第628話「起・秘銀霊刀『神滅ぼし』」
放課後から、3時間後……。
「……、遅い……買って装備するだけなのに何やってるんだ」
「ゼー! お待たせなのじゃ! やー何とか今日中に終わった!」
「終わった? まだ始まっても無いんですけど? てかもう夜だし……」
「実はカクカクシカジカで……」
「いや分かんないって……」
で、姫は咲に忍刀の成り行きを間接的に説明した。
「くまモンさんに会ってきた?」
ジョブ勢であるくまモンにかかれば、武器調達もおちゃのこさいさいなのだろう。
ただ、こだわりが強すぎたようで……。1から作らされたらしい。
「で、採掘師と鍛冶師にジョブチェンジして、〈神霊銀鉱〉っていう石っころから〈ミスリルインゴット〉作って、そこから更に、秘銀霊刀『神滅ぼし』って忍刀を作った」
「へー、珍しく石探しから初めたんだ~」
咲も、流石に材料と言う名の石探しからはやったことがない。完全にクラフトの領域だ。
「経緯を色々省略したが、時間があれば後で話す。そんなことより試し切りだ!」
というわけで。
姫は、2本の忍刀。秘銀霊刀『神滅ぼし』を構えて臨戦態勢に入った。
《それではPVP戦、スタートします!》
瞬速――、姫は咲の間合いに入り込み、懐にタゲを当てる。
咲の〈真昼ノ剣〉が〈神滅ぼし〉と刃と刃を合わせ、ガキンと歯音を響かせた。
威力や性能は互角に視えた、だが――。
「霊撃は二度来る!」
姫の秘銀霊刀は一振りで2度のヒット数を稼ぎ、更に通常の剣、即ち真昼ノ剣をすり抜けた!
「クッ……!」
一振りで2連撃、二振りで4連撃の物理と特殊の二連撃が咲を襲い。
咲に霊撃斬による激痛が走る! 神殺しの名は伊達ではない。
「この、秘銀霊刀『神滅ぼし』は、装備した時、自身の〈神の加護〉でさえも討ち滅ぼすというデメリットの代わりに。攻撃に成功した時、相手の〈神の加護〉を問答無用で討ち滅ぼすメリットがある! つまり、両者バフが封じられる形となる!」
一見両者〈神の加護〉を封じられるだけで、互角に観えるかもしれないが。本命は不可視、不回避不可能な貫通攻撃が2回も霊刀として襲ってくる事である。
コレにより、姫は〈自由の悪神〉の加護を使えない状態から戦闘が始まり。
攻撃をヒットさせたことを条件に、咲の〈家族の善神〉の加護効果も消え失せる。
「こんの!」
咲の真夜ノ剣が一閃を斬る。
「パリィ! からの霊斬撃!」
姫は小刀一振りでパリィに成功し、その一振りで更に霊斬撃が飛んで来て咲にダメージを与える。
合計4連撃を防ぐ術は咲にはない。姫は身を低くして構える。
「……、速いがこれで決着だ! せい!」
咲と姫の2本と2本の剣が交差したその時。奇跡が起きた、否、起こした。
今の今まで、長い間ダンマリだった。真昼ノ剣と真夜ノ剣の魂、シアンとマゼンタ、、即ちソウルが姫の二本の霊斬撃を受け止めた!
「……な!? ……ふ、ここで目覚めるか……!」
「縦横無尽に駆け回り飛ぶ魂、シアンとマゼンタは言う」
『やれやれ、ようやく出番か。言っとくが俺は魂でも二刀流だぜ?』
『君達姉妹は何でも1人で片付けようとし過ぎだ、ちなみに私の魂はタンクだ』
姫の武器パワーアップイベントのはずが、いつの間にか咲の武器パワーアップイベントにもなっていた。
これで姫の防御手段は〈パリィ〉〈アジャストパリィ〉、攻撃手段は神滅ぼしによる4連撃攻撃、変化技で〈煙玉〉〈モルボルの毒袋〉と言った所だろう。
戦いが更にヒートアップ思想な所で時間切れとなった。
《タイムアップです、就寝時間なので寝てください》
「むう、良いところだったのに」
「しょうがないよ、明日の学校に支障をきたすわけには行かないし」
というわけで、クライマックスは次の機会に取っておこうという風になった。
《タイムアップ、勝敗ドロー! ログアウトします、お疲れ様でした》
この一戦は、後に動画配信され掲示板を大いに賑わせたとか。
◇
掲示板
【この一戦だけで出てきた、新しい単語、〈採掘師〉〈鍛冶師〉〈くまモン〉〈神霊銀鉱〉〈ミスリルインゴット〉〈秘銀霊刀『神滅ぼし』〉】
【詳細◇「この、秘銀霊刀『神滅ぼし』は、装備した時、自身の〈神の加護〉でさえも討ち滅ぼすというデメリットの代わりに。攻撃に成功した時、相手の〈神の加護〉を問答無用で討ち滅ぼすメリットがある。両者バフが封じられる形となる。一見両者〈神の加護〉を封じられるだけで、互角に観えるかもしれないが。本命は不可視、不回避不可能な貫通攻撃が2回も霊刀として襲ってくる事である】
【つまり二振りで四度美味しい?】
【情報が、情報密度が多すぎる……】
【くまモン影武者って噂だぞ? じゃあ本体はドコに?】
【真相は闇の中】
【そもそも、神の加護受けてた姉妹だが、その権能内容がわからない件について】
【まあ、一瞬で出して良い情報密度じゃないな~って】
【咲ちゃんの剣も覚醒した!?】
【姉妹とも逞しく育っちゃって……! おじちゃん嬉しいぞ!】




