第726話「起・ソラは知っている」★※ターニングポイント
現実世界、西暦2037年11月16日〈月〉15時00分。
日本国、渋谷駅前の交差点。
天上院咲と天上院姫はゲームのためのロケハン、つまりロケーション・ハンティング。取材に来ていた。高層ビル立て並ぶこの駅前の交差点に用事があるらしい。
ここに来た理由を姫は咲に説明する。
「西暦2034年6月21日前後、豪華客船ミルヴォワール編あたりで〈神様になった日〉ってエピソードあったじゃん?」
「あーあったねー、もう3年前じゃん。お姉ちゃんに神様がくっ憑いて右往左往してた時期……あれから、結局私も同じ土俵に上がるために神様の力貰ったけど……」
「んで、どうやらあの日が何やら他の人から見たら重要な日だったらしくって。2012年ぐらいに、コレ持ってないとタイムトラベル出来なくなるとか訳解んないことをドラえもん? に言われて。2025年5月の別の私がその事に気がついて、情報統合思念体みたいな感じで2037年の私がロケハンに来たと……」
ややこしい上に時差ボケどころか年差ボケがある。
「まあ私達は2037年の人間だしね、今できることをやるしか無いか……」
と、咲は開き直って諦めた。
「んで、この高層ビルの場所に来たと……」
「まあ何でこのシーン? タイミングが重要なのかは判らないけど、せめてこのビル群の描写ぐらいは出来るかな? て事で、第7の街、破局した街ノットのベース資料にしよう、みたいな感じのロケハンですね」
つまり今日の姉妹の目的は、この街の情報収集である。
「手がかりはこの画像写真しかない」
と言って咲という名の主人公に見せたのは、ゲーム機3DSから撮られた交差点で跳ねているドリームイーターの王様だ。
「コレを撮ったのは誰?」
「2012年前後のわしって事にしておいてくれ、忘れた」
咲は首を傾げ、頭と記憶を回転させる。
「これを撮った動機って何なの?」
「確かバクマン。でヴァイスとシュバルツが倒れて終わった場所が交差点だったからじゃなかったかな? ……何で3DSを持ってたんだ? ……あーすれ違い通信で遊ぶためだ、で、ついでに写真を撮ったと……」
「ヴァイスとシュバルツって確か白と黒って意味だよね? で両方、悪魔だったはず。あとはそう、姿を奪われた人が居るって事はたぶん色盗人によって色を盗まれた人の逃げた場所がスターダストスペースゼロ、て所かな……光が死んだ後に行きつく、星の墓場」
で、一瞬間を姫は空けて……。
「下はな。でもリスクとブロードは何故か上に出現した、出来ない場所に居た。ま、ここまでかな前情報は、あとは自分たちで新しい情報を発見するしか無いかな」
「なるほど了解」
というわけで、交差点を適当に歩き始めた。
姉妹2人は歩き始めたが目ぼしい手がかりは見つからなかった。
「せっかくGPS星詠みがあるんだからさ、何とか使えないの? ほらARデバイスと接続してさ〈オーグマさん〉とか」
「あーその手があったか、確かにフルダイブじゃなくても拡張現実でも星詠みは有効か……」
というわけで拡張現実デバイスを装着、西暦2037年11月16日の渋谷駅前の交差点から位置情報を9つの天体から情報を得ようとする2人。
AR機〈オーグマさん〉を使った、時空航行術用GPS〈星詠み〉の情報。
太陽、だいたい15時00分を指し示す。
月、夕方だがまだ見えていない、機能するにはもう少し時間がかかりそうだ。
風星、方位北、星の星質温度が低温になったり高温になったりした後に、平常温度になったようだ。そして送られて来た信号は「昭和・平成・令和で何かあったっぽい」だそうな。
花星、方位南、星の自転が通常の自転から逆走していたようで、その兆候は収まりつつある。
駒星、方位西、GPSによる電波の情報によると「今回は、遊びじゃない。負けたら消えてくれ、つまり勝つためには残してくれ」とスマホデバイスに情報と画像が受信されている。
紅星、方位東、自転は通常通りだが「全部まとめてきっちり決着をつけよう」と、何か〈今後の企み〉があるような情報が記載されていた。
数星、位置中央、現代知識チートとして方位最北に〈10分の1スケールの太陽系〉を作ることを最果ての軍勢に提案&申請。
夢星、桃花と同機、3つの黒光りから3つの白光りに姿を変えた。悪質な体質は光と波動を放っていたが、正常な星質に戻って来たようだった。戻ったというより理想に近づいた感じだ。そもそも「良いものは良い絵だ」と思っていたら、そのキャラの体質が悪だったので吸収したら悪タイプになる、は聞いていないので誤解である。
心星、咲と同機、現在位置は渋谷駅に〈有り続ける星〉として存在し、情報はリアルタイム更新だが、特に異常はなし。
星からの情報はありがたかったが、咲は姫にこちら側の世界観のギャップを指摘する。
「多想世界は天動説だけど、現実世界は地動説だよ? 東西南北の公転はどうなるの?」
「そこまでは考えて無かったな、そんな事より。過去の歴史を消しゴムとかシュレッダーにかけたくなるな、悪い物だって解っちゃったら……」
まあ言いたいことは解るのだが……と咲はその先を制する。
「それやっちゃうと良い歴史も悪い歴史も積まれ無くなっちゃうから、後世にとっては大打撃だよお姉ちゃん」
「……、だよなぁ~、じゃあこれから先、良い歴史を作って道徳を積むしかないか」
というわけで、駒星が今回は特に光輝いていた。




