第696話「転・VS元滅種ゴブリンローグ」
咲とシルフは謎の乱気流の中で戦っているその頃。
謎の乱気流が礼拝堂を満たいている中、精霊礼拝堂の外側で誰も寄せ付けぬ鉄壁の守りで鎮座していた兵隊2人が悲鳴を挙げる。
どうやら、彼ら兵隊達の〈影から転移してきた〉らしい、その名は元滅種ゴブリンローグだ。
《元滅種、子鬼悪徒が2体現れました!》
「ひ! ヒー来るな化け物ー!?」
「だ! 誰か助けてー!?」
兵隊達2人が転げ回る。
「ギガガガ!」
「カッカッカ!」
申し訳程度に短剣と長剣の武装を所持し、ブンブンと振り回す敵モンスターコンビだった。今回は練習していた、ただ立っているだけの敵元滅種と違って、攻撃してくる危険な存在らしい。
姫とアセンブラは悲鳴の声のした方へ駆け寄る、謎の乱気流の外側へ抜けた。
「おーおー元滅種じゃん、アセンくん出番だぞ、今のワシじゃ〈モルボルの毒袋〉ぐらいしか効果がない」
NPCのアセンブラくんぐらいしかまともな攻撃は通らない。姫のスキルでモルボル自体はこの世界の原生生物から取った材料なので効果があるらしい。
アセンブラくんが天上院姫に対して戦闘許可を取る。
「ピピピピ、〈学習〉を使用可能な発動条件を満たしました、新たにスキルを生成してよろしいでしょうか?」
姫が、例のアレか……と言わんばかりに嫌な顔をする、あまりラーニングに対していい思い出が無いのだろう。
「でたよ、強すぎて準制限を食らったラーニング……、良いけど今回の1戦闘では2度までね。あとスキル増やし過ぎでも管理が難しくなるから、少なめにお願い」
「了解しました! 攻撃有効可能スキルを生成します!」
アセンブルくんは、分析・解析をしてからそれらのデータを元に発展させてゆく。
《スキル〈学習〉により新しいスキルを生成します……!》
《スキル〈絶対氷河期〉を生成しました……!》
頭の頂点からアンテナを伸ばし電波を受信、螺子と歯車が急速に回転し、緑色の電流を体内全身へ駆け巡らせ。そして結論へ至る……。
スキル名〈絶対氷河期〉。
元来持っていた氷結の能力を増強する、超電導状態で行動範囲限界を拡張可能にし、相手を追尾攻撃する。
相手の動きを完全に封じ込めた上で、そのアバターが元来内包している空間そのものを吸収し、命尽き果てるまでHPを吸い取り続ける。
これにより、内包している存在が宇宙体だった場合でも、スキルを執行し続ける限りエネルギーソースの吸収は際限なく続く運命となる。
「「ギギガガー!」」
ゴブリンローグ2体がアセンブルへ襲いかかって攻撃してくる……!
アセンブラは両足を使い軽快に回避運動を取ってから……。
「〈絶対氷河期〉! ……起動・展開……!」
アセンブラは自身から絶対零度の氷結をフィールドへ向かって放つ、足元からゆっくりと可動範囲が広がってゆく。
「ギガガ!?」
「バガガ!?」
そのひんやりとした青白い氷を攻撃だと判断したゴブリンローグ達は一目散に逃げ出す。が、氷結したフィールドは追尾し、盤面を一気に凍らせにかかる!
ゴブリンローグ達の行動範囲、即ち逃げられる範囲の限界を超越し、その氷は拡張を続け、ついには足元からゴブリンローグ達を絶対零度の氷漬けにした。
あとは動けない事をいい事に、HPが徐々にアセンブラに吸収され続ける運命となる。
これによりゴブリンローグ2体は絶命した。
《冷徹なる空想を2個手に入れました!》
「……、ラーニング1回で十分だったな、ワシがサポートするまでも無かったか」
〈絶対氷河期〉も強力だが、やはりそれらを詳細解析・複数生成してしまう〈学習〉の方が凶悪だな、と思うGM姫であった。
今回の戦闘で得られた教訓は。やはりギルド、放課後クラブの問題点は、原住民や原生生物の仲間が居なかった事にあり、仲間さえ居れば戦闘面では問題無さそうである。
無敵ギミックがある元滅種でも仲間さえ居れば何とかなりそうである。
……現状、仲間が居なければどうにもならないが……。
豆知識
名前◇学習
希少◇R
分類◇スキル_準制限_変化技
解説◇数々の、何でもアリのこのゲームにおいて、唯一強すぎて運営陣により規制が入った数少ない事例がこのスキル、〈学習〉である。
その時その場で回数制限が変化するが、とりあえず無制限・無条件に連発することは禁じられている。
それは、イベントの難易度や、ボスモンスターとの戦闘予測時間などを考慮して〈1回の戦闘で必ず回数制限がつく〉が、1回で学習して良い文字制限とかも特に無いので結構穴だらけのガバガバ設定である。ただし、都合の良い時に何回も無限に使って良いスキルではない、その事だけ頭に入れておけば良い。




