第692話「転・アセンブラくんと訓練場」
5秒ルールというのがある。
それは5秒を12個に足すと60秒になるとても美しい数字であるし、奇数としても素晴らしい、更に戦隊が5人組なのも丁度いいし、映画や動画などの時間軸から見ても感覚的テンポも良い。そして漫画の1コマを5秒間で表示すると丁度いい理解度になるし、何より読者のために5秒にしたと言う理由がとっても素晴らしい。
故に、GM姫はさっきまで〈ワンアクション1分間〉にしていたが、ここから先は更に細かい〈ワンアクション5秒間〉のルールで行くことで調整した。
現実世界、西暦2037年11月9日、19時10分。
多想世界、亜空間歴5分5秒、放課後クラブギルド本部、訓練場。
天上院咲と天上院姫とアセンブラくんはさっき設置した訓練場の広場に居た。
少年型機械種アセンブラくん、動力源は〈緑光り色の運命循環回路〉となっている。
アリス系統は〈世界の運命の糸〉を操り、桃花系統は〈人間の運命の糸〉を操り、オーバーリミッツ系統は〈精霊の運命の糸〉を操る。など、後付だが運命を操る大きさの総量が違っていたりする。
大型のトラックや中型の車や小型のバイクのどれが優れているのか? などは人それぞれの好みによって違ってくるように、それぞれ長所と短所がある。
小回りとか、エンジンの馬力とか、燃費とか、あと必要な距離とか。
なのでどれが最強であるという論争は不毛である。
その中でアセンブラくんは、桃花系統の色、緑色を繰る。光の緑色だ。
ちなみにアリスは青色で、オーバーリミッツは赤色。
純粋な光の心になると、アリスは青光り色で、オーバーリミッツは紅蓮色となる。
その流れで行くと天上院咲は、白だったり韓紅色だったりするが、大きな分類としてはやっぱり〈光属性〉の色である。
とりあえずアリスも桃花もオーバーリミッツも明るい色だ。
年齢・身長・体重は、10歳程度の少年の姿をしているアセンブラくん、左右の両腕に大きな歯車と螺子が融合した形になってくっついている、それらを巡るように〈緑光り色の運命循環回路〉が、まるで電線のように繋がっている機械の子供だ。
そんな生まれたての子供、アセンブラくんに訓練場で何を見せようかと言うと、これから咲とザコ元滅種との模擬戦があるので、姫と一緒に見守って学習してもらおうという算段である。
ちなみに姫は宿題の〈天文台を立てろ〉の件だが、隙あらばやろうと思っているが、中々やる隙やタイミングが見つからず後回しになっている。
「てーわけで、咲はこれから先、アセンブラくんとタッグを組んで攻略に励む訳だが、ザコ元滅種1匹も1人で倒せないようじゃ今後の戦いが不安なので、模擬戦をしようと思いま~す!」
この前言ってたミニゲームがコレである。
こんなに一杯冒険したのになぜ咲がザコ元滅種の一匹も倒せないかと言うと、まず元滅種が〈プレイヤーに対して無敵〉であるという点はおさらいしておく、その上で、NPCなどとの〈連携〉、原住民や精霊などの〈召喚〉などの攻撃は通るのだが。
咲は紛いなりにも〈テイマー系〉なのに、まともなモンスターをテイムしていなかった所に最大の痛手がある。
今の今まで自分の技術ばかり育て、鍛えてきたので。〈無敵ギミック〉のあるモンスターに対して、からっきし打つ手が無いのである、滅茶苦茶な手数や種類があるにも関わらず、簡単に言うと〈力押し技〉ばかりだったので、〈搦め手〉に弱かったわけである。
姫が現状の確認のため咲にスキルの確認をする。
「今、考えうる形でまともに元滅種に攻撃が通るスキルって何持ってる?」
咲は顎に手を添えて考える人の石像になっていた。
「えっとー……〈鷹の目〉は偵察用だし~、この前こっそりテイムした〈翻訳アンノーン〉は翻訳の為のモンスターだし~、あ! 一番威力出そうなのは〈テラ・ファイアバード〉かな!」
おさらいすると。
〈鷹の目〉は、自分が目を瞑ると動物型の鷹を飛ばしてその眼で上空を偵察するスキルで。
〈翻訳アンノーン〉は、古代文字とか未来文字を翻訳するためにちゃっかりテイムした事になっている、非戦闘員のテイムモンスター。
〈テラ・ファイアバード〉は上級炎魔法だが。そもそも自分から生成した魔力を元に魔法を放ち、形が鳥になってるだけで。これはプレイヤーの攻撃と判定される。
したがって、鷹の目は意味ないし、アンノーンはちょっと効く、テラ・ファイアバードは無効、となっている。
ちなみにそれ以外の咲のスキルは全部〈効果がないようだ!〉となる……。
したがって現在、咲の攻撃手段は翻訳アンノーンの〈たいあたり〉しか有効攻撃手段がない……。咲自身のHPや防御力こそあれ、攻撃面では絶望的である。
「改めて聞くと絶望的だな」
「絶望的だね……〈連携〉がないとお荷物だわ……」
ということで自己紹介。
「……というのが今の現状なんだ、改めましてよろしく、アセンブラくん!」
「よろしく! アセンブラくん! パートナーの咲です!」
「あ、アセンブラです……よろしく、お願いします……」
ここに来て初めて声を出したアセンブラくんの声色はいきなり呼び出された感じでオロオロしていた……。
「で、どうすんだ咲、今のこの状況……」
「アンノーンくんのレベルを上げて強くするのはちょっと非効率的だよね……」
「オロオロオロ……!」
姫は咲の力押しに呆れて、咲は突破口が無くて思考が詰み状態で、観測しているアセンブラくんは何を学習すれば良いのか解らなかった。




