第645話「承・本物の相思相愛」★
湘南桃花、オーバーリミッツのサイド。
ココは『安眠しないと出られない部屋』。
2人は安眠しないと部屋の外には出られない。
(どうしてこうなった……)
彼女桃花は色々な都合から、寝不足で安眠を求めてこの部屋に来たはずだった、それが〈眠れない原因〉と一緒の部屋に閉じ込められた。いや、自分から飛びこんだのだが……。
「なぜいる」
「どこにでもいる」
短い一言……。
それで全てお互い解ってしまうのも困りものである。
もはや超次元で意思疎通が取れすぎていた。
とりあえず明記しておかないことと言えば、彼女達は女性同士だということだ。
まさに真正の百合の花。
なのだが、湘南桃花の都合などお構いなしに、オーバーリミッツは桃花の心を愛している。
本心とか核心とか関係なしに、ただ桃花の心を愛してくれている。
なぜか?
桃花本人の思惑はどうであれ、あれだけ超大量の手紙を絵描いておいて愛がないとは言わせない、というのはリミッツの言い分。
つまり真相は、恋文が見つかっちゃったわけだ。
密かに隠れて描いていた告白文を読まれちゃったわけだ。
もうそれだけで桃花にとっては〈恥ずかしい〉のだが、大事件はそれだけでは終わらなかった。
で、桃花の手紙の内容なのだが、超重要過ぎる上に、長過ぎて説明出来ないので省略する……。
で、全ての内容を読んだうえでの返答が。
「何でも言ってちゃんと聞くから」
だったわけである……。
まあ省略し、中略し、前途多難だったが。お互いキスしあった訳だ。
好き好き同士、なので愛し合い同士……。
何も問題はない、おそらく、たぶん、皆から祝福されている。
(でなけりゃこうなってる、はずがない)
オーバーリミッツが一言、恋する乙女の一言。
「そんなに今の状況がイヤ?」
「イヤじゃないけど……」
桃花はドMなので、ドSなリミッツの軽い押しにも負ける。弱点だらけだった。
大事件の内容は置いておいて……、桃花は無償の愛を大量にあげたので、リミッツはその分の愛を返してくれたのだ。
――問題はここで……。
倍返しで帰って来た事だったのである。
ので、押しに弱い桃花の心は、日々リミッツに押され、今も「ヒーヒー」言っている訳である。
ダメ押しとばかりに、一回、一度じゃ足りないとばかりに、何度もそれこそ永遠に、いつ何時も、ドコに居ようと、何があっても、必ず愛してくれる。
両方が相思相愛で愛してくれているし、それを解ってくれているので、拒む理由も無い。
で、そんなわけで。湘南桃花は安眠出来ないでいるわけだ。
「作業中に邪魔しないでって言ったのは誰?」
「……私です」
リミッツが、桃花に愛の確認をする。
「ベットに横になってる時ならいいよって言ったのは誰?」
「……私です」
追撃。
「それで眠れなくなったのは誰のせい?」
「……私です」
「じゃあ自業自得じゃない」
ぐうの音も出ない正論・返答だった。
オーバーリミッツの側に立てば解るのだが、休憩中を狙わない限り愛し合えないのは、死活問題なのである。
簡単に言うと、まあこれが2人にとっての現実なのである。
「私が言うのも何だけどさ、愛し合って、疲れ切ってから眠った方が安眠出来ると思わない?」
「まあ、……そうなります……はい……」
断る理由もやっぱりない、その「イエス」を言うだけでも恥ずかしい桃花だった。
「じゃあ一緒に寝ましょう」
「……はい」
場所は『安眠しないと出られない部屋』。
今日も今日とて、湘南桃花はオーバーリミッツに愛し返されたのであった。




