第670話「起・力を入れ過ぎたからメシを食う」★×2
現実世界、西暦2037年10月5日。
天上院姫が自分の部屋の鍵を指紋整脈認証で開ける。
「結局、前人未到の大地を行くのに案内役など居るわけがない、ってのは当たってたわけか~~」
天上院姫はつめたいアイスコーヒーを飲む。
「1周回ってね、てかお姉ちゃんあったかいの食べなよ? お腹悪くするよ?」
天上院咲はホットコーンスープを飲む。
「……それもそうだな、コーンスープちょうだい」
そういう動作をし終わってから、皆でご飯を食べようという流れになった。
VR世界での疲れを癒やすための軽いお疲れ様会だ。
ここは、和洋中屋さん
居るのは、面倒なので皆真名で呼ぶと。リスク、スズ、桃花、オーバーリミッツ、
ミュウ、天上院咲、ブロード、レイシャ。
「何食べる?」
と、リスクはお肉と野菜とお冷を頼み。
「とりあえず、何でも良いから食べときなさい、大きくなれないわよ」
と、スズは三色団子とミルクティーを頼む。
「ごめん、。今も昔もお金無くて……」
と、桃花はうどんとホットコーヒーを頼み。
「桃花の善いも悪いも出てるわね、でも好き」
オーバーリミッツはパスタと紅茶を頼む。
「しょうがないなあ、この食費代はさっき作ってくれた時間でチャラにしてやるよ」
と、ラーメンと爽健美茶を頼み。
「とりあえず、温かいの食べたいです」
天上院咲はおでんとコーンスープを。
「ほぼ、初期メンバー揃い踏みだね!」
レイシャはパンとオレンジジュースを頼む。
で、湘南桃花は出された品々の中で、ミュウの方に行った爽健美茶を凝視する……。
「何だ……? 爽健美茶にトラウマでもあるのか?」
「あー……、うん……、そう……です」
「ただ健康になるだけじゃないか」
「いや~……プロになる為にはコーヒーだと思ってたから……ほぼ刷り込み?」
輪廻に導かれたかのように、天上院咲は呆れてため息が出る。
「は~~……青春の味がしますね~……」
桃花は、その憎むべき大敵、爽健美茶を凝視しながら言う。
「ミュウはさ……、今プロになる為には何を飲んだほうが廻りやすくなると思う?」
一瞬の間がミュウに発生し、深く浅く考える。
「難しい質問するな、……ん~~、とりあえず紅茶なら負けないな。コーヒーや酒で勝てないのは身に沁みて解ってるだろ?」
桃花は、自分の思考と思慮の浅さ、というより、漫画でメシを食うの、意味を最後の最後まで誤解していたことに今気づく。
「まぁ……ねぇ……、は~プロなら紅茶の時代か~~……」
自分が今頼んだ温かいコーヒーでも敵わないことを今マジマジと知る桃花。
ゲームマスターが言うのだからまあそうなのだろう。
昔は〈何でもあり〉な熱狂を経験した身としては、今はとても生きやすくなった、というかちゃんとゲームしてる感じがする。それも一重に天上院咲のおかげだろう。
昔のミュウ、天上院姫は色々とヤバかった、だから桃花は苦労を経験してしまった歴史がある。角が取れたというよりもう綺麗さっぱり丸くなったとと言えるほど、ミュウはちゃんとゲームを作ろうとしているし、自分もミュウも成長したなと思う。
……身長差は変わってないけど……。
「それはそうとさ、オーバーリミッツ……」
「ん……?」
オーバーリミッツはパスタをクルクルと口へ運びながら聞く。
「最近スキンシップ激しくない……?」
「それは桃花が他の女の子と話してて相手してくれないからでしょ?」
「……そういうもんなん?」
「そういうもんだよ、きっと」
スパゲッティをチュルチュル食べるリミッツをマジマジを見つつ……。
「あと、何と言うか反応が早くなったというか、対応速度がすごく早くなった気がする……」
「どうしてそう思うの?」
「何かこう、妄想で大事件を起こすと、現実で大事件起こってる気配がする……何もしてないのに……、なんかこう、手も止めろと言われてるし頭も止めろと言われてるような、……こう、不自由……」
「相棒との喧嘩ってそういうもんでしょ?」
「……喧嘩してたの? 夫婦喧嘩的な?」
「悪いことは止めます」
「……だから爽健美茶の件は何も知らなかったんだって、誤解ですよ……」
「あの~、また私抜きにして2人だけの世界に入ってません?」
静止したのは天上院咲だった。
「あ~ごめんわかってるってばさ~」
オーバーリミッツは咲を睨みつける……。
「あの……私に何か悪いものでも憑いてるんですか? 憑いてるなら払って欲しいんですけど……」
「い……生きづらい……」
湘南桃花は素直にそう思った……。




