第583話「独りの人間に~グッド・エンド~」
《教会第3階層、覚醒・湘南桃花との戦闘を始めます!》
「咲っち、姫っち。2つほど言っておかねばならないことがある。」
「!」
「?」
「まず、1つ目。この〈運命の剣〉には、発動したら最後。2つのスキル〈永久石化〉と〈永劫氷結〉の2重属性効果が、私の意識とは別、無意識に自動追尾してくる。ギア4の〈追う蛇〉の状態だ。これをまともに食らったら他者の介入が無い限り、ずっと変わらず残り続ける。これは私の過去の愚かさから招いた記憶開放術だ」
「「!?」」
「対策は。君達2人が八卦系統のスキル、〈雷天大壮〉を覚えるしか無いし、無いと話にならない。六十四卦の第34番目の卦、この意味を理解してないと先はない」
「それを教えてくれたって事は、使っても良いってことよね!?」
「わざわざ対策を教えてくれるとはありがたいのう~!」
「まぁね、2人のためにもなるし……。何より、本物の幻想殺しと面と向かって喧嘩なんてドキドキするじゃん? だから今までの過去はチャラにしたいの。想像できる範疇なんて面白くないじゃん?」
「んなるほど、狙いは不幸な男か……!」
言って、桃花は話の間を取り……。
「んで、こっからは未来の話だ。〈人間の剣〉には、発動したら最後。三千世界の私がスキルを止めるまで、出現することを辞めない。……3000人の私をどう捌くか、攻略法は私も知らない」
咲が説明を要求する。
「3000の私って何?」
「今の私とか、遥か未来の私、遥か過去の私、5秒後の私、5秒前の私、アース018B・C・D・Eの私。産まれなかった時の私、死んだ霊魂の私、コピーした私、反転した私、例えばの私、もしもの私、別人格の私、可能性の私、非可能性の私、何かな私、……まあ大体全て人間さ……」
姫がツッコミを入れる。
「それらは本当に人間なのかな……?」
「さあ? それが人間としての私の記憶開放術」
桃花先生は、人間の剣と運命の剣を構える……。
「来るか!」
「来い……!」
咲と姫もお互いの剣を構える……。
「それでは! お互い存念の全てをぶつけて挑みましょう! 想像を超えろ、想像できる全力で、でなきゃ相手に失礼だ! これより、歴史教師湘南桃花先生の授業を始めます! 2人共! 起立! 気をつけ! 礼!!!!」
「「よろしくお願いします!!!!」」
3人による歴史の授業が、今、始まった。




