第614話「転・アナザー放課後クラブ」★
この世界で死んだら現実世界でも死ぬ……ただ2人を除いては。
『脱出する方法はただ一つ、このゲームをクリアすれば良い。ただし、10個の街の10匹のボスモンスターを倒せれば……だ!』
一目散にギルド放課後クラブのある方向へ、地図アリで向かって行ったチート姉妹は最初の難関……。街の外へ出ようとしたその時……!
街の中でタゲ……つまりボスモンスターにターゲットにされた。
《世界観スキャン開始、トレース可能、ダウンロード開始、アナザー設定可能、第1の街のボスモンスターにソウルコンバートしますか? ――はい。》
咲と姫がそれこそ悲鳴をあげる。
「何あのデカイモンスター……! もしかしてうっぴー!? 1周目と全然違うじゃない!?」
「巨大化して1周目の世界観を吸収したボスモンスターうっぴーだ! って体力ゲージ観てみろ……!」
戦闘慣れした咲は瞬時に兎型の巨大ボスモンスター、うっぴーだったものを凝視する……。シュバババっとHPゲージが流れて表示されてゆく、HPゲージ1本、2本、3本、いや……それどころではない……!
名前、アナザー放課後クラブ。
姿形、兎型巨大ボスモンスター。
【HPゲージ】
1本目、湘南四空。
2本目、シャンフロ。
3本目、シアン。
4本目、マゼンタ。
5本目、流水寺導。
6本目、飛焔。
7本目、天命アリス=スズ。
8本目、今泉速人。
9本目、桜愛蒼葉。
10本目、遊牧生。
11本目、近衛遊歩。
12本目、天上院姫。
13本目、天上院咲。
「これって……!」
「あぁ、そのまさかだろうな!」
『うざあああああああああああ!』
兎の鳴き声が咆哮する。
今までと緊張感が全然違う、プレイヤーは一度でもHPを0になったら死ぬ。
変えが効かない仲間達、変えが効くのはログアウト出来る天上院姉妹だけ。
2人は死んでも生き返られる、だが他のプレイヤーは違う!
「まず街中でポップしたぞ!? 安全地帯はどこだ!?」
「アナザー咲なら戦ったことあるよ!? でもギルド全員のアナザーは初めてだし、何より守るものが多すぎる!」
『うざあああああああああああ!』
《アナザー放課後クラブのスキル『輪廻転生』が発動しました!》
「う、うわあああああ!?」
何処かの誰かのプレイヤーが1人命を落とした、代わりに『アナザーうっぴー』が街中に1匹ポップアップした。
このままじゃヤバい、被害が拡大する!
「今のって湘南四空くんの生い立ち……!?」
「ウダウダ言ってられないな! ゲージ一本目! さっさと削るぞ! わしがパリィしまくるから! その間に攻撃しまくれ!」
「解った!」
『うざあああああああああああ!』
巨大兎の連打攻撃、我武者羅で的を得ないので、姫にとって、パリィするのは容易かった。
――咲の攻撃、〈森羅万象のワルツ〉の連撃攻撃、攻撃力こそレベルリセットで1に戻ってしまったが、着実に効いている……!
――アッと言う間に、一本目のゲージを削り終わった。
――2本目、シャンフロのHPゲージに入った所で……。
パリィ!
天上院姫とは違う、本物のシャンフロが最前線にやってきた。だが、このプレイヤーは、死んだら死ぬ、生き返らない。
ベテランプレイヤーシャンフロ、1周目の放課後クラブの仲間……。
「ベータとの違いは!?」
ここで1周目とか2周目とか仲間のシャンフロに言っても仕方ない。
「姫お姉ちゃんがタンクだと思って後ろに陣取って!」
「私達2人だけは何度も蘇生出来る駒だと思って使って!?」
「はぁ!? それってどういう……」
「説明はあと! 今は、2本目のHPゲージはシャンフロと同じ行動パターンをする! 以上!」
「はぁ!? 何で俺の行動パターン……!? ……まあよく解ったよ! 神ゲーって事がなぁー! 要するに俺の弱点を俺が突けば良いんだろ!?」
巨大兎の連続パリィ! 咲の森羅万象のワルツのスキルが急に効かなくなった!
「頭パリィ!? そんなの私知らない……!? グホワ!?」
「咲!? ック!」
巨大兎のパリィ精度と攻撃の無駄が極限まで削ぎ落とされた洗練された太刀筋に変化した……。プロ顔負け……否、プロ級の戦闘能力だった。
「上半身だけを狙え! それ以外はパリィされると思え!」
本物のシャンフロが言う、タゲはずっと天上院姫にかかっていて、姫は手が離せない。
「咲! 今のうちに背中を狙え!」
「了解!」
咲はグルリと一周して、背中を狙って攻撃し始めた!
――咲の森羅万象のワルツの連続攻撃! アナザー放課後クラブにヒット!
「効いた!」
攻撃を受けたボス兎は一瞬目を咲の方へ向けたが、……すぐに姫にタゲを戻して姫とパリィ合戦を初めた。
「へ? 攻撃したのに私にタゲが来ない……」
「攻略の鍵は姫を倒すこと、そう俺兎が思ったんだろ!?」
シャンフロが咲に対して言う、傍ら姫は苦しそうだ……。
「こいつ……強い……!」




