第609話「承・現実実現の力2024」
2024年8月22日、11時00分、神保町。
神道社、週刊少年ジャック打ち合わせ室。ここで、本物、双矢鏡がジャック編集部と打ち合わせをするとキャッチした。
「まだ打ち合わせ決まってないんでしょ? ドタキャンする未来だって……」
「過去の意志は嘘では欺けない、ってね。相手が宇宙人、未来人、超能力者だろうと、もうビビらないし恐れないさ。……緊張はするだろうけどね」
聞く所に寄ると、双矢は打ち合わせの電話の時、手が震えてたそうな。これじゃ面と向かって話せただけでも大成功と思わなければ損だろう。
「で、向こう側は、編集者に任せるとして、こっちは何するのよ?」
「まー現実実現の力が有ると解った以上、何か実験したいよな……。じゃあバックトゥーザナランチャするか?」
「?」
ここだ、この分岐点で双矢鏡の未来が変わる。編集者が名刺を渡すかどうかは編集者の判断に委ねる、そこの分岐点は白紙、だが。双矢鏡はこのタイミングで初手で必ず名刺を渡す……! 厳密には去年? あたりのコミティアでも渡したが……。
「こっち側の私達は、その〈双矢の名刺〉をコピーさせない。ってミッショにしよう……!(今考えた顔」
「?」
「こういう〈現実実現のシナリオ〉はどうじゃ? えーオホン! ジャック編集部に直接面談で持ち込みしてきた、双矢鏡、何も知らずに担当編集に名刺を渡す。だが、その名刺をあの敵役! 〈シークレット〉がコピーして他の編集者にバラ撒いた事によって、特異点が発生! シークレットは変異体を増殖させて大量のマルチバースが発生……! 結果的に大勢になるカ○ン体の分岐イベントはこの名刺から始まった! ……みたいな」
取ってつけたような内容だが、最初は往々にしてそんなもんだ。
「つまり、〈双矢の名刺〉に何もさせないってのが、今回のミッション?」
「まあ、正確に言うと。担当編集者以外の人物に誰にもその名刺を触らせない、がミッションになるかな」
《分岐点が発生しました、セーブします。》
「〈双矢の名刺〉を1日、誰かに触らせない。それが正規版のアース018です、って認識で合ってる?」
「合ってる」
「編集者が〈双矢の名刺〉を誰かに触らせちゃった場合は?」
「アース616に飛ぶ、変異体が増殖したお誂え向きな敵が居る世界線だな」
「〈双矢の名刺〉の現物をシュレッダーで破棄した場合は?」
「破棄した場合は無くなっちゃうから~白紙になるな。〈見事の世界線〉に行くんじゃないか? アース番号知らないけど、まーウチ等から観たらバッドエンド。未来は変えられなかった」
「え、あたし達未来を変えに来たの?」
「双矢は変えたい、シークレットは増やしたい、編集者は面白くしたい、アベンジャーズは倒すべき敵を倒したい、私達は未来を創りたい。そんな思惑・ゲームかな」
と、一泊神道社のお茶をすすりながら……。
「まあ、今までは双方、解らない&解らないだったけど。今度は解ってる&解ってる同士の打ち合わせだ。編集者も変わってるし、運命も変わる。名前も覚えたし書いた、また雑誌に載るかもな~……」
「ほほー……」
「まあ、打ち合わせ内容で、今後の原作ネーム進行はどうするのか。漫画的な意味で。今後はアナログなのかデジタルなのかでかな~り未来変わって来そうじゃが、政治的な意味で。そこは私達の領域ではない、彼らに任せよう」
「はぁ……」
「てー事を、この時代の湘南桃花と秘十席群に伝えたから。私達はもう帰るぞ」
「え!? じゃ私達説明だけして帰るの?!」
「適材適所ってあるじゃろ? 今の時代の人間が今を何とかする。当たり前だろ?」
「じゃあ私達はもうそろそろ2037年へ?」
「じゃな、長居し過ぎた。リスみたいにカシューナッツ食ってても仕方ない。もう帰ろう、自分達の時代へ」
「まあ、そうだね。うだうだカシューナッツ食ってても仕方ない。伝えるべき事を伝えたなら。あとはもう帰ろう」
そう、街なかの喧騒に声をかき消されながら、2人は平然と消えた。




