番外編62「アプデ体質練習・咲VS姫①」
《アップデートが入りました、新たに体質が追加されました。詳細は概要欄を見て下さい》
ある日の放課後、運営からのアプデ告知を受けて咲と姫は久しぶりに調整と言う名のPVPをすることになった。シュミレーションは何度もやったので、あとは実戦で使い勝手を確認するのみである。
改めて言うが、体質の属性は全部で現在16種類。
普通、心氣、自然、文法、環境、色彩、強化、賢術、光闇、精神、未覚、政治、元滅、AI、時空、全王。
コンセプトとしては、無敵を作らないようにバランスよく倒せるようにした。ということらしい、なので各タイプに得意不得意がある。
「へー火・水・草とかのタイプじゃないのか、これは単純に覚えるの大変だね、でも既存のタイプには飽きて来てたからちょっとワクワクするよ。新しいタイプってさ!」
咲はウキウキしながら言う。姫は色々な都合でこうなったと言う。
「まあ取っつきにくいのは否めないが色々な理由でこうなった。ざっくり説明するぞ? まず今まで出てきた最果ての軍勢が最強格だったが、それがタイプ別で使えるようになった。それが強化・賢術・光闇・精神・未覚だな。アプデで陰陽が光闇に変更、内容は変わってないが陰陽という漢字が使いにくくて死に設定化してたので、今後よく使う光闇に変更」
「最果ての軍勢強いもんね~、能力は。あれも体質にまとめられたのか」
「で、その軍勢の陰陽五行論と心氣の上下関係があやふやだったので心氣も体質にまとめた。心氣・自然・文法・環境・色彩・全王がこれに当たる」
ここまでは今までのゲームを進めてきたら何となくその特徴は解る、だが他の5種類には説明が欲しかったのでGM姫が説明する。
「まず、普通は基準点とか、一般のモブNPCとか基盤となる体質が欲しかったから、自然と必要になった、弱い代わりに、基本数が多い、集団戦闘用のタイプだと思えば良い」
「まあ普通は普通だけど、他は予告なしに出てきたよね。元滅は元滅種と今戦ってるから、相性表が出来上がって解りやすくなったけど。プレイヤー全員に対して無敵、じゃ無くなったんだね」
「まあそこは調整だな。存在優先度は相変わらず有るぞ。1がNPC、2がプレイヤーな。で、咲が聞きたいのはそれ以外。政治・AI・時空だろ?」
「そうだね、AIは普段から私達が接してるから体質としてはアリだし解るけど、政治と時空は基本接点無いもんね。場外乱闘や、別件でやられてる感じがする」
政治はそのまま〈社会の歯車〉という意味で、時空は〈桃花先生達が作った動画の時空間〉が主な体質として出来上がっている。
今まで明確にお邪魔キャラとして権力をリアルタイムで執行してきた政治と、止まらない体の異変や厄災に対しての時空に対して、明確な弱点と得意な体質相手が明記されたのが大きいだろう。
政治と時空が特殊過ぎるので改めて説明すると。
細かいことは省略するが、政治の得意と苦手なタイプは。
得意◇普通、自然、文法、環境、政治、元滅、AI。
苦手◇心氣、強化、賢術、光闇、精神、未覚、政治、全王。
政治の攻撃が全く効かないのが未覚となっている。
かなり広範囲で抜群をつけるが、かなり広範囲で弱点もつかれる、という構成になっていた。
メモとバランス調整の欄には。
メモ◇ルールは守るが仁義を優先する、権力が高すぎて厄介。
バランス調整◇沢山の攻撃・防御面で抜群を取る政治は、大統領令を始め、多くの権力・権限・権能を持っていることが多く。最初から優位に立ち回れる、また法務・財務・科学防衛・農務・環境など、幅広い権力を持ち優位に立てる場合が多い。他のタイプよりも強力な技や能力を重大な範囲で執行出来る代わりに、そのコストやクールタイムが重い。
と、書かれていた……要するにリスクも大きいがリターンも大きい体質ということだろう。
続いて時空も対象範囲が広すぎて改めて説明する。まず得意と苦手な範囲。
得意◇色彩、強化、精神、時空。
苦手◇心氣、環境、色彩、未覚、時空、全王。
時空対時空タイプの時、双方が効果抜群の速攻体力削り勝負になりそうな面白い構成になっている。特質すべき所は、自然や政治やAIは等倍と言った所だろうか。
攻撃面では心氣が無効、防御面では文法が無効となっている。つまり何やっても効かない。
メモとバランス調整にはこう書かれている。
メモ◇時空と時空が衝突したらインカージョンが起きる。
バランス調整◇時間経過というワンアクションと共に、徐々にパワーアップ・速度の加減速・自然回復能力が向上してゆく。
つまり、リアルタイム制バトルだと時間経過が長くなるほど有利に。
ターン制バトルだとターンが経過する事に徐々に、または段々と有利になってゆく体質らしい。
これが、政治と時空をゲーム内に落とし込んだ場合の〈体質〉だ。
当然、ゲームである以上プレイヤーがクリア出来なければ面白くないので、無敵なストーリープレイヤーは望ましくなく。また望んでいない。
適度に勝てて、適度に負ける。弱点がちゃんとあるサイクルを体質として取り組み、取り込んでいる。それが今回のアプデで、超能力と言う名の特性やスキルは別と考えればいい。
要するに、攻撃面のスキルを受けた防御側の得意・不得意の体質が明確に言語化されたわけだ。
GM姫いわく、運営陣とも協議して、かなり念入りに仕上げたとのこと。
一度決めたらほぼ変えられない代物らしく、ここで悩まないと後でほぼ修正や調整が難しいらしかった。
「で、色々話し合った結果。プレイヤーやNPCとかが付けられる体質は1つまで、となった。本当は2タイプ、複合タイプで遊びたかったが、計算や分かりづらさが目立って、その他の設定やゲーム進行に大きな障害になりそうだったので。ここはシンプルにゲーム進行を優先した」
「なるほどねー、で、説明が終わったからあとは実戦あるのみで、それで調整になるわけね」
「まあ体質相性表は、ほぼ余程のことがない限り変えられない、本当に重大な欠点が見つからない限り変えないと思う。さっき言った、時空と時空がぶつかるとインカージョンが起こる、とか明確な理由がない限り。等倍設定が良い所だろう」
「で、説明が終わったから一回PVP戦しようぜって流れね?」
「本当はもっと説明したいんだがな、やってみないと解らないことは本当にあるし、あとは戦うしか無いだろう」
というわけで第1の街ライデン、闘技場で、体質を重視した練習PVP戦が始まるのだった。




