのがデカかったな~、プログラムとか文字の流れがスムーズだった」
「乱雑だったプログラムの整理整頓は上手くいったな、プレイヤーにとっては微々たるものだが。上位プレイヤーには0.1秒単位のラグは伝わってしまうだろう」
「それは仕方ないさ。そっちより初心者プレイヤーにも参入しやすいように、もっと優しくしないと……あ、各街に転移門の件は今回で導入してくれ」
「どこかの会社みたいに、デスゲーム事件にならなくてよかった……」
「それは社内でも厳重注意ですよ、解ってますか?」
「あぁ……わかってる」
「それにしても、テストプレイと本プレイでは随分とまぁ。内容が変わったなあ~……」
「プレイヤーも人間、我々運営も人間です。どちらも進化しているのですよ、日々ね」
「そのためのバージョンアップじゃないか、この世界は拡張し続ける」
「他に気づいた点は? 社長の意見などもぜひお聞きしたいです」
「ん~? まぁ普通に参加してた分にはこれぐらいの驚きはよくあったし、当たり前か~とは思ったが。今回はNPCモンスターには殺意しか無かった、これが心あるNPCだったら……問題はそこだろう」
「あなたの妹様の件もありますしね、AIに心を入れ過ぎるのも。それはそれで問題か……」
「折角進化したのに退化させねばならぬとは、何とも口惜しい」
「おい、悪だくみするなよ? しても良いが私は関与しないからな?」
「ふふふ、流石社長。話がお速い……」
「とにかく、問題はあってなんぼのもんだから良いとして。リアルとゲームの区切りはちゃんとつけてくれよな? ARゲームの案はあれはあれで良かったが。……なんつーの? これ以上の混乱は避けたい」
「はは、かしこまりました。最後に神のお告げなどをお聞きしたいのですがいかがでしょうか?」
「お前ら宗教家かなんかかよ!? ん~ん~。だめだ、出てこない。今度にしてくれ」
「そうですか、残念です」
「うるさいのじゃ!」
「では、本日の会議はこれにて解散です」
「全員散開なのじゃ!」
『ハッ!』
「…………」
第3章 豪華客船ミルヴォワール編 完結