番外編51「感謝のし過ぎにご注意を」
「あるぇ……?」
舞台裏。とある喫茶店、桃花先生と生徒咲はくつろいでいた。
咲はスマホから目が離せず、桃花はライトノベルの文庫本〈灼眼のシャナン〉を読んでいる……。こちらは電子媒体ではない。ただの本だ。
咲は困り顔で先生の方を見て、言う。
「先生、〈更新ありがとう〉って感想欄に一杯書いたらブロックされました~!」
「ん?」
ブロックされた、ということは拒否られたど同義だ。
ティッシュ配りで拒否られた感覚と似ている、違うところは……ネット社会という所だろう。
「こういう時はどうすれば良いのでしょうか?」
「あー……、まず第1に【関わるな】ですね、どうせロクな事にならないから深追いしてはいけない」
咲の「更新ありがとう! 感想を一杯置いておくね!」は、解らなくもない、解らなくもないが……。
「まあ、何事にも加減ってものがあるから……、ま~何となーく咲ちゃんも判ってるでしょ? 〈やりすぎた〉かな? ……って」
「思ってはいたけど、〈言ってない〉んですけど……」
「そこはもう、神様を【信じちゃった世界線】だからしょうがない、念じたら叶うと判ってる世界線なら、受け入れるしかないでしょうね。大丈夫だとしても」
「むう~~……釈然としない」
「まーそういう行為は私も経験あるからあーだこーだとは言えないけど、判ってることはただ一つ……」
「? 何ですか?」
「【そういう行為はプロじゃない】、アマチュアがやる事って事かな。咲ちゃんはもの珍しくってやっちゃったみたいだけど」
どうやら咲のネット社会に対して感想を一杯あげる行為は、アマチュアらしい基準点がここに作られた。
別に運営に聞けばいい話なのだが、運営がアノ、天上院姫本人ならば話は別だ。聞かなくても答えは帰って来る。
「もし、感想を言い続ける行為がOKでもNOだとしても、それを考えるタスク時間がプロとしては惜しい……だから結局、【お金が発生しない感想は辞めておいたほうが良いよ?】って先生の意見になる」
既にもう引き受けている感想は別問題だ……。
「じゃあもう感想は書けないんですか?」
「【雄弁は銀、沈黙は金】ってね。このコトワザは、雄弁であることは大切なことであるが、それも度が過ぎると、いらぬ災いを招いたりして、不都合が起こることがある。それに比べれば沈黙する、あるいは間を取ることが、優れた雄弁よりも、さらに大切であること……、と。そんな感じ」
「あー……」
「咲の場合は、感想をして勉強をしようとしたら、感想をし過ぎて勉強になった、って感じ。まぁそれはそれとして、あんた今、婚約者選びの途中でしょ? どう転んで婚約がドロンするか解らないんだから。もうすぐゴールなんだから、ドロンしたくなければ沈黙を選ぶべきだわさ。舞台裏の汚れ仕事は私達がやるからさ、主役は役に集中してなさい……!」
「うーん、わかった。とりあえず最終章……ゴールするまでは〈沈黙は金〉作戦で行く!!!!」
こうして、咲生徒と桃花先生の舞台裏喫茶店授業は終わった――。
ちなみに、オーバーリミッツはスマホを持っていない。ガチプロだから。
そして、天上院姫にこの質問を返すと、咲をブロックした相手をアカウント警告するとか。……こっちはやり過ぎだ。




