第627話「結・リュビアー大陸の冒険」★×2
現実世界、西暦2037年10月1日。
《過去ログのデータ結合が終わりました、引き続きEWをお楽しみください》
仮想世界、リュビアー大陸、戦乱都市アスカ、闘技場。
久しぶりのPVP戦、咲VS姫のマッチングが組まれた。
「良いの? 悠長に戦闘初めちゃうことになるけど」
「なに、現実は今泉親子が何とかやってくれるじゃろう、それに本気でヤバかったら今泉家からアポイントメントを取ってくれと言ったしな」
〈ジョブ勢〉の〈くまモン〉の件についてはとりあえず後回しになった。
こちらの理由は現在差し迫ってないから。
現・内閣総理大臣、今泉善次郎。放課後クラブの6番目メンバー、今泉速人。
2人とも政府側の人間だ、とは言え、何も用事がないのにコッチからああだこうだとイチャモンや文句を言うのも違うし。政治界の討論の自由度を下げるのも避けたいし、そもそも畑違いだし……。あと姫の地位・権威的にはアメリカとロシアの頂と対話するのが、今までの感じ的に多分正しいんだろうな、と、肌感覚で解ったので。
世界規模の面倒な話以外コッチに流さないで欲しい、と釘を打った。
よって、今の姫は世界情勢は後回しにし、仮想世界のゲームマスターとして。
エレメンタルワールド4のバージョンアップの最終調整をしたいので、今の咲に1対1のPVP戦を持ちかけた。
余談だが、エレメンタルワールド4ではなくてエレメンタルワールド・バージョン4の方が正しいのではないかと? などの調整も検討中……。
湘南桃花の父親の死。そして転生した湘南四空の記憶……。
後回しにしちゃいけない事は色々あるが、過去のこと、ケジメはケジメ。決着はついた。運命は自分の手で変えられる、それさえ判ればあとは自分の〝心氣〟との相談と、〝選択〟を変に間違えなければ、地球は正しく廻るはず……。
そんな事もろもろもありながら、ここらでピリリと香辛料的なスパイスでも小粒に振りかけよう、そんなタイミングとなった……。
舞台は登山が有名な、山頂の戦国城塞都市。戦乱都市アスカの〈闘技場〉、えらい遠回りをした気がするが。
たぶん、漫画的にデート戦争を完成させるよりも。Sランクのギルド抗争で誰がトップに君臨するかよりも。
この〝EW世界一周〟することが、たぶん、桃花の父親は喜ぶんじゃないかな?
と、咲は勝手に思っていて。この世界を一周することが、何よりも、咲なりのケジメになると思っているからだった。
過去を視ずに未来を想う。
明るい未来を亡くなった人の分も明るく照らす。
自分に出来る、より良くなる未来。
先に進むと咲は決めた。
だから、未開の地はどっちになる? 方向方角は? と聞かれたら、リュビアー大陸の冒険こそが、咲の咲なりの、サブマスターとしてではない。プレイヤーとしての道だと思ったからこの地に下り立った。
「用意はいいの? お姉ちゃん、私は大丈夫」
咲は真昼ノ剣と真夜ノ剣の二刀流、片手剣を左右に構えた。
「ん~~~~、そうだなあ~~~~。わしもいつまでもナマクラの忍刀一本で咲と打ち合うのも違うかな~。じゃあ、咲はこの闘技場で待っててくれ! わしもこの都市で忍刀一本揃える!」
2人の旅は急いでいない、攻略組とは違う、エンジョイ勢なのだから。
「ん、わかった」
咲は姫の為に待つと決めた。咲は座して待つ。
姫は咲を背に、戦乱都市アスカの中を忍刀を求めて走り出した。
リュビアー大陸自体に高低差があり、上へ下への大騒ぎになるのがこのエリアだ。山岳地帯のこの城塞都市は鉱山採掘が盛んである。故に何か視たことのない〈鉄鉱石〉なんかも街の中でも普通に転がっている。他の街だとレア石なのにだ。
山の高度は高く、草花は少ないが、それでも魅力的なレア石・鉄、が売っている。
問題なのはその加工方法とかだろう。
自分の作った世界なのに広すぎて細かな世界を把握出来ていない、なんてのは姫にとっては良くある話。目ぼしい石は見つけたので、今度は加工方法を探して練り歩く姫の姿があった。戦乱都市アスカ産の〈鉄の材料〉、一体どんな武器に仕上がるのだろうか。




