第634話「転・FX戦士咲ちゃん」
見知らぬ女子同級生と咲は通学路を歩いていた。
咲は、スマホを片手に持って為替変動を視ている、簡単に言うと自分のお金を視ている。賭け金の変動だ。
「なにそれ? FXってやつ?」
「うん、為替ってやつ。お姉ちゃんと桃花先生ののデジタル日本円〈M〉は手伝えないからさ~。せめてトレードの勉強ってことで、為替に手を出してみた、米ドル/円を少額から学んでみてるの~」
同級生はそれがギャンブルだとは思っている。
「へー良く判んないけど、どうなの? 勝った? 負けた?」
「いやー、それが……。2万円賭けて、1200円負けたよ~。アメリカに持っていかれたw」
「……それ笑っていいのかわからない判断材料だね……。総資産がいくらかで笑っていいかが変わるね」
「今はセミプロのゲーマー兼神様だけど。ネットの中にブチ込んでいる総資産は3万円だね、FX始めて、デモトレも一回やってからの損切りだから、……まあ変な負け方はしなかったかな。ただ、日銀の期待感に張ってたら、皆の肩透かし食らって一気にマイナス1000円持ってかれたっていうw」
「じゃあ日銀の期待外れってことじゃんw」
「いや~、……そうとも言えないんだよね~。ニュースだと〈一段落ついた〉って文言だったから。私と戦空の場外乱闘の喧嘩に決着ついたって意味だから……一周回って自分が一段落して損したって言う意味わからない結果に……」
同級生はわけがわからなそうな顔をした。
「……つまりどういうことだってばよ?」
「つまり、バカみたいに賭け金レートを高くしなければ。子供並みの賭け事は出来るってこと、なのかな。次は〈自動買取〉ってやつ実験で試してみてる」
「それって何が利点なの?」
「自分が寝て起きて、学校へ行って学業してても。取引が出来るってことかな。設定上は寝て起きたら±700円予想、つまり、700円増えてるか減ってるかのビックリ箱大会だね。ドルはアメリカだから、深夜のほうがお金の動きが活発っぽい。コッチは日本だしね。コッチが夜だと向こうは昼だ」
「地球の反対側か~、こりゃ一筋縄じゃいかなさそうだね~」
「うん、だね~。でも今までゼロか、ご飯食べてマイナスだったのが、プラスになる、〈利益が出る〉ってのはやっぱ今までから考えると革命的かな~」
「ほうほう」
「まあ、そんな感じ~、少しずつ覚えていくよ~」
「ほいよ~」
「で、Mの方はどうなってるの?」
「そっちは調整中かな。何か話によると、アメリカ、ロシア、中国のトップがMを欲しがってるとか~」
「Mって絶対量3000Mでしょ? めっちゃ価格高騰、いや、爆騰しそうなんですけど~?」
「まあ、日本もいるし、穏便に4等分1国750Mを分け与える……って展開にはならないだろうねえ~~~~それだけは確信を持って言える」
「何で?」
咲は同級生に指を一本建てながら解説する。
「BIG4の4チームにも均等に分けないといけないから。仮想プレイヤーで4等分、現実プレイヤーに4等分で、8等分、375Mだと平等だけど、国連も居るし、ゲームマスターや運営陣が持っておかなきゃ、権力としても……とか軽く考えても……まあ簡単じゃないだろうね~」
「それで物々交換と通貨交換でしょ? どうやるんだろう?」
「そんなのコッチが知りたいよ」
◇
BIG4で4チーム。日本・アメリカ・ロシア・中国。国連とゲームマスターと運営陣……。
軽く考えるだけで、3000Mを11等分平等だったとしても、273.72Mの分割量となる。
更に、例えば放課後クラブだけでも13人は居る。273.72Mを平等に13分割すると……。21.05Mとなる。Sランクのトッププレイヤー1人に対して分け与えられる報酬兼権力が、21M……少ない……。しかも平等に割った状態だ、そんな簡単に割り切れるもんだとは、正直今の咲には思えなかった。
そして場面は変わって、GM姫と桃花先生と軍勢トップ和季と四重奏のリーダーである双矢。
日本・アメリカ・ロシア・中国・国連・運営陣、そのトップ達。
ここに、権力と経済力の象徴たる……。
【国際通貨M覇権争い】と言う名の会議が始まった。




