第631話「結・デジタル日本国家紙幣『M』」
現実世界、西暦2037年10月2日、午前中、お昼ご飯。
現実世界の神様問題がここに1つあった。
魔法科学高等学校で咲と姫は談笑したいた、が、内容はすこぶる物騒である。
「仮想通貨『M』?」
「違う違う、〈デジタル人民元〉みたいな、仮想通貨とは違う。今じゃ国連や日本国ごと動かせるじゃん? 〈現実実現の力〉で、……てことは、〈神の権能〉を使えば、紙幣も硬貨も作れるんだよ」
「つまり?」
「通貨も違うな……アレは法貨だし……、つまりやろうと思えば、金融政策・日銀や政府使って国家プロジェクトで〈デジタル紙幣〉作れるんだよ……」
「つまり、国家主動の〈日本国デジタル紙幣『M』〉ってこと」
「はあ……」
咲は、姉がやりたいことがいまいちピンとこない。
「紙幣の物価変動は止まらない、止められない。それを〈自然放置〉は出来ないからコントロールしたいってこと。あ……、ある程度ね」
「行き過ぎを止めさせたり、鈍化を活性化させたりって意味かな?」
「そうそう」
「桃花先生の体のピクピク・異常は完治に向かいつつある。〝絶〟のコントロール然り、ゲートのコントロール然り、視覚できない概念のコントロール然り、心と体の乖離は何とかなりそうな変化は出てきている」
「はあ」
咲はカシューナッツをポリポリ食べながら聞く。
「年収の壁も、議論が進んでるから今後何らかの形で解消される未来は容易に想像がつく。桃花の時給も上がって、桃花が腹いっぱいメシを食える世界も目と鼻の先だ。現に今、体重増えてるしな」
「そんな簡単じゃないと思うけどな」
「となってくると、儂らの目下課題は。止まらない金融市場のコントロールだ。金は人が動かす、コミュニケーションな以上〝人〟だ。信仰によって変化出来るだろう。仮想通貨だって元々わしらがコントロールしてたかも怪しい」
「ノータッチだし無知だもんね、アレ」
「それに仮想世界・仮想通貨だけの問題にしちゃ根が深すぎる。あれ2009年に〈ビットコイン〉出来たから結局、湘南桃花の関係だろ?」
そこは否定できない、というか関係大アリだろう。……たぶん。
「そんな良くわからないものより、現実世界で経験値積んで言語化出来て、世の中よく解ってる今の創造神がちゃんと『M』っていうデジタル国家紙幣作って運用したほうが良くないか? って話だ」
「でなきゃ全貌が解らなくてコントロール出来ない?」
「そう」
姫の右手がピクリと動いた。
「……、オーバーリミッツも賛成してくれてそうだな」
「あららマジか本気か、じゃあ作っちゃう? 〈デジタル日本国家紙幣『M』〉を……」
「まあ作りたいのは山々なんじゃが、てかその相談なんじゃが。これからは金とドルの交換だよね~。を、これからは金とMの交換だよね~に変えないといけない」
「うは! 先が長そうな話だ」
「デジタル人民元は出来てるんだから、たぶん中国のお手本をなぞれば実現可能なはずだ。島国だしな日本は」
問題は何と何を等価・変動とするのか、だ……。
「そもそも、金と円の相場もイマイチピンと来ないし、ドルだってわからん」
「そのMを使えば、うまい棒も食べれるの?」
「わからん、……だが。神の信仰? 権能を使えばそっち方向に舵を切る事は出来るはずだ」
「……なるほどねえ~……」
「を、家族の善神、咲にも了承もらおうと思ってな。OK貰えたら次の日本国会で議論だな」
何か、現実世界なのに私達らしい未知への冒険だなと思っった。
「ん、良いんじゃない」
「じゃあこの話を。現・総理。今泉善次郎に提案を持ち込む。この話はその反応次第かな」
「まあ、自然放置じゃ動きづらい、ってのはよ~くわかったわ」
そんな学校のお昼ご飯中の会話劇だった。




