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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
EX第3章「第三回EM戦争」西暦2037年9月1日

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番外編55「黙祷と四空」

 西暦2037年8月27日、昼間、〈ニューヨーク〉。

 

 から、量子物理学的なタイムマシンを使って。

 西暦2024年4月21日、日本国、北九京都へ。

 

 ここで、国連の指揮下の元、細々と湘南桃花の父親は息を引き取った……。

 

 午前XX時XX分、御臨終です……。

 


 ここに、

 ギルド、四重奏、神聖12星座、放課後クラブ、非理法権天、最果ての軍勢は確かにいた……。

 

 悔やむ気持ちは勿論あるが、やれるべきことはやった、という自負はある、重い重い自負が……。そして次の争いの始まりでもあるだろう……。

 だが、ことここでは、不謹慎かつ善も悪も超越した、等しく平等に〈嘆く〉権利が与えられていた……。

 

 桃花の父親が残してくれたのは何だろう、……と数える……。

 家が1つ、建築の屋根が1つ、子供が2人、……この場合湘南桃花と湘南桜がソレに当たる。

 土地が1つに、そして、数々の感情を与えてくれた自分達がいる……。

 皆、皆、まさに体の一部だった……。

 

 ゲームや遊戯である以上、争いは起こる。

 だが、ことこの時この時間は。サッカーなどのスポーツゲームをする前の、確かな静けさがあった。

 

《――黙祷(もくとう)


 長い、思い出と沈黙が場を支配する……。

 誰も喋らず、口を挟まず、邪魔もしない。

 ココにはヒーローもヴィランもない。

 この時、皮肉にも、皆の心は1つだった。

 

「どうかこの人を天国へ送って下さい」


 その一念、たったその一念だけの祈りで、世界は確かに平和に成れた。

 

 念じて、祈って、お願いして、悔やむ……。

 

 世界の人が平等に持つ権利、人生で一度きりの〈死〉という体験を、ここに、皆が共有した。

 

 天上院咲にだって勿論、後悔の無念はある。

 家族の善神なのに、家族を長生きさせられなかったのか? とか。

 家族の善神なのに、最善の最高のエンディングに出来ただろうか? とか。

 家族の善神なのに、ゴハンを食べさせられなかったのだろうか? とか。

 そして、

 家族の善神なのに、家族の死を受け入れて良いのだろうか? とか。

 

 咲と姫が無言でイスに腰掛けて居るところに、自然と湘南桃花が現れた。

「おとなり、いい」

「……どうぞ」

 咲の家族の善神としての落ち込みと涙は本物だった。家族というものを守れなかった、あるいは抗えない寿命と言うものの死は無く、あるいは永遠に人は行き続けられるものだと信じていたのかもしれない……。

 

「結局さ、お金が無かったんだよね……、そのせいでお婆ちゃんの時とは違って、子じんまりとした葬式になっちゃった……」

「それは、……桃花さんのせいじゃないです」

「……ん、ありがと。でもね、考えちゃうんだ……」

「何をですか?」

「ユウキって子がいたじゃん? SAOのユウキちゃん、あの時は盛大にリアルでも人々が集まってくれたけど。……、お金は200万円じゃ足らなかっただろうなあ~って、家族が稼いでくれてなかったら、あんな葬式は出来ないってリアル……。私はさ、リアルを犠牲にして小説とか漫画や創作に極振りしてるから。現実世界で名を残したら、盛大に皆が祝って、悲しんでくれる葬式をイメージしてた、……けど、今の現実の私じゃ、そんなお金は払えないから……」

「?」


「いくら仮想世界で名を上げても、リアルは家族葬で収まっちゃうんだなってリアルですよ……」


 それは、仮想世界でいくら頑張ってもお金に成らないから、葬式も当然お金のない式になっちゃうよね。というリアル……。

 結局世の中金なのか……、とは言わない、SNSで言えば、悲しんでくれる人は居るだろう。

 金がなければ何も出来ない、とは言わない。だって支配する側じゃなくて、支配されない側にもう居るからだ……。

 望まなくても、いつかはやってくるのが〈死〉なのだ。

 

「私にもっとお金があればな……」

 それは労働を犠牲にして執筆に費やした報いなのか、業なのか……。

「結局、お母さんと妹ばっかりにお金を出させてる……無念だよ。喪主とは名ばかりの権力みたいでさ……」


 それに対して、咲は。

「咲さん、いつかあなたが死んだら盛大に嘆きましょう。お金があったほうが良いですけど。無くても盛大に嘆く権利ぐらいはあるはずです、そういう世界(・・・・・・)にしていきましょう」

 人が亡くなったら全員で祝うみたいなアフリカの文化を取り入れる……とまでは行かないが、少なくとも時間がまだある自分達には出来るはずだ。

 

「ところで、四空くんはどこですか?」

「あぁ、四空ならあっちで泣いてるよ。〈桃花お母さんをありがとう〉って」

 西暦2024年4月21日が、桃花の父が亡くなり、桃花が四空を産んだ誕生日だからだ。つまり、咲と一緒に生きている時代では13歳の男の子。


 湘南四空、13歳男子、西暦2024年4月21日生まれ。中学1年生だ。

 天上院咲が、17歳女子、高校1年生だから。4年差だ。

 

 そして、桃花は咲に対して、言う。

「じゃあ、四空を頼むよ咲ちゃん、放課後クラブに入れてあげて」

 それはオファーか勧誘か。

 

「わかりました、放課後クラブの13番目の正式メンバー。湘南四空くんですね。喜んで受け入れさせていただきます!」

 雨雲が、やって来た……。

 思い出はいつの日も、何故か雨がコントラストのように、目立っていた。


《ギルド『放課後クラブ』に13番目のメンバー、湘南四空(しょうなんよぞら)くんが加入しました!》

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