第732話「転・暇を持て余した神々の経営学」
暇を持て余した、家族の善神と自由の悪神は、今後のお金のやりくりを考えるために経済学ではなく経営学に手を出し始めて、思考した。
天上院咲は単純に疑問を姫に投げかける。
「ネットでお金って稼げないのかな?」
「……、0円なのを有料にしたいといという話何だろうが。【電話でお金の話は詐欺です】警察による、その基本原則ルールが変わらない以上、本当にお金を稼げるかというと、基本ノーである。としか言えないな」
最速、開幕一番に全否定論破された。
「でも、他の人は出来てる人も居るよ? サイバー空間で」
「ん~……まあ出来る人も居るのは事実だが……。そもそも、主人公である咲が紙が介在しない商売でネットの中でお金を儲けようとするのは、根本から間違っている」
その理由を淡々と天上院姫は長々と口にする。
「ネット空間では主に広告収入が主な収入源な訳だが、そもそも〈広告師〉という専門学校時代の体験授業で作ったアイディアがサイバー空間で使われていて、ソレしか無いって事は。それしか私達が描いてないって事にも当てはまる。ギフト券の発展はそもそもプレゼント形式の発展なんだろうが……。サブスクの発展だって、定期的に安定して収入を得たいな、っていう思考や理想が体系化されただけだろ? 描いてないけど……。つまり、私達がちゃんと経営学を学ばない限りずっとこの形態は続くし。電話でお金の話は詐欺です。って言う基本ルールは変わらないはずだ」
何か長々と説教をされた気分にもなるが、確かに元ネタが自分達であるのならば、他人事ではないし、作品は関係ないが、言いたいことは今の咲なら解る。
その上で姫は言う。
「てことは、真面目にお金を稼ごうと思うのなら、紙で契約したお仕事とか、駅ビル全般の経営の仕方をどうしようか、とかの方に頭を回さないと、おかしな方向性になる」
姫が言いたいのは、ネットでお金は稼げるが、それはグレーゾーンに片足突っ込むのと同じ意味だと言いたいのだろう。咲はそれらを熟知した上で次の言葉を紡ぐ。
「つまり、私のリアルはリアルじゃなかった?」
半ば話の内容が飲み込めないような言い方だが。合っているには合っている。
「そゆこと。まあ本当にネットでお金を稼ぎたいなら、社会構造全体を書き換えないと稼げる体型にはならないって事だな」
本当にネットでご飯を食べれるようにするには、地道に進むしか無い。
「あー、電話、ネット、サイバー空間でお金を稼げる法整備がまだ出来てない訳か。もしくは問題がありすぎて守られているのかどっちか」
咲は眼の前のPCでお金を稼ぐのではなく、印刷した紙に残した内容にこそ価値がある事を再確認した。
「そゆこと。咲はネットの観過ぎだなって話になる」
ここまでは、今までやってきた事のまとめになるが、ではこの先どうするのか? という内容に入ってくる。
もしかしたら、頭の硬い政治家は。PCやテレビの電気関係のお金の話は、全部防御すればいいや、程度にしか考えていないかもしれない。
咲は全体像を把握してから、次に自分が何が出来て、どう行動するべきか考える。
「てことは、紙でお金を稼がないといけない。てのが大前提として有るわけだ」
姫がさっき言った〈紙が介在しないお金儲け〉の件はここにある。
「少なくとも、お仕事の契約書は紙じゃないと改変出来ちゃって安全性はやっぱり保証出来ない訳だからな」
もしかしたら、物理的には紙じゃないといけないが。人の目がある場合、漫画じゃないといけない、という法則も有るかもしれない……とふと頭を過ぎった咲。
だがそれはハードルが高い。
とりあえず、今後もマジなお仕事の履歴書とか契約書は電子媒体では無いだろうな、というのは容易に想像がついた。
データが〈消える、戻れる、改変できる〉の時点では詐欺行為に分類される可能性がある。
少なくとも今現在は……。
「てことは、私は真面目にお金を稼ぎたいんです。ていう行動を取るためには、内容はどうあれ〈紙で印刷して稼ぐ〉って行為は避けられない訳だ。〈漫画を印刷して稼ぐ〉〈イラストを印刷して稼ぐ〉〈小説を印刷して稼ぐ〉とか。正攻法だとそういう話になるよね?」
咲は経営学の根本的姿勢を見直して正す。
「まあ【残った物が正義】だという定義が変わらない以上そうだろうな」
残った物が正義とは限らない、ならその前提は変わって来るのだが。
少なくとも今はそうだ。
元々の原因は、サッカーのリクティングとか試合の結果以外で成果が目に見えない努力よりも。絵は紙に努力した跡が残るから〈良いな〉……という動機が根源に有るわけだ。
咲も姫も、それを察する事が出来るし、理解できる人種である。
故に【残った物が正義】という根源的法則は、余程のことが無い限り変わらない事がわかる。
姫はその上でネットで稼ぐ方法を咲に指し示す。
「故に、もしそれが解った上でもネットで稼ぎたいとなれば。まずはお金の経営方法を考えて、その上で紙に印刷して残さなければ効果や効力は無いはずだ。サブスクの件は知らないが……」
サブスクの件は、よほど当時の経営者がお金の件で困って広まった、苦肉の策かもしれない。
咲は今までの空回りの原因が解ったような気がして、頭や心の中のモヤモヤが晴れていく実感が湧く。
「それがPC内のサイバー空間や、電子情報のままで完結しているのならば。それは詐欺に近い分類に入る……てこと?」
「社会構造の現状がそのままなら、その分類に入るはずだ。経営学から見ればな、まあ作品の品質には関係の無い話じゃが……」
お金が介在するとそういう話になるという話だ。
「そっかー、じゃあ印刷しなかったのが空回りしていた原因だったのかー、何だかな~~~~」
咲は今までの努力の時間は何だったのかと落胆する。簡単に言うと、ネット世界にダイブし過ぎた訳だ。そんな簡単な話じゃないが……。
えんぴつとタブレットの是非は判らないが、少なくとも紙が重要なのは解った2人。
センスの件は美術センスの件だから、お金とどう繋がるのかは現状わからない。
「あれ? じゃあメモリデバイスでの保存・バックアップは?」
「お金の是非って観点じゃ、やっぱりサイバー空間だから改変できるし消えるのは逃れられない。……詐欺の分類だな、経営学だと」
何かそこだけ聞かされると世知辛い……。
何にしても、今回の経済学で紙に印刷をしなければ何もいい方向へ転ばないことが解った。




