番外編54「廃人ガチ勢の生きる道」★
ギルド『非理法権天』所属、クッキングマン。
レジェンドマンの友達の料理担当、彼の料理は並々ならぬレベルの食材を安々と調理する。料理界のスーパーヒーローだ。
ギルド『放課後クラブ』所属ナンバー3、近衛遊歩/エンペラー。
自称、廃人ガチ勢のゲーマー、職業、拳銃か魔法使いなどの後衛職にするかどうかで伸び悩んでいた。
彼個人が輝ける職が無かったのだ。戦闘に関しては、咲と姫が前衛も後衛も司会も解説も2人でこなしてしまう。……とても2人の間に入る余地など無かったのだ。前回の結婚イベントもそう、男はただのオマケ扱い……これでは漢としても終わっている……。
そんなこんなで、咲と姫がただ今絶賛悩み中な上に出来ないことが料理だったのだ。
で、エンペラーは思った。
(俺が輝ける場所は、もうそこしか無い……!!)
ある日のEWO4、始まりの街『ライデン』の洋風レストラン。
――で、今に至る。
遊歩はそりゃあもう男の面目丸つぶれなので、懇願する。
「クッキングマン! いや師匠! 俺に料理を教えて下さい! むしろ弟子入りさせて下さい!!!! お願いします!! 作業を見学させてもらうだけでも良いんです!! それしか俺の生きる道が無いから……!!!!」
事の経緯は、このネット社会なのですぐに広がっていた。
「ふむ、話は大体伺っている、咲ちゃんの婚約者、だったかな?」
「はい、一応……それが、エンディングに成る必要はないと見送られて」
何とも残念な男である。
「ふむ、……一応聞くが、食材の獲り方や具材の食べ方は知ってるのか?」
「い……いえ、サッパリ……包丁を触ったこともありません。というか食材の食べ方も解りません……」
「ふむ、なるほど重症だな……」
「……」
「……」
「よし解った、ついて来い、料理の道は長く険しいぞ……!」
「お……押忍!」
「所でお前は今何を持っている?」
「えっと……」
ポケットの中には不思議な魔法と共に〈毒薬〉と〈弾薬〉が入っていた。
「え? 何で毒薬と弾薬が入ってるん……?」
「フグの毒抜きとか、薬草取りとか、薬の調合とか以前に、まずその毒々のループから抜け出せ。料理の話はソレからだ、まずまともなご飯を食え。ほれ、とりあえず〈鮭オニギリ〉」
「! ありがとうございます! いただきます!」
遊歩は美味しそうにリスのように頬張って食べた。




