表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
EX第8章「鈴の湯ガーデンリベンジマッチング」西暦2037年10月4日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

702/789

第653話「承・もう大丈夫リターンズ」★

挿絵(By みてみん)

「折れたっていい、ヘシ曲がってもいい、千切れ無ければ、俺達の勝ちだ!」

 ――そう、信条戦空は言った。光が言った。



 仮想世界、鈴の湯ガーデン。

 スズ達使用人達は超大規模事後処理にアワアワしていた。


 天上院咲は、今までの不遇も含めて、信条戦空と喧嘩していた。

 可愛い喧嘩というか、もはやそんな次元を超えて、咲の不満は爆発していた。

 ……控えめに言って誠に遺憾だった。

「だから、月とか太陽とか風とか大地とかそんなのどうでもよくて! 大丈夫なら大丈夫ってちゃんと保証しなさいよ!」

「何でウチが決めて良い事になってるんだよ!」

「あんた以外に誰が決断するのよ!」


 桜愛夜鈴はペロペロアイスキャンディーチョコレート味を堪能していた。

「終わった?」


「「終わらせるもんかー!」」

 心の声をそのまま素直に代弁するように直球で言葉がハモった。共鳴意志が完全に合致していた。


「お前等が被るなや、妬ましい……」

 夜鈴の心は素直に妬ましかった、両方に対して。


「もう無理! 精神的にも体力的には疲れた! 寝る!」

 咲の本能的な休む欲求に、咲は横にバタンキューで倒れたが、夜鈴が猛烈にツッコミを入れる。

「寝るなぁあああああああああ!? VR世界で寝たらドリームウォークし初めて訳わかんなくなるぞおおおお!?」


 本気でVR空間で夢幻の微睡みうたた寝をようとした咲を、はたき起こして静止させる夜鈴。

「……はい?」

 咲はその事を、あんまり知らない。

「せめてログアウトしてから寝ろ! 現実世界で寝ろ! 絶対にVR世界で寝るな! いいか絶対だぞ! ヤバい事になるからな!?」

 それはもう昔のトラウマが蘇るようで鬼気迫る感じだった、何かもう彼女は必死だ。


「……あーうん解った、ログアウトする」

 素直に咲はログアウトボタンを押した。


 《天上院咲はログアウトしました》



 現実世界、神奈川県。西暦2037年10月4日12時00分。

 咲は、今回に限っては朝の午前9時00分ぐらいからログインしていた。

 決闘時間はおよそ約3時間。本当なら約6時間や12時間、精神体感時間を喰らってた気がするが、何とかその時間内で収められたので善しとしよう……と思えるくらいには悠久の時を過ごしていた気がする、半ば永遠の仮想空間での生活、そんな雰囲気……に感じた。


 天上院咲の黒髪は、そりゃあもう盛大に寝癖で大乱闘していた。

「ウッツ……、しまった、長く寝すぎた……」

 頭痛はない、ただ寝すぎてボーとしている感覚だった。頭がクラクラする感覚だ。

 もう、今が土日祝日なのか、学校はどうしたのか、とか考える余裕すらなかった。

 それどころ(・・・・・)ではない(・・・・)事象が、目の前に見えて広がっていたからだ。


 それでもまずは、とりあえずわけもわからず深呼吸をする。

 テクテク歩いて、ニ階のベランダに出て、本物の太陽を見上げる咲……。

「……眩しい……」

 太陽の熱と光で肌を焼かれる感じがした、気がしただけだが……。

「はあ……疲れた……寝る」

 咲は、VR機器の念の為に電源を完全にオフにしてから、現実の布団の上で、すやすやと休憩惰眠を貪るのだった……。


「スヤア……」

 本当に長い旅の夢を見ていたように、その疲れを回復させるように、ここならもう大丈夫だと、安心して心落ち着かせ、安堵して、眠ることが出来た。

 今度こそ本当に、バタンキューした。


 隣りにいる天上院姫もVR世界からログアウトして、起きた。

「いやー、またやられたな咲、お前は本気の戦いは向いてないなw」

「……うるさい、今回の件に関しては本気で悔しい、エンジョイする間も無かった」

 無自覚エンジョイ対戦じゃなく、自覚ありガチ対戦だった、それだけに悔しい。

 頑張って勝つ事も出来た、その力は確かに咲の手の中にあった。

 自分の手で勝つ事の出来るルートを作り出すことは可能だったはずだ。

 真心もそれを許していたし「勝ってもいいよ」と語りかけていた。

 だが、戦空の所に行くまでに、辿り着くまでに、体力も精神力も、超長期戦で疲れ果てていた。

 それが現実だ、例え持続的に自然回復・再生力を使っていたとしてもだ。


 単純に言うと、体力の限界点を超えていた。ただそれだけ。

 思考停止せず、頭の中をフル回転させて、ようやく辿り着いたルート()

 ここまで桃花先生とかの〈運命の糸〉と言うなの〈(えにし)〉を千切れさせなかっただけでも褒めて欲しいくらいだ……。それくらいに、難解な道だった。


 知ってる人から見たら、バカだアホだと言うかもしれないけれど、咲はその思考の過程全てを、無駄だとは思ってはいない。

 勝負には負けたが、思考を停止させなかった事こそが、彼女にとっての完全勝利だったかもしれない。

 

「……だからこそ、もう大丈夫(・・・・・)じゃ」

 ゲームマスター姫が、負けはしたが咲にその言葉を口にする。

「……」

 咲は返事をしないでふて寝する、無視を決め込む。

 それでもGM姫は続ける。



「言葉では上手く表現出来ないが、お前の完全勝利(・・・・)だよ、知らんけど」



 何故か自然と、そう時間の流れで口にできるほどには、姫は慈愛の微笑みを咲に向けていた。

 その表情を、背を向けていて咲には見えない。

「ふふ、咲……お前の後ろ(・・・・・)には誰がいる(・・・・・・)?」


「……、姫お姉ちゃん……だけじゃない(・・・・・・)……」


「ふふ、それだけ解ってれば十分じゃ、今は休め」

「うん、もう寝るね、お休み」

「ああ、お休み……」

 そうして、咲は微睡みの眠りの中へ落ちていった、いや、夢の中へ溶け込んでいった。

 

 ――今はただ、お休み、天上院咲(てんじょういんさき)――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
・よければブックマーク、評価、感想などよろしくお願いします!
・こちらも観ていって下さるとありがたいです。
名を上げる。ボカロBGM:最終決戦~ファイナルバトル~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ