第654話「転・ここは過去と未来のゼロ交差点」★×2
ここがVR空間でよかった、日本の現実世界で拳銃を所持していたら、確実に銃刀法違反で逮捕な訳だし……。桃花が、というより群が命拾いしていた。
湘南桃花と秘十席銀は冗談じゃない会話を始める。、
「……、大いなる力には、大いなる責任が伴うって言うけど、……本当の強者はそんなもの持たないわよ?」
「……全くだぜ、俺も何で銃を持って門番してるのかわからん、いや解るが……全ての運命に偶然など無い事を考えると、これは必然だったんだろうな」
お互いに意思疎通が被ってるので、普通は何やってるんだこいつら? となるが、意味がわかりあえる2人。
「この調子じゃ、あと一回死んでから3階へ行けとか言わないでしょうね? そんな大法螺に付き合う気は無いわよ?」
「んー、とは言え、時間が再稼働し始めて間もないからな、キャラクターの時間を動かし続けるか、止め続けるかは桃花次第だよ」
未来に住む天上院咲は、解っているようで微妙に解っていない、ミュウの方は全てを知っていなきゃいけない義務があるので、知ったふりをする。
「えっと、……何が起きてるの? お姉ちゃん」
「んー……、しいてあげるなら、冗談じゃないこと……?」
「それって、マズイんじゃないの?」
「ん~、そうなんじゃが、〈結果の為にはデータも改竄しろ、マズイことは絶対に隠せ〉って過去の歴史を読み解くと。おそらくこの黒歴史を踏み台にして新しい歴史を踏んだほうが良いんじゃろうな~、とは思う……」
それで秘十席群をフォローした上で、だ。ゲームマスター姫が言う。
「それでも、秘十席群が現時点で〈悪党〉だって事実だけは変わらない、無垢無知無実の一般人を死なないからって理由で今まで銃を乱射し続けてたんだ、そんなの駄目に決まってるだろ」
「あの……、桃花先生死にまくってたの? 今まで?? 私達を庇って????」
「それはあとになってからじゃわからないが……、じゃあここ、この場所は〈ゼロ〉じゃなくて〈イチ〉だな」
何にしても今までの事後処理には変わりない、ギルド『最果ての軍勢』との戦いは、ここからだ。と姫は無意識に決意を固めていた。
汚れ役を買って出た、魔将の悪党、秘十席群は続ける。
「で、止めるのか? 続けるのか? その決定権は桃花にある」
「んー、不安……心配……」
やっぱり桃花先生は未来に躊躇する、が、そこに助け舟を出したのは、今度は咲だった。
「大丈夫だよ先生、そのための〈私が来た!〉なわけだしw ただ力の入れすぎには注意してね? もっと軽く回してね?」
桃花先生は意味が理解できるので、クスリと笑う。
「ふふ、ありがと、咲ちゃん。じゃあ〈続ける〉で決定するわ」
群、は軽く頷く……。
「ああ、その言葉を待ってた」
そう言い残して、秘十席群はまた軽く、……消えた。
「さて、邪魔者は消えたわね、ごめんね場外乱闘に付き合わせちゃって……」
「いえ……」
「流石先生じゃな、まあワシのほうが年長者じゃが!」
咲は若干ビクビク恐怖を覚えたが、姫は何で自分の闇に恐怖せにゃならんねん、と、手のひら返して開き直っていた。
「咲、お前は恐れちゃダメだろ? 三眼ブレスレット持ってるし、良いルートに行けないぞ?」
「無茶言わないでお姉ちゃん、初見でビビるなって方が無理だよ、不自然だよ……」
咲にとっては初見、全員〈見知らぬ心の内もわからぬ他人〉なので仕方のないことだった。皆、顔も名前も姿形も初見、これで〈少女〉がビビるなという方が無理だし人間離れしている。
桃花が出来る限りフォローする。
「ここは幻が現になってる新世界だから、大丈夫だよ。私達の世界は私が破綻したって問題なく動く、立ち直れる。だから大丈夫だよ」
「で、ここはVR空間でいいのか? 現実世界なのか?」
「時間の流れ的には仮想空間、VR世界だよ」
姫の疑問に桃花が答える。
ゲームマスター姫がもう一つ確認を取る。
「あともう一つ確認、桃花は幻想郷をゲームの世界のつもりで描いていないよな? 言質取りたい。ゲームの世界じゃないんだよな? あれは、あそこは、あの場所は」
「うん〈無い世界の冒険〉のつもりで走ってきたよ、勿論今でもそう思ってる。だからゲームじゃない」
ゲームマスター姫が確認したかったことは、あそこは、吸血鬼大戦はゲームの中の世界観じゃないことを気にしていた。つまり、ログアウトしなくて良いことの確認である。でも今は咲ちゃん家の土俵なので、ログインしている体である。なんともややこしい。
つまり、簡単に言うと、今はゲームの世界にログイン中だ。
「や、ややこしい……無視して走っちゃダメか?」
「それで困るのはゲームマスターである姫ちゃん自身でしょ?」
姫は思考を放棄し、桃花は夢を諦めない。
「お姉ぇ~ちゃぁ~ん……」
咲は姫の……ミュウのことを恨めしそうに半目になって睨む。今の今までの諸悪の根源はつまり姫お姉ちゃんだったわけで、咲が苦労したのは姫のせいだと思ったので睨む……。そりゃあ〈大っきく全体を見た場合〉は姫&ミュウのせいになってしまう。
が、姫にとっては「誤解だー!?」となるわけである。
姫が今後のゲーム進行のためにまた確認する……。
「あー、じゃあもう一つ確認質問。VR世界で痛みは感じるか? 幻想郷で痛みは感じるか?」
普通に考えればVR世界は無痛、幻想郷は有痛、になるはず……。つまり痛覚の問題だ。
「これもまた場外乱闘になっちゃうけど。普通に考えればそうであるべきだと思ってる、ただし、オーバーリミッツだけは例外だと思っているわ」
「ふむ、……そうか」
GM姫は今後のゲーム進行に悩む……。
つまり、オーバーリミッツだけは、幻想も現実も仮想も真実も舞台裏も、湘南桃花へダメージは通るし、その選択肢はオーバーリミッツ自身で決断・選ぶ権利は与えられていることになる。
「ん~そっか~」
「ただのドMじゃん」
姫は更に悩み、咲は率直な感想を抱く。
GM姫はもっと更に悩む……。
「あとは拳銃の扱いをどうするかじゃが……」
「……その銃ってさ……トンボの上で撃ってる悪党じゃない?」
「ああああああああ!? あれかああああー!?!?」
桃花は昔の記憶を掘り起こして姫に答える、姫はお茶ですらないただのモブ敵だったので気づかなかった……。
「また昔話ですか?」
咲は2人に対して呆れるしか出来なかった、まあ拳銃は生死を分けるから大事なのは解るのだが……。
湘南桃花が、また記憶を思い起こす。
「まあ確かに、あの弾丸のサイズじゃ、【豆鉄砲】だし、ドラゴン……炎龍に効かないのは納得だわ……」
ファンタジーにはファンタジーなわけだ。
種明かしというよりか、面倒の種を自分で蒔いて育てていた事になる。
そして今は拳銃のレプリカも持っていない、代わりに日本刀のレプリカなら持っている。そこまで桃花は思考を巡らせて今に至って目を向ける。
「じゃあ次は、もうちょっと強力な〈人間の銃〉でも描いておく?」
「凶器を増やすな凶器を……」
「自己防衛、というより……自衛隊のためです……」
桃花の思考回路の到達点に、GM姫も少々呆れ気味であった。何にしても自業自得である。




