第729話「結・雲の王国ピュリアの性質」
「では、主に吸血鬼大戦やデート戦争の頃にも居なかった私に対して説明してくれないかな? 桃花先生」
またか、と思いながら桃花先生は自分自身の記憶を深堀りしながら思考を咲とブロードに説明する。
「えーっとじゃあ時系列順に説明するぞ? 第2の街雲の王国ピュリアの性質は。元ネタは天空の城ラピ○タ。そこから発想を得て生まれたのがまず最初に〈浮遊した宮殿〉まともな〈名前は無かった〉はずだ。それが外界からの変換により〈天道宮〉と呼ばれ、次に出来たのも同じく〈浮遊した都〉この時には街として形成されている。簡単に言うと描写力、画力が上がったんだ。それが外界からの変換により〈星黎殿〉と呼ばれる。その後、3番目に出来た都で3D景色で作られた街に天上院咲が、始めて足を踏み入れたのが〈雲の王国ピュリア〉だ……天上院姫ちゃんなら解るよね?」
姫は混乱した頭を先生によって整理されたので話がストンと頭に入る。
「うん、合ってる、正しい」
桃花先生が話を続ける。
「関係あるか判らないけど、より正確な情報を教えるなら。1回目の浮遊城の完成原稿はジャンプに郵便で公募したので焼却処分されたはずだ。よって〈元の原稿は存在せず〉、現存するのは〈コピー用紙の浮遊城〉となっている。一方2回目の浮遊城は編集者に持ち込みに行ったので、生原稿としても、データとしても存在する。で、三回目は咲ちゃんが知らずに冒険した浮遊城がメインで〈最近まで〉ネット内のデータとしてしか存在しなかったはずだ。紙として印刷したのがごく最近」
咲は自分の歩んできた道のりを確認する。
「なるほど、私が歩んできた天空都市は〈最初から3番目だった〉って事ね」
時系列順に並べるとそうなる。
桃花先生は説明を続ける。
「で、吸血鬼大戦の時にこの2つの浮遊城が存在し、利用出来たということは。他の並行世界や別世界線でも吸血鬼大戦中は〈2個存在した〉ことになる。咲ちゃんが冒険を始めてからは3個目、よって今後も〈時間の経過とともに増える〉可能性がある」
ブロードはようやっと話を飲み込めた。
「なるほど、2つ有ったのはそのせいか。てことは今後は〈3つ以上〉になる事を想定しないといけないんだな」
桃花先生は「だがしかし」と付け足す。
「これらの宮殿や浮遊城は走り書きでノートに書いただけで、公式原稿には書いてなかったはずだ……故に、発見や理解が遅れたり困難になったと。故に、少なくともこの、第1、第2、第3の浮遊城の公式名称を作っとかないとまた後で解んなくなる可能性が有るのが。この雲の王国ピュリアの性質かな……」
国の名前は決めたがその中の細部。1個1個の浮遊している土地名は書いて無いし決まっていなかったはずだ。
天上院姫が、桃花先生の内容をまとめる。
「それをこれから決めるんだな」
「そゆこと。表明思想と一部バラしてもいいのならそうなる」
その一部バラす、という桃花先生の表現に、咲は敏感に反応する。
「一部? 全部じゃないんですか?」
「全部バラしたら〈サプライズなハッピーセットにならない〉じゃない。何事も目分量で程々が大事よ。特に私の体質というか本質は〈テキトウ〉だからね、全部数学化や理論化はしない。その場のノリや感情や自分自身の〈心〉を優先する。〈仕方なくかいたモノ〉に意義はない」
疑念の目で桃花を見つめる咲に対して、姫が桃花をフォローする。
「咲、ここはな。プレゼントボックスを桃花先生は咲に対して作りたくて隠してる訳よ。しかも無料でくれるし、あげるんだ。読者に対してな。それが社会の歪みでお金が介在しないから生きられないっていう邪な理由で。無償の善意が詐欺師呼ばわりされて世に広まっただけだ。桃花先生は本当に悪くない」
どっかのお金の授業でも言っていたが、桃花先生は本当にただの〈良い人〉なのだ。
1万円で作った1万円を咲ちゃんに無償であげている。本人は損しかしていない。
それを世の中の人が同じように真似したら商売をしたくなる。お金を稼ぎたくなる。生きられなくなる、食べられなくなる。
だから〈ソレ〉をそのまま真似すると詐欺師呼ばわりされる。
魔法の件は度外視して。普通に同じ考えと同じ行動をしたら損をするのは〈当たり前〉なのだ。……奇跡でも起こらない限り、とフォローをしておく。
桃花は姫のフォローを真に受ける。
「何か姫ちゃんにフォローされたけど逆に傷ついたわ……」
「まあ良かれと思ってやってるけど、それが空回りしてるのは否めないな……」




