番外編3「神の帰還」
【ゲームはクリアされました――。】
その朗報は世界中を駆け巡った。VRMMOのゲーム業界では大事件と発展していた。
もっともエレメンタルマスターオンライン≪略称EMO≫のことではなく。別社の第2回クリスタルウォーズのEXステージのラスボスが倒されたという朗報だった。
クリスタルウォーズのメインシナリオは、EMOの比ではないほど難しく設定されており。ほぼ全ての情報が非公開で、ウイキペディアにも載ってないという悲惨な内容だった。全部が全部プレイヤーの手探りだった。
クリスタルウォ―ズのほうが歴史が長く、その実なんと9年間オンラインで稼働している。もちろん突貫工事であちこち設定をバージョンアップしており、ゲームウ〇ッチが大乱闘スマッシュ〇ラザーズに参戦しているぐらいには。ちょっと不自然さをぬぐえなかった。
クリスタルウォ―ズにはコアなファンが多く、「このゲーム、この世界には負けたくない」という人も居たため。よく長く持っているなという印象ではある。
VRMMO『クリスタルウォーズ』でプレイヤーランキング1位を取って栄養失調で5回病院に行った、近衛遊歩ことエンペラーだが。メインシナリオは未実装状態で進んでおらず、代わりにPVP戦。プレイヤー同士の対戦ランキングが1位という事であって。クリスタルウォーズの攻略組ではなかった。
天上院咲のほうはというと、クリスタルウォーズでは1ヵ月【念波】というシステム外スキルを特訓していただけであって。メインシナリオも対人戦もやっていない、どころかその存在すら知らなかったというかなりまれなケースであった。
天上院姫のほうも、ただのどこかの誰かが作ったゲームとしか思ってはいなく。その昔、自身が5歳の時。遊びで作ったゲームシステム、別名【世界樹の種】が。まさかクリスタルウォ―ズでもエレメンタルマスターオンラインの方でも、本来の根幹をなすゲームのコアとなっていることは知らなかった。
その事を知ったのは2034年6月21日よりあとだという事ははっきり明言できる。EMO運営陣の中でもその事を知っていた人物は一握りに限られ。天上院姫の上司である紅現夢と。神道社の社長、上田三四郎のみであった。
「どうして教えてくれなかったのじゃ! 確かにあれはフリーソフトだったが……!」と姫は攻めよったが、「まだその時ではない」と判断されていた。つまり、クリスタルウォ―ズもエレメンタルマスターオンラインも。元々をたどれば姫が0から1を作ったことになり。生みの親だったのだ。
「だからこの神道社の社長、本来の正統後継者は。天上院姫、キミなんだ」全ての運命に偶然は無く、必然によって決まっていた。
「私が……本来の……社長……?」
上田三四郎は根本だけっを告げる。
「あえて呼ばせてもらおう、王よ。いや、この世界の神よ。よくぞご帰還してくださった」
見るとそこには椅子がある、社長室の椅子だ。
「でも……」
「大丈夫です、今の君になら出来る。さあ座って。あとは我々が全力でバックアップする」
14歳の少女には荷が重すぎると感じた、だが何故だろう。そこには【できる】という確信だけがあった。まるで違う人物に憑依されてるのではないかと思うぐらいだった。
夢と夢は繋がっている。彼女はゲームの社長を夢見ていた。それが実現される。そして、彼女は社長の椅子に座る。そして腹を決めたかのように。心の底から神を呼ぶ。
「うぬ、三四郎。よくぞ持ちこたえた、ここから先は。私が指揮をとる」
「はは、して神よ。進路の方はいかほどに……」
姫は手をかざす。まるでそれが当然であるかのように
「……、決まっている。北だ!」
神が帰還した。運命の歯車が回り始める音がした。