第604話「スキルなんか使ってんじゃねえ!!!!」■
開幕1番でやっておきたいこと、それは強者同士の削り合いだ。
それは解っているのだが、咲は姫に対して提案をする。
「お姉ちゃん、ちょっと戦空くんと戦ってみたい」
「ん、良いんじゃないか? どうせ何処かで当たるだろ。早計と取られようが、全員に勝てばいいだけの事……」
で、早速戦空はドンパチやってた。
「スキルなんか使ってんじゃねえ!!!! スーパーフレア・フルバースト!!!!」
――チュドーン!!!!
強烈な極大魔法が盤面を焼き尽くして緑軍10人、紫軍30人とプレーヤーが消えた。
正に無双状態。
疾風怒濤の猛攻を敵陣営に浴びせる戦空。
「何、今の技? スキルじゃないの?」
「アビリティじゃな、名前は〈スキルなんか使ってんじゃねぇ!!!!〉だ、相手がスキルを使用する度に自動で〈スーパーフレア・フルバースト〉が発動する。全員がHP1になった所をただの身体能力で刈り取る戦法じゃな」
「何それチートじゃん!?」
「代わりにスキルもアイテムも使えないし、アビリティもアレ一個しか付けられない。己のプレイングに全振りした、特攻型のスタイルじゃ」
「対策は?」
「スキルを使わずに実力で倒す! 以上!」
なるほどわっかリやすーい!!
「エボリューション・全! ……は、スキルだったっけ? なら家族の善神化は? 何でもアリなんでしょ?」
「OKじゃ!」
「なら! 家族の善神化! 行くよ戦空くん!」
善神化はスキルではない、現代魔法だ、乱闘なら発動できる。
「お! ようやく骨のある奴がやって来たな!」
戦空は心氣を纏った普通のパンチを放つ……1
――シュ!!!!
ドゴオン!!!!
食らった!?
防いだ!?
耐えられた!?
信じられない事が起こった。
あの戦空の重みの乗った拳を、今度は一撃でノックアウトせずに耐えきれた。
「やれる! 今度は戦える! 成長してる! 進化してる、私にも負けられない想いが乗ってるからだ!!」
戦空の普通のパンチと、咲の〈家族の善神化〉でようやく互角なようだった。
どうやら最初は、信条戦空VS天上院咲の対戦図となったようだった、が。
「超お邪魔します、武器はスキルに入りませんか?」
やって来たのは湘南桃花だった、桃花は〈運命の剣〉と〈人間の剣〉を使い対抗する。いや、拮抗する。
「僕も、お邪魔します」
戦闘最強、不動武も拳銃を持って乱入してきた、武の弾丸をまるで曲芸のように視線誘導で避ける戦空。どれもこれもスキルじゃない、プレイヤーの技術だ。
誰かが言った。
「すげえ! 戦空と咲と桃花の戦闘が見れるぞ!?」
「三つ巴!?」
「それだけじゃねえ、不動武も動いた!?」
「皆が皆、戦空を狙ってやがる!?」
「よし俺も漁夫の利で……スキル『電光石火』」
「おいバカやめろ! 話聞いてなかったのか!? スキル出したらカウンターが……!?」
《極大魔法スーパーフレア・フルバーストが発動しました!》
巨大隕石のような業火なメテオが雨あられのように降り注ぎ、爆散・爆裂する。
「アンギャアあー!?!?」
「馬鹿野郎ー! モブA! 誰を巻き込んでる!? プザケルナアー!?」
「後衛は基本呪文だ、スキルを使うな! 矢を放て! 矢の雨だ!」
が、戦空に矢の雨はことごとく避けられてしまい。咲も桃花も武も視野に入れさえするがそれどころではない。正に眼中にない、と言った形であろう。
狙うは大将、ただそれのみと言った形だろう。
「おい! 信条戦空のHPをよく見てみろ!?」
「え!?」
「マジか!?」
「はァ!?」
プレイヤーが驚くのも無理はない、ナゼなら戦空のHPが1だったのだ。
信条戦空、HP1。
小石でも一撃当てればゲームオーバー、そんな縛りプレイ。
逆に言うと、小石一個でも当たる気がないという自信だろう。
この乱戦で? 24時間? 一切休まず? 一撃も食らわない勇気? 否、無謀。でもそれぐらいやらないとマスターになる気はないと言った風だった。
3対1でも戦空はまだ押している。
むしろ負けている……。
3人はまだ負けている。
「嘘だろおい……」
「しかもよく観ろ、右手と、左目しか使ってないぞ!?」
「はァ!? そんなのってあり!?」
「ただ単に弱体化してるじゃん!?」
心氣を使って読んでいるのか? とも思ったが、そんなチョコザイな技術を戦空が使っているわけがない、単純に、左目だけで〈見切っている〉だけだった。使っているアビリティはただ1つ、『スキルなんか使ってんじゃねえ!!!!』だけである。
「そ……そんなのありかよ、バケモノめ……」
モブAがそう言うのも納得の武道を極めし者だった。
豆知識『第三回エレメンタルマスター大会』
分類◇超大規模イベント_五帝決戦_三代目エレメンタルマスター
解説◇神道社、または神聖12星座が主催するイベントとして周知されている。普通のイベントとは異なり、レアイベントより更にレア、選ばれたプレイヤーしか参加できず、また影響力もハンパナイ。このEMとは、最強の証、覇者の証、支配者の証。色々あるが、要するにこの世界、エレメンタルワールドで正式に認められたマスターを名乗ることが出来る、簡単に言うと【最強】が決まる大会。ただの称号だが、歴史的に未だ2人しかその称号は習得出来ていない。何故なのか? それは、他のイベントと連動して全体のイベント発生進行度が決まるからである、十分に場が温まってから開催されるイベントなので、本当に滅多にない。形式は様々&不定期で、何が起こるか予測不能。様式美として〈何でもあり〉や〈想像を超えろ、想像を超える全力で、でなきゃ相手に失礼だ〉というのが通例である。




