第651話「結・ここは元の風月の有る空間」★×2
「咲ー! 諦めるなー!」
放課後クラブの仲間、シャンフロが全力全開フォローの声援を送る、咲はそれにより何が起こっても安心できた。それがとっても救いだった。大いに救いだった。
大丈夫だと、心から想えた。
「手助けだったら大いにやるぜー! 任せろー! 今の俺、絶好調だからなー!」
「……、ありがとー! 頼りにしてるー!」
咲は笑顔で右腕を振った。
何はともあれ、だ……。
今ある『月』の位置を自分の手で動かさないと始まらない。
咲は、本当は真昼ノ剣から使いたかったが、時間の流れが悪くなるので、真夜ノ剣から使うことにした。
咲は、左手に持つ真夜ノ剣の氷結状態だった能力を解凍状態にしてから、しっかりと広範囲領域展開する。
「闇に光を、罪に罰を」
ただ、咲は小声でそう言った。
「……やっぱり、立派なラスボスを育てたわね。本当に良い子だわ……」
現在下層地帯、鈴の湯ガーデン観戦席、観客達はこの決闘を見上げていた。
桜愛夜鈴は、咲のやりたいこととを正確に読み取る。天上院姫のゲームプレイングだったらこうは行かない……。自由の悪神は自由すぎるためそんなこと気にしない。
他者のため、皆のため、そして読者のため、仲間のためを思って自分より他者を優先する。良かれと思って。
これにより起こる事象とは即ち。光の雪の開放だった。
そして同時に、夜桜吹雪も自由に舞う。
目視で確認できる全員に、記憶の欠片が当たった……。
「そんなつもりなかったんだけどな。でも立派にラスボスを受け継いでくれた気がする、今ではそう思う」
天上院姫が夜鈴に対して単的に、そう言う。
続いて……。
咲は、ようやくやっと、使いたかった右手に持つ真昼ノ剣を使う。そして、超大規模展開。
「太陽の赤ちゃん」
ただそれだけだった。すると、この空間は晴々とした青天となった。
……雲は少し有る。
気温が急激に乱高下する。つまり寒いと思ったら熱くなった。
一瞬の出来事だった。それこそ刹那だった。
「寒くしたり熱くしたり……料理でもしてるのか?」
信条戦空は、むしろ気にしたほうが良い。とぼけたフリももう限界に近い。
それからようやく本題に入る。
「まずは、どの世界に風移動しても逃がしません! 文法型の心氣! 春夏秋冬斬! 決着はこの場所で必ずつけます!」
油断はしない、念の為に真夜ノ剣と真昼ノ剣、両方両翼ダブルで当てた。
決着を付けたいという気持ちだけは咲にとって、本気だった。
閃光一線、凪斬撃が戦空に当たる、風の妖精、信条戦空は動揺のまま揺れる。
そのれから、その後に。
「お前は立派な神様だ! だけどウチは! 天上院咲を超えて行く!」
自由になった開幕第一声の産声がそれだっただけに締まりが無い。
助けられてからの強がりにしか、咲にとっては聞こえなかった。
一方の鈴の湯ガーデンは、夜鈴と姫がこの一戦の気持ちを言う。
「長期戦になると思う? 短期戦になると思う?」
「咲の気持ちを考えると、長く遊んで欲しいなぁー」
姫は咲の気持ちを汲む……。
まあ場外乱闘で苦労心労したのは想像に難くない。
それから、新しい声を戦空が発する。
「咲、お前とは復讐とか関係無く、正面から戦いたい」
戦空は京都然と言う……そんな言葉無いが……。
「……いきなり成長したわね……」
咲にはそんな風に視えた、だがその突然変異は、この一回だけだろう。
……、ここまでは必然だ。
……やっぱり何回も何度でも有りそうだ……。
「さてと……」
戦空は、そろそろ自由に動いていいだろうと思い轟然と準備運動を初めた。
「ガソリンとタンクは必要か?」
「……、奇跡も偶然も間に合ってます……」
歯切れが悪い会話になった。
「じゃあそろそろ、過去じゃなくて未来に目を向けてもらいます!」
言って、真昼ノ剣を旗のように天に掲げる……、咲の次の一手は。
「花々よ! 返り咲け! スキル〈明日の花達〉!」
地面の大地からしっかり根を下ろした、お花畑が出現する、花が開き、その中心には色取り取りの花、七色、虹色、彩色、地から空へ、下から上へ、大満開のレーザービームが戦空めがけて飛んできた――。
解説役として呼ばれた湘南桃花は解っちゃいるが、ただの人間では出来ない事ばかりだったので、咲の行動力に逆に茫然とする。
「これ、私いる?」
短くも、適切な疑問を呟いて……。天上院姫と桜愛夜鈴が返答する。
「一番目が高いからいる」
「自覚が無かったけど、使えるものは神をも使うデスク人間だからいる」
的確冷静正直な2人のツッコミが隣に居るのに目を合わせずに飛んできた。
「はあ……」
3人とも顔が同じ戦闘風景を向いていた。上下関係がメチャクチャである。
花が天を向いているのに、花が地を見下ろしてるとはこれいかに……。
「これは解説じゃないんだけどさ……さっきからすこぶる体調が悪いんだけど、……これはどうすれば良い……?」
それはそれとして桃花先生が困っていた。
「ん~、スズちゃん達使用人に助けて貰えば?」
「ん~、いつかはお見舞いに行ってあげるから、ちょっと今いい所だから我慢して」
我慢して良いことがあった試しがないのに、桃花の件は後回しにされた。
「ソンナー」
ある意味いつも通りの日常と化していた――。




