第588話「神王の巫女へ~ハッピーエンド~」
《ログインします。ようこそ、エレメンタルワールド・オンライン3へ。》
《第4関門◇太陽に愛されし神王の巫女・京学文美との論戦となります。》
そこはまた教会、
そこには、女性が立っていた。
「……、ようこそ」
「アスナさん……ですか?」
それは、古の記憶、真夜ノ剣から受け継いだ古の記憶。
言われて、彼女は彼女らしい個性を存分に発揮する。
「どっちかと言うとレイシャなんだけどなぁ~? まぁ、今は京学文美って名乗ってるけどね、心はレイシャ! な~んか喋るの久しぶりな気がするよ~~! 双矢も居ないし~~!」
言って、少しの間を文美は与えてから。言う。
「そんなに結婚したいんですか? いや、許嫁でしたか……まあ何でもいいけど、じゃあ私のというか、フェイちゃんの都合を手伝ってもらいましょうか~!」
明るく、楽天的で、ボケっぽい彼女からは想像もつかないような返答だった。
どうやら、オーバーリミッツの障壁で記憶解放されたのは桃花だけでは無いらしい……。彼女は頭が良くなっていた。変わったと言ってもいいだろう。
「手伝うって、何をですか?」
「神のゲームよ。問題と言い手【運命があることを証明せよ】この一点のみ。今では答えは解りきってるけどね。だけど、私はあえてそれを言い手で否定する。それを返し手で証明してみて。GM姫ちゃんは中立、形式は場外乱闘。【全ての空は繋がっている】こと前提の、いつもの〈何でもあり〉な神のゲームの延長線上の討論バトルよ」
GM姫は、ならと、咲と文美の間の中立に位置どった。
まるで、天秤の中央のようだ。
ゲームマスターは告げる。
「じゃあさっさと始めまようか、お互い、いざ尋常に……始め!!!!」
まずは、文美は単的に短く言い手を放つ。
「では行きます! 言い手【運命なんて無い!】」
咲は、どう詰めるかを熟考してから、まず定義の確認をすることにした。
「返し手【運命とは? あなたも記憶解放されて知っているのならご存知のはず】」
「言い手【人間の意志を超えて、幸福や不幸、喜びや悲しみをもたらす超越的な力。また、その善悪吉凶の現象。巡り合わせ。運。命運。転じて、幸運、寿命、今後の成り行き】」
ゲームマスターは姫は告げる。
「GM宣言【確認しました、リクション=S=リスクは確かに運命を握っています】これにより、全ての世界あらゆる事象・物語を貫ける討論を許します!!!!」
文美はそれでも動揺しない、思い出しただけで、解りきっていたからだ。
「言い手【そのノートは何年のものですか? 日時が記載されていない以上、特定は出来ません!】」
咲は攻める姿勢を崩さない。
「返し手【ワ◯ピースのノックアップストリームが模写されています、つまり、空島編の前と断定することが出来ます。断定出来ます、2002年です!!!!】文字じゃなくて絵でほぼ構成されている、ほぼ暗号みたいになっています」
これで、この世界に運命は初めから存在していることは、確定になった。
だが、討論はこれでは終わらない。
文美は、最後の悪あがきをする。
「言い手【世界の運命はリクション=S=リスクが握っていたと仮定して、なぜミュウが世界の運命を握っていないのですか!? おかしいじゃないですか!?】」
咲は勇猛に言う。
「返し手【リスクは〈運命〉は握っていても、〈強者〉も〈世界〉も握っていない! 暴論を許してください、ですがこれで決着です!! よって! 2002年前後からリスク=戦空はただの〈運命〉を無意識に握っていた! これが私達世界の1週目で! これが天上院咲の答えです!!!!】」
文美は、苦しい顔をする。
「く!」
咲は、それでも続ける。
「戦ったのがリスクじゃなくて、私でごめんなさい、でも! 今は私の物語なんです! 過去の亡霊よ、それだけは、今を生きる私達にとって必要な! 何よりの証なんです!!!!」
文美は、何かよくわからないけど吹っ飛んだ。
「ぐわああああああああああああああああああああ!!!!」
GMは解っていたけど告げる。
「勝負あり! 勝者! 天上院咲!!!!」
《太陽に愛されし神王の巫女は倒されました!》
姫は咲に喜ばしく言う。
「よくやったぞ、咲、だが。最後は未来のマスターだ、マジで油断するなよ?」
「うん、わかってる……!」
2人はわかっていながら、2人で進む道を選んだ……。
もう後にも先にも何も無い。
――ここからは、誰もその結末を予測できない。




