第681話「結・留年回避!」
現実世界、西暦2037年10月8日、12時00分。
魔法科学高等学校、1年生の教室。
もう10月なのに科学の塔の攻略、と言う名の五重の塔の存在をすっぽり忘れていたので、まだ学校進級の宿題を一個もクリアしてない事に焦る天上院姉妹。
ちなみに、ゲーム廃人の友達、近衛遊歩はもう宿題を終わらせていた。
「お前ら姉妹とも4月から10月まで何やってたんだよ……」
「じ、実は色々あって……その……」
「返す言葉もございません……はい」
科学の塔は、1層分が新作ゲーム1本分あるので、クリアするのに大体2ヶ月かかる。それが5層分有るわけで……その存在ごとすっぽり忘れていたわけである。マズイ。物理的時間が足りないのでクリア出来ない……。
このままでは高校2年生に進級できない……。
いきなりハリーなポッツーな世界観に逆戻され、我に返る姉妹は現実を直視し唖然としながら、教師である〈緑玉の魔術師の湘南桃花〉に詰め寄る「ヤバいって! どうしよう……!」と相談してた……。
魔法科学高等学校、職員室。
「まー、あんたら2人の状況は通常とは異なる、ちょっと特殊な状況だしね……私の一存でハイOKとは決められないかな、校長に相談しましょう」
というわけで、校長室に来た湘南桃花先生、天上院咲と天上院姫の2人……。
魔法科学高等学校、校長室。
で、だ……。またもや〈白のガンダルフ校長〉に3人の置かれている状況、その〈全ての特性〉を見破った。
「ふぉっふぉっふぉ! 若い頃には苦労は買ってでもしろと言うが、……中々に苦労しとるようじゃな。宿題の方の件は良い、パラドックス時空からの帰還……よくぞ戻ってきた、さぞ苦労しただろう。修正内容も〈全て観た〉が、フム、中々に悪くない」
天上院姉妹の心の雲が晴れる表情をした。
「え! もしかして……!」
「おお! 流石話が分かる……! 解ってくれるのか!?」
超能力者には超能力者を、とは正にこの事だろう、普通の高校ではこれらの事を理解しろという方が難しい。
「ふぉっふぉ、じゃが2年生になったら新入生も入って来る、その事も心に留めて、あまり上級生に苦労をかけないようにノウ……!」
まさか今の上級生の生徒達にまで苦労をかけている所までお見通しだったとは、流石に考えが巡らなかった天上院姫はビックリした。
「あ、あははははは……ハイ……、なのじゃ……」
何とか辛うじて高校生活をスリリングに満喫している姉妹だった。
とりあえず、パラドックス時空からの帰還、それとその後の軌道修正案が通ったらしく、何とか高校2年生には進級できそうである。
魔法科学高等学校、1年生の教室。
天上院姉妹は、学生生活で一番危ない状況にヒヤヒヤものだった。
「あ、危ねえ~~~~、本気で留年するところだった……!」
「まあ、本気で宿題の件忘れてたからな……!」
近衛遊歩と言う名の男友達は「何やってんだコイツら……?」というジト目で見つめてくる。
「お前らいつも真面目に空回りしてるよな……」
「失敬な!」
「私達はいつだって真剣ですよ!」
不名誉極まりないと仕草で表現するポンコツ2人組には威厳がなかった。
「……とりあえず学食は何食う? トマトスパゲッティーか……?」
何か遊歩に話をはぐらかされた気がするが、それでもお腹は空く姉妹2人……。
「……茹でる前のスパゲッティーに戻ったのなら、食べておくか……」
「そうだね、凍るよりは茹でたほうが良い。は、腹が、減った……」
とりあえず学食を食べに3人は食堂へ移動した。
12時30分。……昼食をとり、再び教室へ戻って来る3人はスマホを手に取り出しスキルの確認をしていた。
ゲームにログインしていなくても、授業と授業の合間に状況確認ぐらいは出来る。
軽く調べるだけなので、咲の光のスキルと姫の闇のスキルの確認。
それと遊歩に「今まで何やってたの?」という返答確認だ。
まずは咲の光のスキルから。
名前◇連鎖する光の聖剣
希少◇SR
分類◇光属性_剣技スキル_最古来歴5年で習得
解説◇一振りで5回の斬撃を放つ光の聖剣スキル。使い勝手が良く応用が効き、手数も増え、手に馴染み重くもなく軽くもない丁度いい扱いやすいスキル。近・中・長距離用に意識をコントロールすることで光の斬撃の長さや射程距離を自在にコントロール出来るのも魅力。近距離なら剣が振動し、中距離なら槍並の距離になり、長距離なら飛ぶ斬撃となる。
咲は、一見地味なスキルかな? と思ったが、1振りで5回なら、5振りで25回だし、単純に通常攻撃が強化される系のスキルかな? と思ったのが率直な意見。
一撃必殺系ではないが、ジリジリと相手を追い詰める事ができそうだ。
クライマックスの時には使わなさそうだが、通常攻撃・通常戦闘の時はよく使いそうだ。そのくらい利便性が高い。
一振りで1回斬撃が飛ぶ、スキル〈斬空剣〉の代わりになりそうだ、単純に戦闘の幅が強化された。
次に姫の闇のスキル確認……。
名前◇混沌で輝く闇の魔剣
希少◇SR
分類◇闇属性_剣技スキル_最古来歴5年で習得
解説◇一振りで5回の斬撃を放つ闇の魔剣スキル。使い勝手が良く応用が効き、手数も増え、手に馴染み重くもなく軽くもない丁度いい扱いやすいスキル。近・中・長距離用に意識をコントロールすることで闇の斬撃の長さや射程距離を自在にコントロール出来るのも魅力。近距離なら剣が振動し、中距離なら槍並の距離になり、長距離なら飛ぶ斬撃となる。
コンストレーションということは星座という意味だ、それのチェイン、連鎖ということなので直訳すると〈星座連鎖〉となる。それを〈混沌で輝く闇の魔剣〉と読む感じ、さしずめ「夜空で輝く為の闇」と言う小洒落たネーミングセンスだなと姫は思った。スキルの内容自体は咲のと全く一緒なので、属性が光と闇の違いしか無い。あとは技量でどうにでも化けそうなスキルだった。
一通り姉妹はスマホでスキルの内容を見比べ終わったので。
「で、遊歩は今まで何やってたの?」
と興味津々で聞くと……。
「お前らがウダウダ〈第五休憩所〉で油売ってる間に、第七の街『破局した街ノット』の大転移門だけ開けておいたよ」
もしかしたら近衛遊歩は、ずっと料理スキルでも上げてたのかな? と思ったら、いつの間にか天上院姉妹より攻略が進んでいた。
「え!? 第七の街ってネット情報によると確か最前線攻略組が居る場所でしょ!? 凄くない!?」
「ワシらがパラドックス時空で困ってる間に! お前は現実でもゲームでも優位に立ってるのかよ!?」
流石ゲーム廃人勢、ゲームエンジョイ勢とはやることが一味違った。




