第678話「起・EWバージョン6」
【EWバージョン6、アップデート内容】
バージョンアップ更新日、現実世界、西暦2037年10月7日。
メインシステム〈世界樹クロニクル〉に、〈エレメンタルワールド〉略称〈EW〉にゲームマスター権限で〈創造歴〉に対して修正権限を行う。
現在の〈EW世界線018・今現在サーバー〉に加え、新たに。
〈EW世界線018A・最古来サーバー〉と〈EW世界線018B・最未来サーバー〉の実装。
現在の〈創造歴〉の暦を、〈今現在歴〉に設定変更。
新たに〈最古来歴〉と〈今現在歴〉と〈最未来歴〉のメインサーバーに分ける処置を行う。
明確な時間差はあえて〈不明〉状態であるが、ある程度時間の推測は出来る範囲にとどめる。
〈今現在歴〉を基準点として、〈最古来歴〉はおよそ1億年前、〈最未来歴〉はおよそ1億年後を想定している。
《メインサーバー移動時のプレイヤーアカウントの状態について》
基本的にプレイヤーカスタマイズした状態から時間移動しても〈元の状態から変わらない〉事を想定している。
難易度が高いため、初心者は〈今現在歴〉からしかゲームをプレイスタートする事しか出来ず。最初は〈最古来歴〉と〈最未来歴〉のメインサーバーは〈ロック状態〉とされている。
今後、第二の街『雲の王国ピュリア』クリア後に、〈アンロック〉されロックが解除される。
《職業『時間師』の実装》
プレイヤー、冒険者の職業に『時間師』を実装。
習得条件、第二の街『雲の王国ピュリア』クリア後。
地図師の対極にある職業、地図師が空間を書き記すなら、時間師は暦を書き記す存在。
プレイヤーやNPCを〈赤ちゃん状態〉や〈老人状態〉に変更したり、元の状態である〈正常状態〉に戻すことが出来る。
時間のループ、巻き戻らない一方通行な時間進行、矛盾だらけのタイムパラドックス状態の修正権限。
などの時間正常化、時間歪曲化などの〈時間執行権限〉が付加される。ただし〈元の状態〉を知っていないと執行できない。高等技術。
《職業『八百万の神』の実装》
プレイヤー、冒険者の職業に『八百万の神』を実装。
習得条件、第二の街『雲の王国ピュリア』クリア後。
信仰による〈神様状態〉になることが出来、〈超自然現象〉を執行できる高等技術。
視覚出来ない概念で戦う事が多く、主にイメージ力がものを言う。
教会や、職業『神官』から成る事が多い。肉体から離れて精神のみで行動・思考・実行出来る。
ただし、こちらは〈ゲームの仕様としての神々〉なので。運営陣やゲームマスターなどの権限よりも必ず下位になる。
例えば、ゲームマスター。天上院咲の家族の善神化や、天上院姫の自由の悪神化は現実改変出来るが。〈八百万の神〉はゲーム内の現実改変は出来るが、本物の現実世界の現実改変は出来ない。
《EW世界線018の扱いについて》
世界線は、元々〈運命の糸〉と呼ばれている。
時間軸は〈糸〉として例えられ。糸と糸を束ねる〈縄〉のような関係である。EW世界線018には小数点以下が無数に存在する。例えば、EW世界線018.3141など……無数である。今回は〈縄〉の本数が1本から〈縄3本〉になったと考えればいい。
しかし、Aの〈最古来歴〉と、Bの〈最未来歴〉は増えたものの。世界線は018のままである。従って〈正しい時間軸〉、通常・普通・元祖となる時間軸として扱われる。
《エンドコンテンツ、四獣王。三獣王『ジゲンドン』の実装》
漢字名「時元胴」、馬型の超弩級怪獣エネミーモンスター。
〈今現在歴〉〈最古来歴〉〈最未来歴〉の何処かを縦横無尽に移動し好き勝手生息している、時間軸を渡るモンスター。強者は背中に乗ることが出来る。弱攻撃で爪と牙と岩で攻撃し、中攻撃が環境型の心氣で〈大河〉を流し、強攻撃・本気を出すと全王型の心氣の咆哮で〈今現在歴〉〈最古来歴〉〈最未来歴〉を横断して〈咆哮の波動〉が世界に轟き鳴り響き、1億年前後の時を超え、弱者は理由もわからず気絶し倒れる。逃げるのが得意で、時元を超えて移動するので出会っても中々追跡出来ない。草食動物。性格は臆病者だが、世界の何処かに巣があり、大切に育てている卵を強奪しようとすると本気で怒り、ヘイトMAX状態に変貌、地獄の果てまで追ってくる。
◇
咲はEWバージョン6、アップデート内容を良く読む。文面をじっくり読んだ後に感じた第一印象を感情そのままに言う。
「最後の文面になんかおっかねぇの来た……w」
「いや、せっかく作ったんだから自重せず強モンスターも置こうと思って……w」
GM姫はお遊び半分、エンタメ半分な調子である。
「まあこのくらいの方がエレメンタルワールドって感じするよ、いやマジで。想像の限界を超えてきそうな感じとか良くでてると思う」
咲は一応褒め言葉として言っている、今までこのゲームをやって来たのだ、このくらい常識外れな敵が居てくれたほうが面白いというものである。
で、このバカ強イカレ馬の誕生である。咲はその公開された公式岩馬の画像をマジマジと見つめる……。
「コイツが四獣王か~……ほへ~……」
一獣王ゴッド・ジーラら単純に火力オバケで。
ニ獣王ディアボロウニが増殖の塊で。
三獣王ジゲンドンが時元の化身か……、何か行くところまで行ったな。
〈今現在歴〉は今までの土台があるとして、〈最古来歴〉と〈最未来歴〉は空白の誰も手つかずの荒れ地、草原って感じだ。これからプレイヤー達の手で歴史が紡がれて行くのだろう。
そう思うとワクワクが止まらないプレイヤーの咲。
「職業も増えたし楽しくなりそうだね」
「じゃな、楽しくなってくれると嬉しい」
しっかり整理整頓したので。また広々とした空間という名の公園を作ったのであとは自然放置の縦横無尽に遊んでいいよ、という体である。
こうやって良くも悪くも、この世界は発展してきたのである。
「よし、じゃあ遊ぼう! お姉ちゃん!」
「うん! 我が最愛の妹よ!」
そうして再び姉妹は歩き始めた。




