第88話「防衛戦~天災~」
上空では激しい戦闘が繰り広げられていた。足止めは成功し、時間稼ぎも済んだ。敵兵ゾンビは倒れ、もはや丸裸の大将だけが残ったという形になる。でもサキ一人じゃ勝てない。
「さぁ、残りのドラゴン達は全員お亡くなりになったわよ」
「あとはキミだけだけだねぇ、降参するなら今のうちだよ?」
「油断はするなよマッスル」
「あと少しなのに倒し切れない……!」
相手がとても強いバフデバフ要因だったとしても、対象となる兵隊が居なければほぼ無力に等しい。やはり最果ての軍勢が参入しただけで全てが順調に終わってしまった。
第3階層にはサキ、バイタル、オーバーリミッツ、蒼葉が居る。そしてラスボスのキングデブリポイズン・ギドラドラゴンだけとなった。
「はぁ……! あとは根気の勝負……もう降参したらどうなの? 怪獣さん」
「グオギジャアアアア!」
その時だった。水平線の彼方から、これまでになかったほど巨大な蒼白い咆哮が轟き、原初の炎がそれら全てを焼き尽くす。
ジュゥ!
もうお前じゃ役不足だよ、と言わんばかりに。神の咆哮が唸りをあげた。30層の魔法障壁も粉々に砕け、ドラゴン本体もその破壊力から見る見るうちに焼け焦げてゆく。
「な……なに!?」
キング〇ドラっぽいモンスターの親玉は絶望感を与えるだけ与えて、最後には威嚇をするだけして終わってしまった。
それは、第1階層から第3階層までを独り占めするような巨大な巨体。荒ぶる神、呉爾羅(ゴ〇ラ)だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
強化系リーダーバイタルが皆に静止するよう求める。
『まて、攻撃はするな。アレは私と同じ戦闘力を持つ、下手に刺激するな』
【天災ゴッド・ジーラ】
属性:炎・ドラゴン
サキとゴッド・ジーラは目と目が合う。
「ギシャアアアアアアゴオオウウンン!」
なんの破壊効果もないただの威嚇だった、だが。キングデブリポイズン・ギドラドラゴンのような虚勢のような咆哮ではなく。本物の覇者のような咆哮だった。その場に居る誰もが息を飲んだ。
「天災……ゴッド・ジーラ」
サキはそれをみやる。静寂の間がそこには生じた。そして、天災ゴッド・ジーラは何をするでもなく。霧の中へと消えて行くのだった。無限に沸いていたゾンビ達は恐れ戦き逃げて行った。
バイタル、オーバーリミッツ、蒼葉がほっと一息ついている間に。天上院咲はいまだ立ち尽くしていた。
「私、彼が何て言ったのか解る」
「え?」
オーバーリミッツが問いかける。
「『またな』……だって」
こうして、全てを飲み込む天災を。人間はただ静寂を持って見送るしか出来なかった。
▼クエストクリア! ミッションコンプリート!
豪華客船ミルヴォワールは、こうして休憩地点へと陸に歩を進めるのだった。