第595話「終わりなく白き九天」★×3
ある日。現実世界、レストラン。断っておくがこれはゲームの話じゃない。
天上院咲と天上院姫は、湘南桃花と秘十席群には言わずに。
この相談を桜愛夜鈴に持ちかけた。
「はい? 桃花と群の父親がピンチ? 何で私が?」
姫が夜鈴に話を持ちかける。
「癌だそうだ、余命半年、この目で見た、癌は英語でカニだそうだ」
「あの……、今の時代は、西暦2037年8月15日よね? それ2024年の話で~~……」
「細かい話は後でいくらでも接合性を取る! ヒーローとかレジェンドマンとかそこら辺に……とにかく! 今は夜鈴のリアクションが欲しい、何か、何か出来ることを探してるんだ……!」
「出来ることって、私だって知らないわよ……」
夜鈴の言うことはもっともだった。
夜鈴はとりあえず思考を巡らせる。
「確かに私の頭はカニ頭だけど、だから何? 何か最近当たり前のようにカニを桃花達は食ってるけどさ、別に私は人間だしカニじゃないわよ? それをカニだの癌だのです、て言われても、どうリアクション取れば良いのか困る……、あと、カニ頭と言ったのはリスク、今の戦空であってあんた達じゃない」
「じゃあ仮に、仮にだ! 夜鈴の影が勝手に悪さしてると思ったらどうする?」
ここに来て初めて咲が口を開く。
「善も悪も、光も闇も全て受け入れて前に進むのが最高最善の魔王です!」
「いやそこは勇者になっとけよ! ……て、それは戦空か」
久々のツッコミ役が炸裂した。
「やっぱ体に何か関係があるんだよ、主に神経体に……」
「てかそもそも、それ、私達に関係あるの?」
「教訓05【ルールは他者ではなく、自分たちで決める】少なくとも、世界各国の政治家トップを動かすほどの力だ、そこは確定で信じて良い……!」
「信じろねえ……」
「お前マジで信じてねえのか!?」
「まず、その信じろ信じないとかの二元論的な考え方辞めたら? 〈どっちでもいい〉の信者がいたっていいじゃない。悪いの? そんな誤魔化しても中国の魏呉蜀の思想に飲み込まれちゃうわよ??」
「た、確かに……」
「そもそも、〈いるいないないいない〉の四元論でも良いじゃない、何、125万文字も旅してたのにまだ二元論に勝てないの? バカに戻ったの? やっぱり漫画を読むと馬鹿になるのね~~~~」
「お前ーーーー人の気も知らないで!!!!」
「って……言われたいの?」
夜鈴はニッコリと微笑み、咲と姫の方を見た。
「お、おう……」
「じゃあ、そんなに〈証の力〉と戦空が強いなら、戦空に〈癌は治るもの。〉て書いてもらって、明日の様子を確認してみたら? この歪みきった世界を少しは正したって、バチは当たらないでしょ? てか、いつまで外部隠蔽工作してるのよ? それもう要らなくない????」
確かにそうだった、人間と妖怪の共存が夢だったのに、まだ缶詰を食べてたら意味ない……。
「まー戻れないとしても。ルール上、撤回は許されてるんだからさ〈外部隠蔽工作を禁ず。〉とか〈証の力〉で書いてみれば? この世界、そんなに狭くも弱くもないでしょ?」
まあ、今だからこそ言える話だ。
「と、言う。頭の良いカニからのリアクションでした~」
去って行った人々は確かに蘇らない、でも、今を生きる人々は別問題だ。
「ちなみに信条戦空は今どこ?」
夜鈴の問に、咲は言う。
「〈面白くないからまだ出たくない〉だそうだ」
◇
仮想世界、EWO4、魔王城ロキ、上空。
『こちら桃花。戦空お願いなんだけど私を迎えに来てくれない?』
「何でだ?」
『物理的にだと第1の街までちょっと距離あるから、ジェット機並みに速い戦空に迎えに来てほしいの』
「わかった、第2の街まで普通に飛んで行けばいいんだな!」
ビュン!!
と、戦空は飛んで行った。
◇
第2の街『空島』。
《エリアイベント発生! 巨人族のオーズが出現しました!》
『状況は?』
姫が桃花に通話した。
「何か通りすがりのボスキャラが出てきた、もちろん人間の私には倒せません!」
『堂々と言うなや!』
「いや~堂々と魔術練っていざ発動しようと思ったんだけど~……何か違くね? って思っちゃってさ~」
『お前の気分なんて知ったこっちゃねーよ! コッチは老人がカニに変身して、カニの怪異で大変なんだぞ!!』
「え、それ第1の街? 方位は?」
『南区』
「そのカニの怪異、……最果ての軍勢を呼んだほうが良くない? 私達の手に負えないよ……」
『必要ない、私が行く!』
今度は桜愛夜鈴がログインしてきた。
◇
第1の街『ライデン』、南区。
《カニの怪異モンスターが出現しました!》
「どこの百鬼夜行か知らないけれど、私達の冒険を邪魔する障害なら……斬る!」
◇
第2の街『空島』。
『実はカクカクしかじかで……』
姫はなにやら内緒話を始めた。
『という訳で、今の時間軸は桃花と群の時間軸と言うより、桃花と群の親の子供時代の時間軸まで遡ってる可能性が何故か高い……』
「ううむ、下手に動けないわねぇ……コッチは日本の政治問題で色々やってるし」
『と、いうわけで。こんなよく解んない時にはよくわかんなかった時の模写をやるべきだと思うんだ! 名付けて! 終わる世界をもう一度! 模写大作戦!』
「お、おう……」
『何度か、あれから氷系統も進化してるし、いい練習にもなるし、今の政治家に対しても嬉しいフォローにもなる。一石三鳥じゃ!』
「凍ってるけどね……;」
『そこを何とか……!』
「は~そういうことなら仕方ない、やるか。んで? 術式はどれをトレースすればいいの? てか私がやるの?」
『うん、フェイちゃんにやらせる訳にはいかないし、記憶開放術的にも桃花の方が良いと思う』
「しゃーない、やるか。ただし、発動キーとコマ割りは色々アレンジするわよ?」
『OKなのじゃー!』
という訳で、人間、湘南桃花が持つ、たった1つの魔術を展開する。
「ではやるか……、トレースオン!」
《発動キー展開【光は過去からでも届く――!】》
「契約に従い我に応えよ、光と氷雪と永遠の女王。咲きわたる氷の白薔薇、眠れる永劫庭園。来れ永久の光、永遠の氷河! 氷れる雷もて魂なき災厄を囚えよ――、妙なる静謐白薔薇咲き乱れる永遠の熱歌――」
「終わりなく、白き九天!!」




