第71話「天上院姫とクリアしおり」
天上院姫は迷っていた。プレイヤーネームを現在の「ヒメ」から「ゼロイチ」か「サチ」にするか悩んでいた。
そんな中、忘れた頃に現れたのは。ギルド名、四重奏の1人。ブロードだった。四重奏は厳密には5人いる、初期メンバーとプラス1人といった構成だ。
純粋無垢な瞳でヒメはブロードを観る。
思い出したようにブロードはヒメを見返して。
「待ったか?」
「ううん、今来た所じゃ」と、そして言う。
「えーっとイフリート戦以来だったな、厳密にはEMOジュニアカップの決勝戦にも居たが」
「んーまあ紆余曲折あってそうなるな、船の甲板のスクランブル交差点にいたっぽいが、目に入らなかったっぽい」
日進月歩で出会ってたらしいが、気づかなかったらしい。ブロードは更に「おっと忘れてた」と言わんばかりにポケットに手を突っ込み、あるものを渡す。
「ほい、クリアしおり。お前が持ってた方がいいだろ」
ブロードはヒメにクリアしおりの束を渡す、ヒメにとってはただのしおりにしか見えなかった。
「これ何のしおりじゃ? ほら、ゴーレムのクリアしおりとかワイバーンのクリアしおりとか」
ただのしおりじゃない、クリアなしおり。それに付加価値を付けるようにブロードは淡々と語る。
「まあ、ポケットに入るのが前提のクリアしおりだからな」
1つ目は、赤青緑黄色の元祖トカゲの尻尾のクリアしおり。
2つ目は、金銀色の両翼鳥のクリアしおり。
3つ目は、ハート型の宝石ゴーレムにαとΩを付け加えたクリアしおり。
4つ目は、黒白色にXYZと冷たい氷魔法が施されたクリアしおり。
5つ目は、現在の月と太陽に全てを見通す瞳が施されたクリアしおり。
「ん~、魔具方陣に組み込めそうだな」
ヒメは受け取って、眺めながら用途の使い方を思索する。
「そうだな、クリアしおり。ルビはナウローディング。って所だろうな」
ヒメは使い方を思考する。ジョブが忍者なので。小刀の末端にこれを付ければ、色々と使えるかな。と疑問符を浮かべながら見定める。
「ふうむ、あ。そうだブロード、おぬしにゼロイチかサチ。どっちのネームングが好きかね?」
ブロードはヒメの考えてる事を先読みして制する。
「ヒメのままで良いよ、お前は真理を作る側の人間だろ? 今ある真理で何とかしようってゆうたまじゃない」
ブロードはヒメの雑念を綺麗さっぱり霧散させた。
「ふむ、それもそうか。ありがとうなのじゃ」
「いいってことよ、どうせただの雑談だ」
言うと二人は立ち上がり別れる。
「んじゃ、またそのうち」
「ああ、またそのうち」
二人の何気ない会話はこれにて一端終了した。