第717話「結・拠点と自己紹介」
「ふう、じゃあ決戦前に一回私達の〈元の時間軸〉で休みますか」
「それもそうじゃな、ジゲンドン戦になってからいきなり時間軸が前後に動き出したから他のプレイヤーがパニックになってないかちょっと心配になってきた」
というか、この難易度で絶対置いていかれている人いるな……というのが率直な肌感覚の感想だった。
それもそのはず、今まで2000年代で冒険してたはずなのに、急に最古来歴とか最未来歴とか出てきて、座標的には同じ立ち位置なのに言語も違うとか言われたら、そりゃ混乱するだろう。
現実世界、西暦2037年
多想世界、今現在歴2037年、放課後クラブギルド本部。
「で、今まで冒険してきた2037年代に戻ってきたと……」
「そうなるね、うわー変わってないやー」
簡単に言うと、一時的だが、歪んだ時空が元に戻った。天上院姉妹のホームと言ったらこの時代である。
内田金蔵さんの件もあるし、今日は放課後クラブのメンバー紹介の時間となった。
内田金蔵も、一回自宅に帰ってもらって、VR機テンジョウ2でログインしてもらう事になった。
今、ここには17名全員が居る。
「はーい! では全員の自己紹介を始めまーす!」
まず始めに新メンバー内田金蔵からの自己紹介。
「始めまして、日本銀行副総裁の内田金蔵です、話を聞く限り、皆様プレイヤーやAIさんとは違って運営側の人間で75歳です、以後お見知りおきを……!」
というわけで、咲は自己紹介を始める。
「まずは1番目、ゲームについてはエンジョイ勢! 天上院咲です! 一応このギルドのリーダーをやってます! この左腰にかけてる2本の剣が真昼ノ剣と真夜ノ剣と言って愛剣であり、放課後クラブ10番目と11番目の人格、マゼンタさんとシアンさんです。マゼンタさんが日曜双矢さんのコピー人格、シアンさんが天上院姫お姉ちゃんのコピー人格、どっちも男性です」
『始めまして、あんまり喋らないことで有名なシアンです、よろしく内田金蔵』
『同じくマゼンタだ、咲の冒険をあまり邪魔しないように努めている』
剣が喋りだしたので、普通の感覚とはかけ離れた存在に、思わず驚く内田。
「始めまして、君たち2人は魂だけの存在ということなのかな?」
話を聞く限り、2人とも軽く200年間の記憶を保持している人格らしい。ここにも深い因縁がありそうだ。
で、間髪入れずに自己紹介を続ける咲。
「で、私の影の中でよく昼寝してるのが。16番目のメンバー、極神速歴0.01秒でテイムした、メリーさんの子供、守護霊獣の子犬の眞井ちゃんです」
「きゃんきゃん! へへへへ!」
「あとは今現在歴2037年に〈召喚協力〉した大精霊シルフ・デルタストリームが、メンバーじゃないけど喋れるAIですね」
1人で合計4人の人格とお喋り出来る状況下にある咲という存在をまずは把握した内田金蔵。
次、我らが社長、2番目の天上院姫の自己紹介。
「で、わしが現実世界での信仰力がおバカになってる〈自由の悪神〉天上院姫じゃ! ちなみにひょんなことから天上院咲も〈家族の善神〉を名乗っている! ゲーム会社、神道社の社長。内田のご存知の通り、内閣総理大臣の今泉善次郎とコネがある、中国のGM、希一十ともあまり見かけないが連絡を取り合っているぞ。というわけで、この多想世界での総合的なゲームマスターじゃ! 最未来歴5年で大精霊シャドウ・ダークサイドと〈召喚協力〉した。天上院咲のバディ役でもある! あらためてよろしく!」
「改めてよろしくお願いします」
姫は律儀にお辞儀をしたので内田もお辞儀をしかえす。
咲は次に3番目の仲間を紹介する。
「続いて3番目が、私達姉妹と同じ魔法科学高等学校に在学中の私達と同い年、近衛遊歩/エンペラーさんです! 自称廃人ゲーマー!」
「よろしく内田さん、拳銃使い兼料理の修行中の者だ、よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
咲はどんどん進める。
「はい、どんどん行くよ! 4番目の仲間! 生産職プレイヤーの遊牧生くん!」
「は、始めまして内田さん、農林水産の事のについては僕に聞いて下さい」
「はい、わかりました」
では5番目。
「5番目はこのゲームでは貴重なショタっ子マスコットキャラ! 桜愛蒼葉/ナナナ・カルメルくんです! 一応元四重奏、姉に桜愛夜鈴ちゃんが居ます!」
「ははは、はじめましてです…… よろしく……」
ちょっと内気な小学生と言った所だろうか、と内田は思う。
次、6番目。
「で、内閣総理大臣、今泉善次郎の息子。今泉速人くんです! 素早さ極振りのスピードスター!」
「父がお世話になってます、速人です」
「よろしく速人くん」
内田にとってはこの子の父親には大きな恩がある関係性だ。
次、7番目。
「天命アリス=スズちゃん、通称最高人工知能。簡単に言うと人口フラクトライトの総合結晶体な存在ですね、夜鈴ちゃんの亜種なんですけど要するにAIの中ではトップの権力を持つと思えばいいわ」
「ちょっとその言い方は変なんじゃない?! ……始めましてスズです、よろしく内田さん……」
「はいよろしく……」
ここら辺から変わったメンバーが多いな、と思い出す内田。
次、8番目。
「この人はNPC、装甲飛龍の飛焔さん、大型のドラゴンでマフィアのボスです。簡単に言うと動物の乗り物です」
「よう、世話になるぜ内田」
「はい、よろしくお願いします」
感じ的に強面の黒いドラゴンと言った感じだ。
次、9番目。
「この子は流水寺導/ミチビキくんです、火力特化のただの後輩。現在中学3年生ですね」
「よろしくお願いしますッス!」
「はいよろしく……内田です」
このこは何も考えてないタダの馬鹿っぽい印象の少年だ。
次、12番目。
「放課後クラブ親衛隊の中間管理職統合班長のシャンフロさんです。今まで困った事があったら彼を仲介役にしてました」
「よう内田! このチームは中々骨が折れるぜ! 覚悟しておけよ!」
「はい、覚悟しておきます」
勇ましい少年だが、内田は物腰柔らかく対応した。
次、13番目。
「湘南四空さんです、現実世界の湘南桃花さんのお父さんの転生者という特殊な立ち位置で、桃花先生から預かってます。無口なので何を考えてるのかわんないんですよね。一応プレイヤーです」
「……四空だ、……よろしく……」
「はいよろしく」
どうやら思春期特有の〈自分の立ち位置がいまいちまだ良くわかってない子〉少年なのだな、と思った内田。出自や家柄、前世でのシガラミのせいで上手く動けないのだろう。
次、14番目。
「この子が、アセンブラくん。機械種の対元滅種用AI、私とのマブ戦術に入ってる子です。型式番号はMFー5、少年型男子ですね」
「よろしくお願いします。データ解析なら任せて下さい」
「はい、よろしく」
次、15番目。
「トレント・フレンドリーさん。寿命5000年の樹命種でNPC、青年型男性です」
「ふぉっふぉっふぉ、よろしく!」
「ふぉふぉっふぉ! よろしく!」
仲良さそうだった。
一通り自己紹介を終えた咲は説明から開放された。
「で、16番目が子犬の眞井ちゃんで、17番目が日銀副総裁の内田金蔵さんです! ギルド放課後クラブ内の自己紹介は以上です! 皆さん、改めましてよろしくお願いします!」
『よろしくおねがいします!』
全員が一斉にそれぞれの心中を感じつつ、挨拶した。




