第608話「起・希望のカケラ2024」★×2
異世界ファンタジーな地図が出来上がったのに、申し訳ないが、今回の本題はソコじゃない。
「……なるほどね」
ゲームマスター姫はまた知ったかぶる。
「お姉ちゃん、今度は何が解ったの?」
サブゲームマスターは呆れてものも言えない。
「まあ? 色々と突っ込みどころはあれど、つまり全て正しく回ってた事さ」
結論からすっ飛ばして言うと、湘南桃花の時系列はありがたい。何しろ不可逆的で時間の加速・減速も、ついでに魔法も無いからだ。彼女の体内時計カッコ宇宙時計はは、ただ全てが等しく同じ速度で時計の針を刻むからだ。その代償として、彼女自身は過去には戻れないが……。
何にしても他者にとって計算しやすく、またスパゲッティも直線定規に戻った。……と言った風だろう。
「それ、説明になってないんだけど……?」
「つまりだ、夢は叶う! と信じられていれば、この問題はすぐに解決出来ていたってわけさ!」
「順番に説明しろ!」
「順番にか……、しょうがない。隠してもしょうがないし、そろそろネタバレしようかな」
そう言って、天上院姫は時系列表をエクセルで書いた表を咲に見せる。
まず、咲の目を引いたのは「創造歴?」という単語だった。
「そうだな、まずこの世界は本物であって本物じゃない、SFである以上、限りなく現実に近い近未来で構成されている」
それの何がいけないのだろうか……? と咲は首を傾げる。
「またメタ発言?」
「したくてしてるんじゃない。皆がこの設定を頼りにしてるから、説明してるだけだ、だから説明せざるおえない」
「ちなみに聞くけど、皆って誰?」
「メタ世界の住人、観測者、または読者かな」
ネタバレなので何も隠さない姫。
「説明①! 湘南桃花の時系列は観測者の時系列! よって! ゲームマスターが今は2037年です、とか今は1881年の異世界です。とか言っても、今この時間! つまり、2024年の体内時計を彼女は刻んでいる! これがドラマや実写映画にはめっぽう強い!」
説明を要求したら、メタ世界の世界観設定をし始めてしまった姫。
「説明②! 方や、神の私や咲、主人公属性の信条戦空や日曜双矢でさえも、フィクションだと思ってるので、時系列が作品世界の時系列になる!」
物語って普通そうじゃないの? と咲は疑問に思う。
「そう、説明①の方が異常なんじゃ、だからこれはボツ設定! なのに何故か皆がその設定を使ってしまった! これが説明②!」
物語に読者を没入感で浸すには、本来、現実とは切り離して考えるものだ。普通はそうなるはずなのだ……。こうやって聞くと、「何だやっぱりお前等のせいじゃん!」と思ってしまうのは咲だけだろうか? こっちはフィクションを書きたいのに世の中がそうさせてくれない……みたいな。
「まあそこは長所と短所があるということで……次!」
ということで説明③だ。
「説明③! その上で、私は約3歳の頃、自分に過去・未来改変どころか、現実実現の創造の力が有ることを。2024年に自覚した!」
フィクションだから出来ることなのだが、それはそれでマズイんじゃないか? と咲は思うが……。
「3歳の姫と16歳の姫が同期してるの? 今一緒の情報を統合して思念体で共有してるみたいな……?」
「そうだバブウ!」
取ってつけたように言う姫。もはや精神年齢合計何歳か判らん。
「で、説明④! 3歳の姫は、36歳桃花に〈今、あなたの脳内に直接語りかけています〉をやって〈お、おう〉と会話成立! 助言として、〈未来は空白の自由の方が良いぜ、少なくともギルド四重奏は〉と助言をもらう!」
「それは果たして会話成立してるのかい?」
「で! 説明⑤! 2037年のフィクションの私は、咲に対してそれを説明してるって流れだい!」
3歳児の姫が得た情報と、16歳児の姫の情報を共有して、それを情報だけ咲に説明したって話なわけだ。
「理解できたかな!?」
「まあ過去がややこしいってことは解った」
「未来もややこしいがな! だから桃花が重宝される! で今の私は簡単に言うと〈現実実現の力〉を自覚した! ってー流れなわけさ!」
「へー、その力で何するの?」
「それをこれから咲と一緒に考える!」
「おい!」
ツッコミどころ満載なサイエンティストだった。




