第688話「転・四獣王ゴッドジーラVSジゲンドン」
現実世界、西暦2037年11月9日、15時30分。
VRゲーム、多想世界、EWサーバー。
「じゃからって、見知らぬ他人に合わせたって本末転倒じゃろ、こっちの歯車が狂う……」
GM姫の開幕最初の一声はそれだった。
◇
話の内容が飛んでいるので簡略して説明すると。
最未来歴1年、ギルド『脳筋漢ズ』のジャンプが文法型の心氣の件を情報共有で理解したあと。
「だからといって、最古来歴2000年の岩石デバイスの心氣の〈読み込み〉はしてないんだろ? 2000年後に心氣データを読み込み成功できてないんじゃ実験成功とも言えないし、最未来歴1年のこっち側でも量産できない。魅力的な話だが、確証がないなら実行できない」
とジャンプは咲に言われたからだ。
「じゃあ、最古来歴2000年に行って心氣読み込みに成功したら、一度我らがホームである今現在歴に戻って、情報を政府か何かに提供するのはどうかな? この世界に日本国は無いけど、リアクションを知りたい」
「リアクションが速く知りたいなら、今現在歴2025年になるのか? あの時代だったら立派な自衛隊も警察庁もあるだろ」
咲とジャンプの口車が弾んでいたが。
「じゃからって、見知らぬ他人に合わせたって本末転倒じゃろ、こっちの歯車が狂う……今現在歴2037年でなんとかなるはずじゃ」
GM姫の開幕最初の一声はそれだった。
まとめると今度のルートプランは。
最未来歴1年から最古来歴2000年に飛んで、心氣実験成功の確認。
そこから今現在歴2037年の天上院家のホームに戻って、原住民の自衛隊や警察庁に情報提供。
それから世界各国のリアクションを見て次の行動を考える、といった流れだ。
一応念を押しておくと、現実世界の西暦2037年と、多想世界の今現在歴2037年は似ているようで全くの別世界であるが文明進歩は同じである。まるで鏡合わせの世界のようだった。
だから天上院姉妹は〈ホーム〉と呼ぶことにした。
「ん~、じゃあもったいぶらずにさっさと確認行くか、確認報告は全体掲示板で良いよな?」
「ああ、わざわざ足を運んでもらうのも大変だしな、情報結果の確認だけでいい」
姫とジャンプはそのように話す。
という訳で、さっさと行って確認することにする。
現実世界、西暦2037年11月9日、15時30分。
最古来歴2000年、第1の街ライデン、地震0の洞窟。
――、……。
「よし! 文法型の心氣の読み込みは成功! 問題なく2000年間記録の保存には成功したよ!」
「じゃあミッションコンプリートだな! 案外楽勝だったな」
本当は、アリス・ディスティニーの安否や文明開化の痕跡の観測もしたかったが、今回はそれが主目的ではない。
と、油断していたその時……! ズズズドスン! と〈地震〉ではなく〈生物〉による〈足音〉が地面全体に鳴り響いた……!
「な、何……!?」
「洞窟の外だ咲……!?」
ドスン! ドスン! ドスン! 凄まじい地響きと共に、超弩級の怪獣2匹が相対す。
洞窟を出て見上げると、四獣王ゴッドジーラと四獣王ジゲンドンが相対していた。
「ゴッドジーラは見たことあるけど! あの岩馬がジゲンドン!?」
「あぁ、何かそんな感じだ……! デケエ……!?」
「ギイイイイイイガアアアアアアアアアア!!!!」
「ビヒイイイイイイイイイイイイイインン!!!!」
轟く咆哮――!
怪獣2匹の威嚇と共に、全王型の心氣が、バリバリバリ! と辺り一面周辺を駆け巡り轟く!
〈最古来歴〉〈今現在歴〉〈最未来歴〉全ての時空間に〈咆哮の波動〉が鳴り響いた……!
「これが……四獣王の心氣……!?」
「うわああ!? 吹き飛ぶ!? 風圧で吹き飛ぶよコレエ!?!?」
いきなり大怪獣超決戦が始まった……!
まず開幕動いたのはジゲンドン。早速、得意の逃げ足で時空間を超越して逃げてしまった……が!
「……! ギイイイガアアアアア!!!!」
ゴッドジーラが〈熱破壊光線〉を放つと、バリバリバリと時空が歪み、そこに居ないはずのジゲンドンを今の次元に黒渦のように引きずり込み……熱破壊光線がジゲンドンに当たった!
「ビ!? ビヒイイイイイインン!?!?」
無力化されれジゲンドンに〈超高温の傷跡〉が右胸に残る……!
《四獣王ジゲンドンの右胸に弱点が付加されました……!》
どうやら、四獣王ゴッドジーラの熱破壊光線には弱点を追加する、〈弱点付加〉があるらしい……!
「お姉ちゃん! これどうしたら良いの!? 大きすぎるよ!? ぬわああ!?」
「プレイヤー2人じゃ対処しきれない! 見守るしかないよ!? のおわあ!?」
爆風熱波の威圧が周りを満たす……!
次はジゲンドンが環境型の心氣を使い、水を川を、否。〈大河〉を形成して洗い流す……! その場に突如として大津波という水の本流がゴッドジーラを襲う……!
「ギイイイガアアアアア!!!!」
「ビヒイイイイイインン!!!!」
水流に怯んだゴッドジーラに対してジゲンドンは追撃、口から全てを食べ尽くすブラックホールを形成、そこから欲しかった冷気を放つ、大河と冷気の合せ技、簡単に言うと超デカイ冷凍ビームだ!
パッキイイイインンンンン――!!!!
四獣王ゴッドジーラは身体を氷漬けにされ、一気に凍結状態になる……!
ゴッドジーラは活動を静止した……!
「ビヒヒイインン!! ビヒヒイインン!! ブルルル……!!」
今の内にと思ったか、本当にビビったのかは定かではないが、ジゲンドンはそそくさと時空間移動をして転移、消えてしまった。
右胸に高温の弱点を付加されたまま、何処かへと姿を消した、逃げられたのだ。
対する四獣王ゴッドジーラは、地震0の洞窟近辺で、凍結されたまま、そのまま動かなくなってしまった……。
「お姉ちゃんこの凍ったデカイの、どうすればいいの……?」
「今回わしらの目的はそれじゃないからな……自然放置で良いんじゃないか……?」
普通に考えて何かしら対処したほうが良さそうだが、冷静に考えて目的と違うので、本当に自然災害か何かだと思って、第1の街ライデンに戻り、大転移門を使ってサーバー移動、時空間転移で今現在歴2037年に戻った……。
現実世界、西暦2037年11月9日、16時00分。
今現在歴2037年、第1の街ライデン、大転移門前。
「えっと~……、次に。原住民の自衛隊や警察庁に情報提供をするはず何だけど、さっきのとか諸々をどう説明しよう……」
「……、ありのままを言えば良いんじゃないか?」
姉妹は自称〈ホーム〉に帰ってきて、緊張の糸が解れて、どっと疲れが出てきた。
あと、全体掲示板で最未来歴1年に居る、脳筋漢ズのジャンプに「読み込み出来たよ」と実験成功の報告をさっさと済ませた。




